第82期B級1組順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、2回戦計5局の一斉対局が7月6日(木)に各地の対局場で行われました。このうち、名古屋将棋対局場で指された羽生善治九段-澤田真吾七段戦は92手で澤田七段が勝利。同じく勝利した糸谷哲郎八段、千田翔太七段らとともに2連勝の好スタートを飾りました。

相居飛車の力戦形

ともに初戦を勝利して迎えた本局、後手となった澤田七段は序盤早々に角道を止める趣向を見せます。左美濃囲いの枠組みを作ったのち居玉のまま右桂を颯爽と飛び出していったのが意表の作戦。悠長に雁木囲いに組んでいては先手から早繰り銀の速攻が嫌味と見た臨機応変の判断で、ここから局面は前例のない力戦形に持ち込まれました。

手順に飛車先の歩交換に成功した澤田七段に対し、先手の羽生九段はしばらく受けに回る展開を余儀なくされます。盤面全体を使った押し引きが続いたのち8筋に自陣角を打ったのは後手からの香打ちでの飛車先突破を防ぐやむを得ない守りですが、こうなると盤上中央でにらみを利かせる澤田七段の馬との間に大きな働きの差ができています。

澤田七段が攻め切って快勝

夕食休憩が明けて局面が終盤戦に入っても澤田七段優勢の時間帯が続きます。羽生九段が6筋に桂を打って後手の馬の利きを止めたのは後手玉にプレッシャーをかけつつなんとか逆転を狙う意味ですが、飛車桂交換の駒得を果たした澤田七段の寄せに抜かりはありませんでした。角取りに歩を打って先手玉に詰めろをかけたのが冷静な決め手です。

終局時刻は21時41分、自玉が一手一手の寄りと認めた羽生九段が駒を投じて澤田七段の勝利が決定。結局、5一の地点に鎮座する澤田七段の玉が動くことは最後までありませんでした。これで勝った澤田七段は2勝0敗、敗れた羽生九段は1勝1敗に。3回戦で澤田七段は三浦弘行九段と、羽生九段は佐藤康光九段と対局します。

  • 感想戦では中盤の手順中、羽生九段からのたたきの歩のタイミングを早める手などが検討された(写真は第58期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:池田将之)

    感想戦では中盤の手順中、羽生九段からのたたきの歩のタイミングを早める手などが検討された(写真は第58期王位戦挑戦者決定戦のもの 提供:池田将之)

水留 啓(将棋情報局)

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