小さなハイブリッド車(HV)は日本企業のお家芸だ。トヨタ自動車「ヤリス」、日産自動車「ノート」、ホンダ「フィット」など、燃費が良くて走りも軽快な小型HVは枚挙にいとまがないほどの充実ぶり。そんな日本市場にフランスのルノーが乗り込んできてしばらく経つが、現状は? 小型HV「ルーテシア」に試乗してきた。
輸入車でハイブリッドがあるのはルノーだけ?
HVの草分け的な存在であるトヨタ「プリウス」や「e-POWER」を積む日産車、「e:HEV」を積むホンダ車などは、システムの仕組みこそ各社で異なるものの、大きなくくりとしては「ストロングハイブリッド車」と呼ばれるクルマたちだ。基本となる燃料はガソリンだが電気(モーター)も使って走るので、燃費が良く、シャキシャキとして軽快な走りが楽しめる車種が多い。
輸入車で「ハイブリッド車」と呼ばれているクルマは大概、「マイルドハイブリッド車」(MHEV)か「プラグインハイブリッド車」(PHEV)のどちらかだ。ストロングハイブリッド車を選べる輸入車ブランドは現状、ルノーしかない。
ルノーでは「E-TECH(イーテック) フルハイブリッド」というシステムを搭載するHVを日本で展開中。SUVの「アルカナ」「キャプチャー」と小型車「ルーテシア」の3車種で、2023年の実績では同社の販売台数全体の約2割がHVとなっているそうだ。全体の2割というと多いのか少ないのか判断しにくいが、ルノーといえば人気車「カングー」があるので、これを差し引けばHVの割合はグッと向上するに違いない。
ルノーによると同社のHVは「どの速度域でもレスポンスのいい走り」と「燃費の良さ」が特徴。アルカナとキャプチャーは輸入車SUVで最も燃費が良く、ルーテシアに至っては電気自動車(EV)をのぞく全ての輸入車で最高の燃費だという。
ルーテシアのHVは国産からの乗り換えが5割
ルノーのHVの中でも、日本に最も適していそうなのが小型車「ルーテシア」だ。このクルマは日産ノートと同じプラットフォームを使う「兄弟車」だから、日本の道路でどれだけ乗りやすいかは想像しやすいはず。ボディサイズは全長4,075mm、全幅1,725mm、全高1,470mmだ。
「ルーテシア」のグレード展開は「E-TECH エンジニアード」(379万円、2023年6月発売の新グレード)、「E-TECH フルハイブリッド」(359万円)、「E-TECH フルハイブリッド レザーパック」(374万円)、「インテンス」(299万円)、「インテンス プラス」(310万円)の計5車種。E-TECHの3車種がHV、インテンスは1.3Lのガソリンターボエンジン搭載車だ。2023年の販売実績はHVが4割、ガソリン車が6割の構成になっているという。今回は新グレードのE-TECH エンジニアードに試乗し、ルーテシアについてルノーに話を聞いてきた。
ルノーによると、ルーテシアに乗り換えた人が直前まで乗っていたクルマは輸入車と国産車が半々。上位3台は「輸入ドイツ系V社」(メルセデス・ベンツ?)、「国産T社」(トヨタ?)、「国産H社」(ホンダ?)とのことだ。
ルーテシアのHVに乗った印象としては、どんな速度域からでもEVのようにすばやく加速してくれるので、乗っていて気持ちがいいし運転もしやすかった。タイトめな車線変更も「シュパッ!」という感じの動きで軽やかにこなしてくれるし、高速道路に合流する際には思わず「はえーっ!」といってしまうくらいの加速をみせてくれるため、狙ったポイントにすんなりと入ることができた。
燃費については折り紙付きだ。「E-TECH エンジニアード」のカタログ数値(WLTCモード)は25.2km/Lと輸入車としては驚きの性能だが、実際はもっと良好な燃費を期待できるらしい。
日本の小型HVは軒並み魅力的な出来栄えで、どれを選んでも後悔しそうにないというのが正直なところだが、人とは違う小型HVに乗りたいという人はルーテシアを試してみてもいいのではないだろうか。もちろん国産車に比べれば値段は高いし、ハイオクを入れなければいけないのでランニングコストもかかるわけだが、それらを差し引きしても満足できるほどの価値が見いだせる可能性のあるクルマだと思った。