大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)の第25回「はるかに遠い夢」が2日に放送され、ついに徳川家康の正室・瀬名(築山殿)と嫡男・信康が死に追い込まれた悲劇「築山殿事件」が描かれた。信康役を務めた細田佳央太にインタビューし、役とどのように向き合ったのか、そして演じ切ったときの心境や、印象に残っているシーンを聞いた。

  • 『どうする家康』松平信康役の細田佳央太

奪い合うのではなく与え合う“慈愛の国”を目指すという瀬名(有村架純)と信康の計画は、武田勝頼(眞栄田郷敦)の手で世にさらされ、信長(岡田准一)の耳にも届いてしまう。家康(松本潤)は2人の始末をつけなければ織田と戦になるとわかっていながらも、信長の目をあざむいて妻子を逃がそうとするが、瀬名と信康はすべての責任を負い自害した。

大河ドラマを目標に掲げ、本作で初出演を果たした細田。死を迎える役も初めてで、「すごく怖かった」と打ち明けた。

「死ぬのは役であって僕自身ではないのですが、信康のことが好きだからこそ人ごとにできなくて、ずっと『死んでほしくないし、死にたくない』と思っていました。そこを脱却するのが大変でした」

どのように死に対する恐怖を乗り越えたのか尋ねると、「気づいたら吹っ切れていましたが、監督たちが寄り添ってくれたことが大きかったです」と答えた。

「役者は1人で役と向き合わないといけない時間があり、自分1人でやらなきゃいけないと思っていたのですが、監督や皆さんが『わからないことがあれば聞いてください』と言ってくださって、だいぶ気持ちが楽になりました。1人じゃないんだなと改めて実感でき、それで乗り越えられたのかもしれません」

とはいえ、最後まで「死にたくない」という思いが消えることはなく、「どうしたって思いますよ。みんなで仲良くいられなかったのか、五徳さん(久保史緒里)ともっと長く時間を過ごせたんじゃないかとすごく思ってしまいます」と吐露。ここまで役に入り込んだのは「初めて」とのことだ。

信康を演じ切った瞬間は、「無事終わってよかったなと。ほっとしたというのが近いです」と安堵したという。

現在21歳の細田。信康が亡くなったのも21歳で、「同い年です」と言う。現代の若者である細田から見て、信康の生涯はどう映ったのだろうか。

「今回描かれた信康の生涯について考えると、この時代に生まれてほしくなかったという思いがあります。(平和な時代であれば)普通の男の子として普通の暮らしができて、生き抜くことができたのかもしれないのに。強さを強要され、そうじゃないと生きられない時代に生まれてしまったがために、厳しい運命にのまれていく信康を最初から最後まで見ていた身としては、いまだにつらさはあります」

そして、平和な時代とまではいかなくても、「もしあの事件がなかったら、どんな生涯を送ったのだろう」と考えると言い、「あまりにも早すぎる年齢で亡くなっているので、何かがズレてもう少し長く生きていられたらどれほどよかったかと。それは瀬名さんに対しても、すごく思います」と無念な思いを吐露した。