ドルトン東京学園 中等部の1年生約100名は2023年6月から9月上旬にかけて、東日本電信電話 東京武蔵野支店(以下、NTT東日本)の協力のもと、再生可能エネルギーについて学んでいる。生徒たちは6月19日、実際にバイオガスプラントを見学した。
■食品の残渣がエネルギーに変わる
本取り組みは、京都大学が学習指導し、ビオストック(NTT東日本グループ企業として脱炭素・資源循環事業を手掛ける)が実験などで協力している。すでに京都大学 助教 博士(農学)の大土井克明氏による初回授業は6月5日に実施済みで、この日は2回目の授業。生徒たちはNTT中央研修センタ(東京都調布市)にあるNTTe-CityLabo内の「超小型バイオガスプラント」を見学した。
まずはビオストックのスタッフが施設の概要を以下のように説明する。
「この超小型バイオガスプラントは、食品の残渣(ざんさ)を原料にしています。残渣とは、みんなが料理で食べ残したもの、あるいは調理中に出てしまう野菜の切れ端などのことです。これまでは生ごみとして燃やして処理する方法が多くとられていましたが、この施設では食品残渣から『メタンガス(=電気・熱エネルギー)』と『メタン発酵消化液(=液体肥料)』をつくっています」。
ここまで運ばれた残渣は、はじめに破砕機で粉々にされ、次に調整槽、そして発酵槽に送られる。「この施設でイチバン大事なのが発酵槽です。タンクの中には、目に見えないほど小さなメタン菌と呼ばれる微生物がたくさんいて、調整槽から送られてきた原料を食べるわけですが、その過程でブクブクとバイオガスを出すんです」。
ガスが出尽くしたあとの”出涸らし”が、すべて液体肥料となる。一方で、ガスは脱硫塔にて有害な成分(硫化水素など)が取り除かれたのち、ガスホルダーに貯まっていく仕組み。なおガスの一部で給湯器も動かし、真冬でもメタン菌が活動しやすい55度の環境を保っているとのこと。
最後に、生徒たちからの質問を受け付けた。どうやってガスから電気をつくるの、という質問には「プラントの中にバイオガス専用の発電機が入っていて、ガスを送ることで電気が貯まっていきます」、本日見学したこの実証実験用のバイオガスプラントが処理できる残渣の量については「1週間で約588kg、1日80kgちょっとを処理できる能力があります」、残渣を投入してからエネルギーができるまでにかかる時間は「14日間くらいです。通常のプラントと比べると早いほうで、その秘訣は『高温発酵』にあります。高温発酵は菌の扱いが難しいと言われていますが、NTT東日本のIoT技術などを駆使してうまくコントロールしています」。
授業を終えた生徒2人に話を聞いた。プラントを見学して、女子生徒は「初回の授業で理解できなかったところが、実際に施設を見学して、先生に質問もしたことで理解できました」。液体肥料の匂いは独特だった、動物の飼育小屋の匂いがした、と笑顔に。男子生徒も「自分の目で施設を見ることで、より記憶が鮮明に頭に残った気がします」。ガスホルダーを手で触らせてもらって、ガスが貯まっているのが分かりました、と話す。
学校で再生可能エネルギーについて学んでいることについて、2人とも家庭で話題にしているという。女子生徒は両親から「自分たちが子どもの頃にはなかったよ」と言われたそうで、「どんどん技術が進歩しているのを感じます」と話す。地球環境のこと、SDGsについても「小学校の頃から勉強してきたし、関心を持とうと言われてきました。節電など、やれることからやろうと思っています」。これに男子生徒は「環境に良くないことにはどんなことがあるか、勉強してきました。何か環境のためにできたことはあるか、と言われるとないかも知れないけど、意識のなかでは環境について考えるようになっています」。
生徒たちは7月、家庭で出た生ごみを持ち寄って、実際にペットボトルを使ってメタン発酵させる取り組みを体験する。どんな生ごみを燃やしてみたいだろうか?そんな質問に、女子生徒は「お弁当でよく残ってしまうミニトマトの葉っぱとか、食べられずに残ってしまうものを処理してみたいと思います」、男子生徒は「普段から好き嫌いはせずに何でも食べていますが、家庭で出る生ごみを見てみて、どんなものを燃やすか発見できるのかなぁと思います」と答えてくれた。