新型コロナウイルス感染症が5月8日に感染症法上の位置づけで「5類感染症」に変更されましたが、厚生労働省は「換気」について、基本的感染対策として引き続き有効だとしています。

三菱電機によると、省エネや節電志向の高まりもあり、これらに対応する製品として全熱交換型換気機器に注目が集まっているといいます。プレス向け説明会で、同社が展開する全熱交換型換気機器「ロスナイ」の基本的な仕組みから最新機能まで聞いてきました。

  • 天井埋込型のロスナイセントラル換気システム「VL-11ZFHV2」。前面の白い部分のみ露出し、他の部分は天井に埋め込むようにして設置します(取付け工事が必要です)

  • 壁付け型のロスナイ(前面カバーを取り外しています)。部屋単位での換気に対応しており、後付け設置も比較的しやすいモデルです

ロスナイってなに?

まず、全熱交換型換気機器とは、本体に搭載する排気用と給気用の2つのファンにより、空気の交換を行いながら熱交換(温度の高い流体から低い流体へ熱エネルギーが移動すること)を行う換気設備のこと。

熱交換により、室内の熱(ここでは暖かさや涼しさのことを指します)を回収し、外から吸気する空気に伝えられるため、換気扇など一般的な換気機器と比べて、冷暖房費を安く抑えられる点が特徴です。

三菱電機製の全熱交換型換気機器であるロスナイは、ラインナップが幅広く、住宅用途の「壁掛け形」「天井埋込カセット形」、業務用途の「天井つり形」「天井埋込ダクト型」などを用意します。

戸建て住宅や、オフィス・学校・店舗などの新築の建築物向けを主要経路としつつ、リフォーム工事による後付けにも対応。価格は、8畳向けの壁掛け形(1パイプ)が43,340円~80,630円、天井カセット型の埋込システムが92,400円~185,900円です(工事費別)。

  • 1970年に世界で初めて紙でできた熱交換形換気機器(静止形)として、開発・発売されましたが、発売後3年間はほぼまったく売れなかったそう。第一次石油危機後に「省エネ」という言葉の認知が始まると、徐々に市場へ浸透していったといいます

ロスナイ最大の特徴は、給気・排気経路にある紙製の全熱交換機(ロスナイエレメント)で電力や冷媒を使わずに熱交換を行う点(ファンで給気・排気するのに電力は必要)。

ロスナイエレメントは、熱と湿度の持つ「高いところから低いところへ移動する性質」を利用して、排気される室内の空気と、取り込まれる外気が通過する際に、外気を室内の空気状態に近づけて取り入れるための部品です。

  • ロスナイに内蔵するロスナイエレメント。本体構造は、特殊加工紙の仕切板と間隔板が重なり合った段ボールのような構成です

  • 取り込む外気と排出する室内の空気は、仕切板で完全に分けられているので、熱・湿度を交換しながらも混ざり合うことなく通過します

例えば、夏に室温26度/湿度74%、外気温34.5度/湿度75%の環境下で換気した場合、窓を開けて直接換気すると、34.5度の外気が直接室内に入り、せっかく涼しくなった部屋が再び暑くなってしまいます。

一方、ロスナイを用いて換気した場合、ロスナイエレメント内で熱・湿度の交換が行われ、気温34.5度/湿度75%の外気を、温度29度/湿度74%の状態まで室内の空気に近づけてから給気できます(三菱電機調べ)。このように、換気のときに屋外へ逃げてしまう室内の暖かさや涼しさを再利用しながら換気することで、外で排気する空気に含まれる熱エネルギーのうち、約5~8割を回収可能だといいます。

  • 夏の全熱交換機による換気の流れ

  • ロスナイによる年間の節電効果(三菱電機による試算値)。住宅用の天井埋込カセット形は約26,100円の節電を見込めるとしています(東京都の場合)

他にも本体内に空気清浄フィルターを搭載し、フィルターを通すことで外気中に含まれる花粉やホコリといった粒子を取り除きながら給気できる点や、窓を開けたときと比較して、防音効果が高い点など、全熱交換型換気機器共通のメリットも備えています。

ちなみに、全熱交換型換気機器による換気とエアコンの換気運転との違いは、熱・湿度交換の有無。エアコンによる換気運転は、外気を外気温のまま室内に送り込むのに対し、全熱交換型換気機器は外気を室内の空気状態に近づけてから室内へ送り込みます。

  • 壁付け型ロスナイのフィルター部分

  • 天井埋込型ロスナイは、本体両側面に給気・排気用のダクトを装備

  • 壁掛け型はダクトを背面に配置。給気用と排気用に内部で分かれています

三菱エアコン「霧ヶ峰」と連携で効率的に換気

最後に、最新のロスナイセントラル換気システム「VL-200ZMHSV3-RC」が備えている、エアコンとの連携機能について。VL-200ZMHSV3-RCは、三菱電機独自のクラウド「Linova(リノバ)」を介して三菱エアコン「霧ヶ峰」と連携する「スマートe-Floシステム」(2021年11月開始)に対応しています。

  • スマートe-Floシステムのイメージ図

上記の連携機能として、人の密集に応じた自動換気制御があります。これは、霧ヶ峰に搭載する「ムーブアイ」(室温や人間の体感温度を検知して空調制御を行うための赤外線センサー)で検知した在室人数やルームエアコンの運転状況・室内外の温度差に合わせて、熱交換換気と非熱交換換気を自動で切り替える機能。

ムーブアイで検知した在室人数に応じて換気風量を自動で切り替えられるため、周辺環境に合わせた運転で消費電力量を削減できるほか、家族の帰宅や来客で人数が増えても手動で切り替える手間を省けて便利だと感じました。

このほか、連携するエアコンの霜取りを検知すると、換気量を自動で減らして室温低下を抑制する機能や、就寝時刻前に自動で換気を行い、熱こもりを防ぐなど生活パターンに合わせたスケジュール設定も可能です。

  • ルームエアコン 霧ヶ峰の2023年モデル(室内機)

筆者は普段、定期的に部屋の窓を網戸にして換気するよう心がけています。ですが、冷房・暖房でせっかく涼しくなった・温かくなった室内が元の気温に戻ってしまうことをつらいと感じることがしばしばあります(その後、エアコンで室温を戻すのにも罪悪感が……)。

また、花粉や黄砂が舞う時期には換気をあきらめることも何度かあったため、このような課題を解決できる全熱交換型換気機器には、換気を定期的に行っている身からすると憧れます。

中でも、三菱エアコン「霧ヶ峰」ユーザーにとってロスナイは、冷暖房費が抑えられるほか、霧ヶ峰との連携機能が魅力的。霧ヶ峰ユーザーで、戸建て住宅を建てる機会やリフォーム工事の時期が来たら、一度導入を検討してみるのもアリかもしれません。