2022年から続々と新製品が登場して、注目を集めている家電が「水拭き掃除機」です。そんな気になるジャンルに、とうとうダイソンも参戦。新製品の「Dyson V12s Detect Slim Submarine」は、ほかの水拭きクリーナーとどう違うのか? 使い勝手は? 発表会で実機を体験しつつ、開発者のアサフ・ウーイ氏にお話を聞きました。

  • 新製品の「Dyson V12s Detect Slim Submarine」と、ダイソンのフロアケア部門にてデザインマネージャーを務めるアサフ・ウーイ氏

サブマリンってどんな掃除機?

Dyson V12s Detect Slim Submarine(以下、サブマリン)は、名前にもあるように、ダイソンの人気コードレススティッククリーナー「Dyson V12 Detect Slim」をベースにした製品です。ヘッドには、2023年発表の最新「Fluffy Optic クリーナーヘッド」のほか、コンパクトな「毛絡み防止スクリューツール」、そしてダイソンとしては日本初となる水拭き用の「Submarine ウェットローラーヘッド」が付属します。

  • サブマリンを手にするマイナビニュース +Digitalの林編集長。本体サイズはSubmarine ウェットローラーヘッド装着時で幅257×奥行き253×高さ1,129mm、重さは3.2kg。水拭きヘッド装着時は、床掃除ヘッド装着時より約1kg重くなります

  • サブマリンに付属するヘッド。手前左がFluffy Optic クリーナーヘッド、右が毛絡み防止スクリューツール、奥が注目のSubmarine ウェットローラーヘッド

Submarine ウェットローラーヘッドは、ヘッド内の吸水タンクに水を補給して使い、動作時は毎分18mLの水をローラーに供給。ローラー幅に合わせて8つの吸水口があり、ローラーの端から端までムラなく適量の水を行き渡らせます。

給水タンクの容量は300mLで、最大110平方メートルの床を水拭き可能です。水拭き掃除のときは、濡れたローラーが回転して床を拭きます。ローラーは毎分900回転し、液体や皮脂汚れ、床にこびり付いた汚れを落とします。ガンコな汚れの場合、落ちるようにとゆっくり動かしていると床がけっこう濡れるため、ほどよいバランスを見つけたいところ。

ヘッド内にはステンレス製のスクレイパーを配置しており、汚れたローラーから汚水やゴミを掻き落とすため、床に接地するローラーは常にキレイ。ローラーに吸着した汚れで再び床を汚すことがありません。なお、Submarine ウェットローラーヘッドを装着したときは「吸引」の動作はせず、本体からSubmarine ウェットローラーヘッドへは電力が供給されるだけとなります。

  • Submarine ウェットローラーヘッドは、まず2つのパーツに分離

  • Submarine ウェットローラーヘッドから、タンク部を引き抜いたところ。赤いキャップを外して水を補給します。横にある箱型のパーツは汚水を回収するトレー

  • タンクとローラーを外したヘッド天井部。銀色のライン状のパーツがスクレイパーです。このスクレイパーでローラーを絞って汚れを回収します

  • スクレイパーで落とした汚れと汚水は、トレー(赤い矢印の先)にたまります

  • ヘッドは分解してすべて水洗い可能

【動画】前半は最新のFluffy Optic クリーナーヘッド。細かなゴミを緑のLED光で見えやすくします。以前のヘッドはレーザー光を利用していましたが、Fluffy Optic クリーナーヘッドはLEDに変わり、より遠くまで照らせるようになりました。後半は水拭き用のSubmarine ウェットローラーヘッドです。床の落書きと、床にこぼしたコーヒーを掃除しています
(大きな音声が流れます。ご注意ください)

市場をにぎわす「水拭き掃除機」との違いは?

今回のプレス向け発表会には、ダイソンの開発者が来日。デザインマネージャーのアサフ・ウーイ氏にインタビューしました。

新製品のサブマリンで筆者がまず気になったのは、水拭き掃除の機構として「ヘッド交換式」であること。2022年から各メーカーが日本国内で水拭き掃除機を発売していますが、多くは「Wet&Dry」方式を採用しています。Wet&Dry方式とは、水拭きと一緒に固形のゴミもまとめて吸引掃除する方式。つまり、普通の掃除機のような「吸引掃除」と「水拭き掃除」を同時に行える仕組みです。

  • ダイソンのフロアケア部門、デザインマネージャーのアサフ・ウーイ氏

一方でダイソンのサブマリンは、水拭き時に吸引掃除はしません。もちろん細かなゴミは水拭きだけでも掃除できますが、大きめの固形ゴミの掃除は難しいでしょう。これに対し、アサフ・ウーイ氏は次のように語りました。


アサフ・ウーイ氏「この答えはシンプルに、ヘッド交換式のほうがダイソンとして考えるメリットが大きいこと。もっとも重要な点は、ダイソンが重視する掃除力です。Wet&Dry方式は床が濡れた状態で吸引するケースがあり、固形ゴミの量や形状によっては床に張り付いた状態で残ってしまいます。

サブマリンなら、ゴミが多いときや大きなゴミがあるときは、先にFluffy Optic クリーナーヘッドで固形ゴミを掃除しておきます。つまり、サブマリンだけでゴミの取り残しをなくせるわけです。

水拭き掃除のパワーも強力です。水拭きはマイクロファイバー(編注:ローラー表面の素材)の密度が高いほうが掃除力が上がりますが、これはモーターに負担をかけるということでもあります。今回、72,000本/インチという高密度のマイクロファイバーを採用しました。一般的なWet&Dry製品の2倍以上の密度です。

ここまで高密度になるとモーターの熱が問題になるため、Submarine ウェットローラーヘッドには当初予定していなかった冷却用の銅製ヒートシンクなどを内蔵しました。高密度マイクロファイバー、高性能なモーター、冷却技術……、サブマリンはダイソンの技術と研究よって最適なバランスを追求した結果、誕生した製品なのです」


  • Submarine ウェットローラーヘッドの巨大モデル

水拭き機能にヘッド交換式を選択したもうひとつの理由は「掃除のしやすさ」です。

Wet&Dry方式の掃除機は、水拭きして汚れた水を回収する関係から、ほとんどの製品がヘッド真上に2つのタンク(清水/汚水タンク)やモーター内蔵の大きな本体を配置しています。大きさと重さ、そして構造上、小回りがききにくく、イスや机の脚まわりといった細かい動きで実感します。また、Wet&Dry方式の多くはハンドルを60°以上傾けられないため、ソファ下といった掃除も苦手です。

サブマリンは、ヘッド内に水拭きに関する機能を集約することで、普通の掃除機のように小回りがきき、家具の下も掃除できます(吸引掃除用のヘッドを取り付けると、ほぼ180°までフラットになります)。

ただし吸引掃除と水拭き掃除でヘッド交換の一手間が発生するため、好みやニーズがわかれるところでもあります。水拭きに対応したスティック型のコードレス掃除機を購入するときは、この点はしっかり検討してください。

  • 床拭き掃除の動きをデモンストレーションするウーイ氏。サブマリンなら手首の軽い力で、ヘッドが左右に自由に動きます。「水拭き」を意識せず、いつものような操作感で掃除が可能です

小回りのしやすさは、ヘッド形状にも秘密が。ダイソン好きならピンと来るかもしれませんが、Submarine ウェットローラーヘッドはダイソンの全方向駆動コードレスクリーナー「Dyson Omni-glide(ダイソン オムニグライド)」から着想を得てデザインされています。オムニグライドのように2本のローラーこそ内蔵していませんが、回転ローラーと後方にある車輪によって、浮いているような操作感を実現しているのです。

  • Submarine ウェットローラーヘッドの裏面。ローラーの後ろに小さな車輪があります

  • Submarine ウェットローラーヘッドを手にするウーイ氏。サイドの形状は、言われてみればオムニグライドのヘッドにそっくり!

掃除性能の高さや掃除のしやすさへの着眼点など、「水拭き掃除機」とダイソンのサブマリンの違いがよくわかりました。現在、水拭き掃除機は海外で爆発的な売れ行きを見せていますが「(吸引掃除の)手間が増えても最終的な清潔性を重視したい」なら、サブマリンを選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。日本の家屋は狭くてモノが多くなりがち。ヘッドを変えることによって、普段の吸引掃除も、気合いを入れた水拭き掃除もできるという点に魅力を感じる人は多いはずです。