実験の結果、人工培養脳は異なる箇所に入力されたパルス入力を分類することが可能であり、ネットワークのモジュール性が分類精度と正の相関を示すことが初めて示されたとのこと。また、人工培養脳が数百ミリ秒程度の短期記憶を持ち、これを利用して人間の発話音声のような時系列データの分類が可能であることが実証された。

  • 人工培養脳を使用したリザバー計算機。ヒトの発話音声「zero」が入力されると、人工培養脳は入力を多細胞応答に変換。その信号を、線形分類器で読み出すことで、時系列信号の分類が達成される。図中の人工培養脳は4つの四角形と、それらを結ぶ細い線内に成長するように設計され、モジュール性が持たされている。今回の実験では、人工培養脳がこのようなモジュール性を有することで、分類性能が改善されることが解明された。

    人工培養脳を使用したリザバー計算機。ヒトの発話音声「zero」が入力されると、人工培養脳は入力を多細胞応答に変換。その信号を、線形分類器で読み出すことで、時系列信号の分類が達成される。図中の人工培養脳は4つの四角形と、それらを結ぶ細い線内に成長するように設計され、モジュール性が持たされている。今回の実験では、人工培養脳がこのようなモジュール性を有することで、分類性能が改善されることが解明された。(出所:東北大プレスリリースPDF)

さらに、人工培養脳に基づくリザバー計算機はカテゴリ学習を可能にし、1つのデータセットで訓練されたネットワークが、同じカテゴリの別のデータセットを分類することもできたという。線形分類器で入力信号を直接解読すると、このような分類は不可能だったことから、研究チームは、人工培養脳はリザバーコンピューティングの性能を向上させるための「汎化フィルタ」として機能することが示唆されたとしている。なお汎化フィルタとは、入力データの中に存在する普遍的な特徴やパターンを強調し、カテゴリごとに分類しやすくする信号処理プロセスのことを指す。

  • 人工培養脳が汎化フィルタとして機能することの実証。学習時とテスト時に、話者を入れ替えても、人工培養脳に基づくリザバー計算機は、話された数字の分類に成功した。話者入れ替え時の分類精度は、話者の入れ替えがない時よりは低下するが、分類がランダムより高いレベルで達成された。人工培養脳を用いず、線形分類器で入力信号を直接解読すると、このような分類は不可能だったことから、「人工培養脳」はリザバーコンピューティングの性能を向上させるための汎化フィルタとして機能することが示唆された。

    人工培養脳が汎化フィルタとして機能することの実証。学習時とテスト時に、話者を入れ替えても、人工培養脳に基づくリザバー計算機は、話された数字の分類に成功した。話者入れ替え時の分類精度は、話者の入れ替えがない時よりは低下するが、分類がランダムより高いレベルで達成された。人工培養脳を用いず、線形分類器で入力信号を直接解読すると、このような分類は不可能だったことから、「人工培養脳」はリザバーコンピューティングの性能を向上させるための汎化フィルタとして機能することが示唆された。(出所:東北大プレスリリースPDF)

今回の研究成果は、生きた神経細胞が作るネットワーク内部の情報処理に関するメカニズム理解を進展させるとともに、人工培養脳に基づく物理的なリザバー計算機の実現可能性を広げるものだとする。研究チームは今後、これらの発見が生物の神経回路とその潜在的な応用領域にどのように影響を及ぼすのかを詳しく調べる予定とした。またこの研究は、生物の神経回路の振る舞いをより精緻に模倣した機械学習や脳型ハードウェアの開発にもつながることが期待されるとしている。