実験の結果、人工培養脳は異なる箇所に入力されたパルス入力を分類することが可能であり、ネットワークのモジュール性が分類精度と正の相関を示すことが初めて示されたとのこと。また、人工培養脳が数百ミリ秒程度の短期記憶を持ち、これを利用して人間の発話音声のような時系列データの分類が可能であることが実証された。
さらに、人工培養脳に基づくリザバー計算機はカテゴリ学習を可能にし、1つのデータセットで訓練されたネットワークが、同じカテゴリの別のデータセットを分類することもできたという。線形分類器で入力信号を直接解読すると、このような分類は不可能だったことから、研究チームは、人工培養脳はリザバーコンピューティングの性能を向上させるための「汎化フィルタ」として機能することが示唆されたとしている。なお汎化フィルタとは、入力データの中に存在する普遍的な特徴やパターンを強調し、カテゴリごとに分類しやすくする信号処理プロセスのことを指す。
今回の研究成果は、生きた神経細胞が作るネットワーク内部の情報処理に関するメカニズム理解を進展させるとともに、人工培養脳に基づく物理的なリザバー計算機の実現可能性を広げるものだとする。研究チームは今後、これらの発見が生物の神経回路とその潜在的な応用領域にどのように影響を及ぼすのかを詳しく調べる予定とした。またこの研究は、生物の神経回路の振る舞いをより精緻に模倣した機械学習や脳型ハードウェアの開発にもつながることが期待されるとしている。