映像作品はその多くが虚構です。それをわかった上で、映像上の出来事を「作品中では真実である」と受け入れることがエンタメの前提です。しかし、「作品中の真実」を疑ってかかる必要があるとしたら……。
トム・ホランドがドラマシリーズ初主演を務める『クラウデッドルーム』がシーズン中盤に差し掛かり、現在Apple TV+ のトップチャート3位。米・英の150以上の配信サイトを横断する検索サービス「Reelgood」のランキングでも全体の6位と、大きな注目を集めています。
1979年ニューヨーク。発砲事件で逮捕された内気な青年ダニー・サリバン(トム・ホランド)は、臨床心理士ライア・グッドウィン(アマンダ・サイフリッド)の面談を受ける。ダニーの口から少しずつ事件の経緯と彼自身の過去が語られはじめるが、ライアは奇妙な違和感を覚え、ある仮説の立証へと動き出す。
<出演者>
ダニー・サリバン/トム・ホランド
ライア・グッドウィン/アマンダ・サイフリッド
アリアナ/サッシャ・レイン
マーリン/ウィル・チェイス
イツァク・サフディ/リオル・ラズ
キャンディ・サリバン/エミー・ロッサム
<スタッフ>
ディレクター:コルネル・ムンドルツォ/ブレイディ・コーベット/モナ・ファストヴォルド/アラン・テイラー
エグゼクティブプロデューサー:アキヴァ・ゴールズマン/アレクサンドラ・ミルチャン/アーノン・ミルチャン/ヤリヴ・ミルチャン/マイケル・シェーファー/コルネル・ムンドルツォ/トム・ホランド/スザンヌ・ヒースコート
原案はあの『24人のビリー・ミリガン』
絶体絶命のピンチに陥った時、突然誰かが助けてくれる——。映画なら5万回くらい見たことのあるお約束のシチュエーションですが、ダニーには過去に何度かそういった経験がありました。しかし、発砲事件で逮捕されたダニーがそれらの出来事を語るうちに、ライアは「あまりに都合がよすぎる」と繰り返しツッコミを入れます。
この作品てそういうリアリティラインなの? と、視聴者はメタな視点を横から押し付けられてしまうわけですが、そこからが本番です。ダニーの回想シーンが入る度に出来事や登場人物を疑わざるを得なくなってきたら、もう術中にハマったと思った方がいいでしょう。
メイン脚本は『ビューティフル・マインド』(2001年)でアカデミー脚色賞を受賞したアキヴァ・ゴールズマン。『24人のビリー・ミリガン』(ダニエル・キイス)に着想を得た物語と聞けば、なるほどと思う方も多いかもしれません。この情報だけでは全然ネタバレにはならないので(オープニングにクレジットされています)、ご存じの方も元ネタを思い出しつつ楽しめるはずです。知らない方は知らないまま見ると、より謎に翻弄される面白さを味わえるでしょう。
ダニーのヤバさと、それを浮き彫りにする人たち
本作の注目はやはり、今回がドラマシリーズ初主演というトム・ホランドの演技です。この作品の撮影がヘビーすぎた上に、エグゼクティブプロデューサーも務めたことでいろいろな問題への対処に疲労困憊し、クランクアップ後に1年間の休業に入ってしまったというほどですから、役柄の重さがうかがえます。
確かに、ホランド演じるダニーは地味な見た目に現実離れした内面を持ち、多くの“人々”との複雑な関係に取り囲まれています。回を重ねる度にヤバさがじわじわくるこの人物像、怪演と言っていいでしょう。また、メインの登場人物はもちろん、少し絡むだけの人々が時々違和感を醸し出す、といった細かい演技もリアリティを底上げしています。
まだまだ謎だらけだし、むしろ中盤に入って底なしの闇が見え始めたタイミング。6月30日(金)配信開始のエピソード6では、ついにライアが事件に対する仮説を持ち、その立証へと動き始めます。この先、謎が明かされる急展開となるのでしょうか。
同作は全10話で、最終話は7月28日(金)配信の予定です。今が追いつくチャンスです。
この作品を視聴するには
- 配信サービス:Apple TV+
- 視聴方法:iPhone、iPad、Macなどの「Apple TV」アプリ、スマートテレビ、Amazon Fire TV、Chromecast with Google TV、PlayStation、Xbox、PCブラウザ(https://tv.apple.com/jp)
- 料金:月額600円(ファミリー共有可能)
Apple TV+とは? Appleが提供する、完全オリジナル作品だけのサブスクリプション型映像配信サービス。ドラマ、長編作品、ドキュメンタリー、アニメなど、毎月新作が提供されている。アカデミー賞、ゴールデングローブ賞などの映像作品賞ノミネート・受賞作も多数。