モデル、女優、絵画とマルチな活躍をみせる若月佑美。そんな彼女が、2019年8月から『週刊SPA!』で連載してきたエッセイに新作、未掲載カット、撮り下ろし写真を加えた初のフォトエッセイ『履きなれない靴を履き潰すまで』を6月27日に発売した。幼い頃から「自分の心のなかを書くことが好きだった」という若月にとって、“ものを書く”という作業はどんなことを自身にもたらしているのだろうか――。
約3年半にわたる連載が1冊の本にまとまった。リアルタイムで感じたことをつづった言葉たち。改めて読み返してどんなことが胸に去来したのだろうか。
「書くことで自分自身が救われることもあったので、時間が経って読むと『この時期、こんなことで悩んでいたんだ』とか、自分が悲しい時期に読むと『いまよりもポジティブだったんだ』とか、いろいろなことを感じました。より自分を客観的に見られるという部分では、すごく良い効果が生まれていると思います」
幼少期から自分の心のなかを言葉として表現することを行っていたという若月。それは人に自分の思いを伝えたかったのか……それとも書くこと自体が好きだったのか……。
「書くことが好きというのが大きいですね。日記まではいかないのですが、自分の感情を書くことで、気持ちがスッと軽くなるというか。誰かに伝える文章にしては、ちょっと曖昧な表現が多いので(笑)。でも職業柄ブログなどに綴っているうちに、自分だけで完結していたつもりが、誰かが読んでくださって、反応があるということに面白さを感じました。自分だけの感情に共感してくださったり、結果的に誰かを救うことになったり……。そういう発見によって、より書くことが好きになっていきました」
若月は二科展で、通算9回入選を果たすなど、絵を描くことも表現の一つとして行っている。
「絵を描くようになったのも、書くことと似ている部分を感じたからでした。言葉にすると鋭すぎたり、ネガティブになりすぎてしまうなと感じたとき、絵にすればそこまで強く伝わらないかなと思って描き始めたんです。絵も、ものを書くこと同様、自分がネガティブに捉えてしまったものを見て、共感してもらったり、まったく違う解釈で捉えてくださったり……。その意味ではとても面白い表現方法だと思っています」
連載することで、定期的に胸の内にあることをアウトプットすることができ、“ためすぎない”ことは心の安定につながった。一方で、必然的にインプットするために、多くのことに興味が持てるようになっていったという。
「いろいろな視点で物事を考えることが楽しいなと思えるようになっていきました。例えば雨一つとっても、うっとうしくて嫌だなと思う人もいると思いますが、作物を作っている方には恵の雨だと感じる人もいる。そういう風に考えると、必要ないものなんてないんだなと思いますよね」
視野を広く、感受性が豊かになることで、女優業にも良い効果が生まれてきたのだろうか――。
「直接的な実感は、まだ感じられていないのですが、演じる役に対してより自分ごとのように捉えられるようになってきた気がします。例えば、以前は自分では理解できない役のとき、どうしてもそこで思考がストップしてしまっていたのですが、いまは悪い人でも、そこに至るまでの過程を考えたり、きっとそうなってしまったのには理由があるんだろうなと思ったりするようになりました」。
しっかりと他者を認められるという考え方は、若月自身の人生にゆとりをもたらした。
「私は頑固なところがあって、それは直していかなければいけないと思っていたのですが、なかなか難しかったんです。特に正義感が強い方なので、許せないと感じると、その先に進めなくて。でも、なんでそうなったのか……と考えるようになると、共感できる部分も増えて寛容になれるんです。その意味では、とてもいまは生きやすくなったなと感じます。これもものを書くことの効果だと思います」