みなさんは、暑さが本格化する前にやるべき熱中症対策「暑熱順化(しょねつじゅんか)」をご存じですか? 暑熱順化とは暑さに体を慣れさせることを指します。今回はそのメリットや方法について、日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトの担当者さんにお話を伺いました。

  • 暑熱順化で熱中症対策を

■暑熱順化による変化

人は体を動かすと、体内で熱が作られて体温が上昇します。体温が上がった時は、汗をかくこと(発汗)による気化熱や、心拍数の上昇・皮膚血管拡張により体の表面から空気中に熱を逃がす熱放散で、体温を調節しています。この調節機能がうまく働かなくなると、体に熱がこもって体温が上昇し、熱中症を発症してします。

では、暑熱順化のメリットとはどういうものなのでしょうか?

暑熱順化が進むと、発汗量や皮膚血流量が増え、気化熱や熱放散がしやすくなり、体温の上昇を抑えます。また、汗に含まれる塩分が少なく、生命維持に必要なナトリウムなどのミネラル分を失いにくくなるため、熱中症のリスクを減らすことができるそう。

  • 出典:「熱中症ゼロへ」プロジェクト

■暑熱順化に有効な対策

暑熱順化では、体を暑さに慣れさせることがポイントとなるため、実際に気温が上がって熱中症のリスクが高まる前に、無理のない範囲で汗をかくことが大切といいます。日常生活の中で運動や入浴を行い、汗をかいて体を暑さに慣れさせましょう。なお、暑熱順化には数日から2週間程度かかるため、夏になる前から余裕をもって取り組み、暑さに備えるようにしてください。

次に、暑熱順化の具体的な方法を紹介していきます。

1. ウォーキング・ジョギング

通勤時にひと駅分歩いたり、外出時にできるだけ階段を使ったりして、意識して少し汗をかくようにしましょう。時間は、ウォーキングの場合は1回30分、ジョギングの場合は1回15分、頻度は週5日程度が目安です。

2. サイクリング

通勤や買い物など、日常生活で取り入れやすいのがサイクリング。目安の時間は1回30分、頻度は週3回程度が望ましいそうです。

3. 筋トレ・ストレッチ

室内では筋トレやストレッチがおすすめ。運動時の室内の温度には注意し、暑くなりすぎたり、水分や塩分が不足したりしないようにしてください。時間は1回30分、頻度は週5回~毎日程度が目安です。

4. 入浴

面倒でもシャワーだけで済ませず、2日に1回は湯船に浸かりましょう。そして、入浴の前後は十分な水分と適度な塩分の補給を忘れずに! お湯の温度が高めの場合には時間は短め、低めの場合には少し長めに入浴しましょう。

  • 出典:「熱中症ゼロへ」プロジェクト

なお、暑熱順化に取り組む時は、個人の体質・体調、その日の気温や室内環境に合わせて行いましょう。特に運動時は天気や気温などの環境の変化に注意し、水分や塩分をこまめに補給して、熱中症に十分注意してください。

※上記の方法はあくまで目安となり、これらを行っても必ず暑熱順化できるわけではありません。

■暑さに注意が必要なタイミングとは?

せっかく一度暑熱順化ができても、数日暑さから離れると効果はなくなってしまいます。いつも自分が暑熱順化できているかを意識し、まだ暑熱順化ができていないときは、熱中症にならないよう気を付けましょう。ここでは、特に熱中症に注意が必要タイミングをお伝えしていきます。

梅雨の晴れ間

梅雨で雨が降って気温が下がると、それまでに暑熱順化した体も元に戻ってしまいます。梅雨の晴れ間で気温が上がる日は、温度も湿度も上がる可能性があるため、熱中症には特に注意してほしいとのことです。

梅雨明け

梅雨明け後は、晴れて気温が高くなる日が続くことが多く、梅雨の間に暑熱順化できていないことで、熱中症による救急搬送者数が急増するそうです。梅雨明け前から体を暑さに慣らすようにしましょう。

お盆明け

お盆休みの間に暑熱順化が戻ってしまう場合があります。また、帰省や移動などで疲れている場合にも、熱中症に気を付けましょう。

※上記のように暑熱順化ができていない可能性の高いタイミングの2週間前を目安に、暑熱順化するために運動や入浴を行うのが得策です。

■暑熱順化チェック

続いて暑熱順化チェック表を紹介します。早速、チェックして暑熱順化ができているか確認してみましょう。

直近2週間について伺います。①~③についてあてはまるものを各項目1つ選択してください。

①入浴(シャワーだけでなく、湯船に入るもの)
□2日に1回以上入浴している(3点)
□週に3日入浴している(2点)
□週に1、2日入浴している(1点)
□入浴することはほとんどない(0点)

②運動(汗をかく程度のもの)
□週に5日以上している(3点)
□週に3、4日程度している(2点)
□週に1、2日程度している(1点)
□運動はほとんどしていない(0点)

③その他の汗をかく行動(運動・入浴以外の外出など)
□ほとんどなかった(0点)
□週1、2回あった(1点)
□週3、4回あった(2点)
□週5日以上あった(3点)

①~③すべての点数を合計して、自身がどこにあてはまるでしょうか?

7~9点…暑熱順化できている可能性が高いです。それでも油断せずしっかり熱中症対策を!
4~6点…複数の習慣で汗をかくことができています。続けていきましょう。
3点……汗をかくことを習慣づけ、暑熱順化してきましょう。
1~2点…体が暑さに慣れていない可能性があります。急な暑さや、暑さが続くタイミングでは熱中症に注意しましょう。
0点……体が暑さに慣れていない状態です。暑くなる前に、汗をかくことを習慣づけて、暑熱順化をしていきましょう。


熱中症対策には、無理のない範囲で暑熱順化するための動きや生活を続けることが重要。暑熱順化の正しい知識を身につけて、本格的な夏が来る前から徐々に体を慣らしていきましょう。

監修:「熱中症ゼロへ」プロジェクト


「熱中症ゼロへ」プロジェクト

熱中症にかかる人を減らし、亡くなってしまう人をゼロにすることを目指して、日本気象協会が推進するプロジェクト。熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核により積極的に熱中症対策を呼びかけている。