今年も暑い季節がやってきました。まだ夏本番ではないにも関わらず、熱中症の救急搬送が増えています。ところが電気代の高騰によって、多くの人がエアコンの使用を「ガマン」しているという調査結果も。
今回、パナソニックがエアコンや熱中症をテーマにしたセミナーを開催。セミナーには、熱中症をはじめとして家庭の医学に詳しい清益功浩医師と、パナソニックでエアーマイスターを務める福田風子氏が講演。エアコンの省エネ運転を図りつつ、熱中症を防いで快適に過ごせる方法を教えてくれました。
そもそも熱中症はなぜ起きる?
大阪府済生会中津病院の清益功浩医師は、熱中症には複数の要因があるといいます。ひとつは「体温」。人間の臓器は37℃以下でうまく働く仕組みなので、暑さで体内の温度が上がると内蔵機能が低下します。
「血液」が原因となることも。暑い環境では熱を逃がすために汗をかきますが、汗で体内の水分が減り、筋肉や内蔵に充分な血液が行き渡らず機能が低下するのです。そのほか、体内の電解質(塩分)バランスが崩れることで、体内のさまざまな調整機能がうまく動かなくなることもあります。
熱中症を防ぐには、暑すぎる時間に外出しない、外出時に帽子をかぶる、日陰で充分な休息をとる、こまめな水分(電解質)補給など、一般的にいわれる予防策が大切。もちろん、暑い日にはエアコンを利用するのも熱中症予防の基本。ただし、清益医師はエアコンが効いた室内と、外出時の「寒暖差疲労」にも注意が必要と警鐘を鳴らします。室内と室外の温度差が5℃以上あると、疲れを感じやすくなるそうです。
「暑い」と感じる理由は温度だけじゃない!
パナソニックによると、2022年の夏は約7割のユーザーがエアコンの設定温度を26℃以下に設定していたそうです。よく「エアコンの設定は28℃」といわれますが、28℃設定では暑く感じるという人のほうが多いのでしょう。
とはいえ、設定温度を低くしすぎると前述の寒暖差疲労を起こしやすくなるうえ、電気代も上がります。暑さを感じず温度が低すぎない――ちょうどいい設定温度にしたいものです。
パナソニックで空気のスペシャリスト(エアーマイスター)を務める福田風子氏は、「人が暑さを不快に感じるのは、温度だけが原因ではない」と解説します。重要なのは温度、湿度、放射、気流、着衣量、活動量という6つの要素バランス。これは一般的に「PMV(=Predicted Mean Vote)」と呼ばれます。
福田氏は、エアコンの温度設定を下げなくても、ほかの要素を工夫することで快適性を維持できるとも。たとえば、暑いと感じたら薄着になる(着衣量)、室内に日差しがサンサンと差し込んでいるならカーテンを閉める(放射)。改めて聞くとなぁんだと思うかもしれませんが、手軽で有効な暑さ対策なのです。
エアコンの設定温度を下げすぎず上げすぎず、快適に過ごすには「湿度」と「気流」がとくに重要。湿度を低く抑えれば、蒸し暑さが減って快適性がアップします。一例として、同じ「27℃」の室内でも、湿度が55%以下なら快適と感じる人が多く、60%以上になると暑いと感じやすいのです。
湿度の高い夏は、室内の湿度を55%以下にするためにはエアコンの除湿(冷房)運転が必須です。エアコンの設定温度を27℃にすると、以下のような現象が発生します。
室内温度を27℃に下げるため冷房開始、冷房は除湿もするので湿度も下がる
↓
室内が27℃まで下がると冷房運転が自動的に止まる
↓
冷房運転が止まると除湿も止まる
↓
部屋の温度は27℃以下を維持しているけれど、湿度が上がって蒸し暑く感じる
これが、冷房をつけているのに蒸し暑く感じる大きな要因。この不快な蒸し暑さを避けるため、エアコンの設定を低めにする人も多いのです。
「設定温度の範囲なのに蒸し暑い」という体感は、冷房が基本的に「設定温度に到達すると運転オフ、部屋が暑くなったら再びオン」というオンオフ運転を繰り返すことが理由です。これを緩和するために、パナソニックのエアコン高機能モデルは「新・エネチャージシステム」を搭載しました。エネチャージシステムは、エアコン運転時に出る余分な熱(エネルギー)をためておき、必要なときに熱を取り出して使う機能です。
新・エネチャージシステムを活用すると、冷房時に室内が設定温度まで下がってもエアコンの運転を止める必要がありません。エネチャージの熱を利用して、部屋の温度が下がらないレベルの「弱い運転」で除湿を続けられるからです。つまり、高めの設定温度でも不快な暑さを感じにくいというメリットがあります。
気流を味方に、省エネと快適性を両立
福田氏は、新・エネチャージシステムを搭載していないエアコンでも、すぐに試せる省エネ術もあるとします。それが「気流」を味方につけること。たとえば、煙がほとんど動かないようなレベルの弱い気流でも、身体に空気が当たると体感温度は下がります。扇風機やサーキュレーターで部屋の空気を攪拌(かくはん)すると気流も生まれ、エアコンの設定温度を数度上げても暑さを感じにくいのです。
住宅によっては、エアコンの設置場所による熱ムラが発生することもあります。こんなときは、冷気が届かない「不快ゾーン」をサーキュレーターで解消することが大切。細長いリビングなどでは、長辺側の壁にエアコンを取り付けるケースが多いでしょう。
すると同じ部屋の中でも、エアコンの風が届く範囲と届かない範囲で大きな気温差が発生しがち。今回のセミナー会場では、長方形の部屋(約30畳)でエアコンを真横に設置して、温度の違いを体験するデモンストレーションがありました。
工夫しだい快適性と省エネ性能は両立
少し古めのエアコンでも、工夫しだい快適性を犠牲にせずに省エネ運転は可能です。とはいえ、最新の高機能エアコンなら、ユーザーがPMVなどを考える必要はなく、エアコンが賢く総合的な状況を判断して省エネ運転をしてくれます。
筆者がパナソニックのエアコンで気に入っている省エネ機能は、専用アプリの「つけっぱなし判定」です。エアコンと省エネの話題になると、必ず登場するのは「外出時にエアコンは消すべきか、つけっぱなしか?」というテーマ。エアコンは運転スタート時がもっとも電力を消費するため、短時間の外出ならエアコンを消さないほうが省エネの場合もあるのです。
とはいえ、これは各家庭の住宅性能(断熱性能)、天候、外出時間など、さまざまな要因によって「どちらが省エネなのか」は違ってきます。パナソニックのエオリア アプリは、外出時にエアコンをつけっぱなしのほうが省エネかどうかを、日々の運転から学習した住宅の断熱性能や天気予報などをもとに計算してくれるのです。
最新の高機能エアコンは、近年の物価高もあって高価な買い物。「省エネのため」といって、すぐに買い換えるのは難しいものです。とりあえずは既存のエアコンで省エネの工夫をしつつ、次の買い換え時には「快適」で「省エネ」な製品の購入を検討してみとよいでしょう。