VITUREの「VITURE One」(ヴィチュアー・ワン)は、現在、クラウドファンディングサイトのMakuakeでプロジェクトが進行中のスマートグラスです。メガネ型のデバイスにマイクロディスプレイが搭載されており、スマホやPCをつなぐと目の前の風景に重ねて画面が表示されるというもの。開始数日で目標金額に到達するなど、注目度の高いプロジェクトになっています。

応援購入価格は「XRグラス」単体で54,880円~ですが、オプションの「ネックバンド」や「モバイルドック」を併せて使うことで、さらに楽しみ方が広がります。今回は、これらがセットになった「VITURE One Ultimateセット」(応援購入価格は89,880円~)を試しました。

  • XRグラス、ネックバンド、モバイルドックが揃った「VITURE One Ultimateセット」

デザインやサイズは一般的なサングラスに近い

XRグラスは重さ78gと軽量で、ややごつめのサングラスくらいのサイズ感に収まっています。製品には、専用のケースとケーブルが付属。ケーブルは、片方がグラスにつなぐマグネット式の独自コネクター、片方がUSB Type-Cになっていて、対応するスマホやタブレット、PCに接続すると、視界の中のバーチャルなモニターに映像が表示されます。電源は、接続したデバイスから供給される仕組みですが、専用ケーブルは汎用ケーブルのように代替が効かないので、なくしたりどこかに忘れたりしないよう注意する必要があります。

  • XRグラスと専用ケース、約1メートルの専用ケーブルが付属していて、ケースに収納できるようになっています

  • ノーズパッドは4種類付属していて、グラスが最適な高さにくるよう調整できます。筆者は一番長いノーズパッドがぴったりでした

  • コネクター部分には髪の毛を挟まないように、専用のカバーも用意されています

メーカーの説明では、モニターのサイズは120インチ相当とのこと。大きさを調整できるわけではありませんが、サイズの体感は背景の壁などとの距離によっても変わります。実際に筆者が自分のデスクに座って試した体感は、24~27インチくらい。一方で、ベッドに寝そべって天井を見上げたときには、確かに大画面のプロジェクター映像を見ているような感覚になります。

解像度はフルHD(片眼1,920×1,080ピクセル)で、FOV(視野角)は43度、PPD(視野角1度あたりの画素数)は55、輝度は1,800nitsでリフレッシュレートは60Hzに対応。輝度が高いためか、背景が透けていてもディスプレイはかなり明るく見えます。テンプルの下側にあるボタンを押すと、調光フィルムをオンオフすることができ、オンにすると背景が少し暗くなって、より映像が見やすくなる工夫もされています。

この手のメガネ型のデバイスは、メガネの上からかけられないのがネックなのですが、VITURE OneのXRグラスには、近視の程度によってメガネがなくても視力調整ができる機能が付いています。左右のレンズの上のダイヤルを回して、それぞれ度数を0~-5.0Dの範囲で調整可能。度付きのレンズが入れられる「レンズフレーム」(2,680円)もオプションで用意しますが、調整可能範囲内の視力であれば、そうしたコストや手間をかけることなく利用できます。これは家族など、ほかの人とVITURE Oneを共有する場合にうれしい機能といえるでしょう。

  • 左右のレンズ上のダイヤルで0~-5.0Dの視力調整ができるのが大きな特徴のひとつ

  • オプションで、視界を完全に遮れる「レンズフード」(1,280円)も用意します

VITURE Oneの最もミニマルな使い方は、XRグラスとスマホをケーブルでつなぐ方法ですが、残念ながらすべてのスマホで使えるわけではありません。ケーブル接続して映像を出力できるのは、いわゆる「DisplayPort Alternate Mode(DP ALTモード)」に対応した機種だけ。メーカーのホームページに対応デバイスが公開されていますが、そもそもUSB Type-Cで接続できない「iPhone」や、DP ALTモードに非対応の「Google Pixel」シリーズなどはこの方法では使えません。そこで、ネックバンドやモバイルドックといったオプションの出番となります。

これさえあればいろいろ楽しめる、独自OS搭載のネックバンド

折りたたみもできるネックバンドはバッテリーを搭載していて、これ自体がAndroid 11ベースの独自OSを搭載したデバイスになっています。メモリーは2GBで、ストレージは128GB。マグネット式のコネクターをXRグラスにつないで電源をオンにすると、Android TVと同様にエンタメコンテンツの再生に特化したOSが起動。「YouTube」や「Netflix」「Amazon Prime Video」など、動画配信サービスが楽しめるアプリがあらかじめインストールされていて、Wi-Fiに接続してサービスにログインすれば視聴できます。

  • 独自OSのホーム画面には、最近視聴したコンテンツやおすすめのコンテンツが表示されるようになっています

画面の操作には、左手側にあるコントロールキーを使うのですが、手元が見えないため、手探りでの操作になります。キーの方向などはカスタムできるものの、慣れるまではちょっと使い辛いです。そこで、表示されるディスプレイを固定し、頭を動かしてカーソルを移動する「ヘッドコントロールモード」という操作方法も用意しています。視線ではなく、頭の動きでカーソルを移動できるのですが、決定などはやはりコントロールキーで押す必要があります。ネックバンドはBluetooth 5.0に対応していて、マウスやキーボード、ゲームコントローラーなどの機器を接続できるので、そちらを使う方がラクかもしれません。なお、「HARMAN」と共同開発したというサウンドはテンプル内のスピーカーから聞こえますが、Bluetoothでワイヤレスヘッドフォンにも出力できます。

  • 左側にコントロールキー、右側には熱を逃すためのファンが搭載されていますが、耳に近いこともありそれなりに音がします

  • 手探りでの操作となるため、使いこなすには慣れが必要だと感じました

  • 設定でコントロールキーのカスタマイズもできるようになっています

  • ヘッドコントロールモードでは、画面にカーソルが表示され、頭の動きで操作できます

プリインストールされているもののほかに、「Google Play」からアプリを追加することも可能。動画配信サービスやブラウザーなどのほか、ぞれぞれのデバイスに応じたミラーリングアプリを使えば、iPhoneやDP ALTモード未対応のスマホからもワイヤレス出力ができます。ほかにも「PSPlay」アプリを追加して「PlayStation 5」をリモートプレイするなど、アプリを追加することでさまざまなコンテンツが楽しめます。このほか、サイド・バイ・サイド方式の3D映像(3,840×1,080ピクセル)が視聴できる「3Dモード」や、画面を小さく表示することで周囲にも目を配れる「アンビエントモード」といった視聴方法も用意します。

  • アンビエントモードでは、画面をあらかじめ設定した視界の四角に寄せて、小さく表示できます

ネックバンドのバッテリー容量は3,200mAhで駆動時間は2~3時間となっていますが、別売で7,660mAhの大容量バッテリーを内蔵する専用ケースも用意します。ネックバンドを折りたたんでケースに収納し、マグネット式のコネクターをつなぐと、ワイヤレスヘッドフォンみたいにケースから充電ができる仕組み。ネックバンドが194gなのに対して、ケースは494gとかなり重いので、一緒に持ち運ぶかどうかはちょっと悩ましいところですが、電源のない場所や移動中にもチャージができるようになっています。

  • ネックバンドと別売の「ネックバンド充電ケース」(12,180円)

「Nintendo Switch」の2人プレイが可能なモバイルドック

もうひとつのモバイルドックは、おもに家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」または「Steam Deck」用のオプションになっています。付属する20cmのUSB Type-CケーブルをNintendo SwitchやSteam Deckとつなぎ、さらにメガネマークの端子にXRグラスをつないで、電源を入れるだけ。今回はSwitchで試しましたが、コントローラーを操作すれば、どこでも大画面でゲームをプレイできます。モバイルドックには、XRグラス用のコネクターが2つ用意されていて、2台つなげば2人プレイも可能。13,000mAhと大容量のモバイルバッテリーでもあるので、たっぷり遊べます。

Nintendo Switchとモバイルドックを一体化できる、専用の「Nintendo Switch用 モバイルドックカバー」(2,680円)や、同じくSteam Deck向けの「Steam Deck用 モバイルドックカバー」(2,680円)も用意されています。

  • 「Nintendo Switch用 モバイルドックカバー」(左)とモバイルドック(右)

  • カバーでモバイルドックとNintendo Switchを一体化して近くに置き、XRグラスをかけてコントローラーを操作すればプレイできます

  • モバイルドックにはHDMI端子も備わっています。また、XRグラスを2つ接続できるようになっています

モバイルドックにはHDMI端子もあり、ここにアップルの「Lightning - Digital AVアダプタ」を使ってiPhoneを接続すれば、iPhoneからも有線での映像出力ができます。また「Chromecast with Google TV」や、「Amazon Fire TV Stick」をつないで、2人で一緒にコンテンツを楽しむといったこともできます。ゲームをプレイするためだけでなく、XRグラスにHDMI出力するためのドックにもなっているというわけです。

オプションも含めたエコシステムがVITURE Oneの魅力

VITURE Oneは、スマホやPCとつないでXRグラス単体でも使えますが、ネックバンドがあれば、これらのデバイスとつながなくても、動画配信サービスやゲームのリモートプレイが楽しめます。また、直接つなげないデバイスともリモート接続ができます。さらにモバイルドックがあれば、Nintendo SwitchのプレイやHDMI経由の出力、XRグラスが2台あればコンテンツを2人で楽しむこともできます。

スマホやPCから出力できるXRグラスには「XREAL Air」(旧Nreal Air)がありますが、VITURE OneにはXREAL Airのような専用のスマホアプリが用意されていません。その代わりになるのが独自OS搭載のネックバンドであり、さらなる拡張性としてモバイルドックがあるというイメージ。このオプションやアクセサリーを含めたエコシステムが、VITURE Oneの独自性であり魅力と言えるでしょう。

  • Makuakeより。応援購入可能なセットの組み合わせ

問題はどういう組み合わせで使うかですが、Makuakeのプロジェクトでは、今回試した「VITURE One Ultimateセット」のほか、XRグラス+ネックバンドの「VITURE One Cloud セット」(75,880円~)とXRグラス+モバイルドックの「VITURE One Dock セット」(68,880円~)も選べるようになっています。スマホやPCからの出力がメインなら、XRグラス単体でも良いと思いますが、動画を中心にコンテンツを楽しむための専用のデバイスとして考えるなら、アプリ次第で拡張でき、リモート接続も可能なネックバンドとの組み合わせも捨てがたいです。Nintendo Switchのプレイや、2人で一緒に楽しむことを考えるなら、モバイルドックが必須……。このデバイスを使って何をしたいのか、実際の利用シーンをイメージしながら、じっくり検討したいところです。