女優の松本まりかが、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に臨んだ。担当したのは、25日に放送される『夢を追うタクシー ~目的地はまだ遠くても~』。タクシードライバーをしながら、夢に向かって奮闘する人々を追った作品だ。

今回の登場人物の中で、グラビアモデルから女優になる夢を持つ中島由依子さん(35)に、強く共感したという松本。自身の過去を重ねながら見つめていたという――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当する松本まりか

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当する松本まりか

■女優の夢抱く35歳のタクシードライバーに「グサグサ」共感

中島さんは、30歳を過ぎて奈良から上京したものの、芸能活動は撮影会の水着モデルや小規模な舞台公演など、“鳴かず飛ばず”の状況が続いてきた。彼女が思い描く芸能界での成功には、まだまだ遠い道のり。さらに、30代後半に差し掛かる年齢も、重い現実としてのしかかっていた…。

2000年に女優デビューし、18年にドラマ『ホリデイラブ』(テレビ朝日)でブレイクするまで、18年という長きにわたり下積み時代を送ってきた松本。それだけに、中島さんの姿は「あの頃の自分とすごくリンクして、グサグサ刺さりました」という。

共感した部分の1つが、中島さんがオーディションを受ける様子で、「『はい、ありがとうございました』って(審査側に)刺さってない感じは、本当に同じようなことがありました」と振り返った。

そんな夢を追い続ける彼女の姿を、どのような思いで見つめたのか。

「こんなにも一つ一つが大切で、喉から手が出るほど欲しい仕事がある……そんなあの頃の熱く葛藤してる気持ちが蘇りました。今は忙しくなり、その気持ちを持ち続けたら壊れてしまいますし、今は今のステージに立っていて見えるものも、すべきことも更新され、そこにエネルギーや情熱を注ぐのに一生懸命ですが、夢を諦めない強い気持ちを持っていたり、語ってる人には否応なしに惹きつけられますし、それは絶対に失っちゃいけないものだと感じさせてもらいました」

  • タクシーを運転する中島由依子さん

  • 撮影会の様子

  • (C)フジテレビ

夢を諦めない中島さんが両親とぶつかる場面が登場するが、それも経験しているだけに共感があった。

「芸能の仕事自体に反対されたわけではないんですが、“自分がこうありたい”っていう方向性の部分で、分かってもらえないことがありましたね。親は親でもやっぱり他人で、自分とは違う感性を持っている別の人間なんだと思って、ぶつかっても“理解してもらおう”とは思わなくなりました。だから、本当に戦うべき相手は自分のみ。自分の能力を磨くことや開花させることのほうがよっぽど難しいですし、それでしか自分が上がれるものはないですから」

■年齢よりも「自分に恥じない自分でいよう」

年齢によって夢を断念するという世の中の風潮も、30代中盤でブレイクした松本には無関係だった。

「“30代になったら自分に恥じない自分でいよう”って思っていました。他者からの目じゃなくて、自分自身が曇りなくそう思えることが大事なんだって。私も今30代後半になりましたが、年齢とか結婚とかは楽観的に考えているところがあって(笑)。そんなことより素敵な人であり続けたいし、そしたらきっと結果はついてくると思うんです。40代になったとき、“40らしくない”って言われても、しょうがない(笑)。誰かが決めた固定概念を意識せず、自分がこうだと思えるように生きることできっと個性が認められると思うんです」

35歳で女優の夢を持ち続ける中島さんを見て、「その強さに、すさまじいものを感じましたし、心が打たれました。夢を持つ人の強さっていいものですね」という松本。ブレイクしてから5年にわたり走り続け、今少し休みが取れるようになったことで、次のステップを考えるタイミングにあるそうだ。

「今やっと息が吸えるようになったというか、自分が一体何なのか、周りで何が起きていたのかというのが、だんだん分かり始めたんです。そうすると、もう一歩ネクストステップに上がりたいというふうに思ってきて、すべてを捨てて次に行きたくなる性といいますか、今38歳ですが、40歳になっても守りに入るようなことはしたくない。自分自身が自分自身を面白いと思える人生でありたい。5年間がむしゃらに走ってきたから、今度は本当に自分がワクワクすることを選びながらやっていけば、これからもっと成長できるんじゃないかという心境です」

『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当するのは、『もう限界かもしれません ~コロナと父娘のラーメン屋~』(22年2月13日放送)以来、1年4カ月ぶり。「久々に“ドキュメンタリーっていうドキュメンタリー”を見せていただいて、“語り”をやらせていただいて、“本物”って引力が違うなと思いました」と感想を語りながら、「私はフィクションをやっていますが、やっぱりリアルな人間の面白さに本当に惹きつけられましたし、“ドキュメンタリー好きだな”って思いました」と、再確認したようだ。

●松本まりか
1984年生まれ、東京都出身。00年に『六番目の小夜子』(NHK)で連続ドラマデビューし、18年『ホリデイラブ』(テレビ朝日)で注目を集める。近年はドラマ『向こうの果て』(WOWOW)、『それでも愛を誓いますか?』(ABCテレビ)、『東京、愛だの、恋だの』(Paravi)、『雨に叫べば』(Amazonプライム・ビデオ)で主演を務め、『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日)などバラエティでも活躍。現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』に出演するほか、映画『アイスクリームフィーバー』が7月14日に、『湖の女たち』が公開予定となっている。