屋上緑化とは

建築物の屋上で植物を栽培する「屋上緑化」。マンションや一戸建て住宅など、一般家庭の屋上で植物が育てられている状況も含めて「屋上庭園」とも呼称される。近年では環境配慮の意識の高まりもあり、特に都市部を中心に、屋上緑化を導入する建物が増加している。

国土交通省によると、2020年の屋上緑化施工面積は約19.9ヘクタールに上り、2020年までの屋上緑化の累計面積は約538ヘクタールに達している。同年の施工面積を建物用途別にみると「工場・倉庫・車庫」が最も多く、「商業施設」、「住宅/共同住宅」が続く。

屋上緑化が国内で広がる背景

「近年、屋上緑化が増えてきている要因として、直接的にはビルや公共施設を建てる際に、一定基準を緑化することが義務づけられていることが挙げられます。環境配慮の意識の高まりもあり、付加価値の創生や、光熱費を抑える効果を期待して導入するケースも増えています」。株式会社豊橋園芸ガーデンの榊原麻友さんは屋上緑化が広がる背景について、こう説明する。

都道府県や市町村によっては、一定規模以上の物件を新築または増改築する際に、基準以上の緑化が義務づけられており、直接的にはこれを満たすために屋上へ緑化スぺ―スを設けるケースが多いという。一般家庭に向けては、屋上緑化に対する補助金・助成金制度を設けている自治体もあり、近年の屋上緑化の広がりには、これらの要素も深く関わっているといえそうだ。

屋上緑化のメリット

屋上緑化のメリットは大きく分けて三つある。それぞれ、お二人に解説してもらった。

省エネ効果

人間の活動によって気温が上がる「ヒートアイランド現象」や、地球温暖化の原因となる「二酸化炭素の増加」。屋上緑化によって、緑が少なく人口が多い都市部で特に問題視されているこれらの現象の改善が期待できそうだ。

「植物は水を吸う際に水蒸気を出す性質があるため、屋上に緑があることで、温度の上昇が気化熱によって抑えられます。また、グリーンカーテンのように直射日光を遮る役割もあり、夏には室内温度の上昇を軽減するなど、温度変化の振り幅を抑えてエアコンの省エネ稼働にもつながるといえます」(麻友さん)

リラックス効果

植物の緑には癒しの効果があり、精神の安定によるリラックス効果、疲労回復効果が期待できる。特に病院の屋上では、こうした効果を狙って屋上緑化を進める施設も多いという。

株式会社ガーデンアクアの榊原伊織さんは「木々の揺れや水の音はリラックス効果が高いため、『水や緑』を屋上に置きたいというご依頼は非常に多いです」と話す。こうした効果に目をつけ、商業施設などでは無機質になりがちな屋上スペースに彩りを加えて付加価値の創出を狙う導入事例も少なくないそうだ。

大雨など自然災害をカバー

緑地の減少により地中への雨水浸透量が減少する昨今。ゲリラ豪雨などの増加により、都市型洪水の可能性が危惧される中、レインガーデンを導入した外構緑化も増えている 。部分的、計画的に雨水浸透能力を高めた部分を設け、雨水を集めて浸透させるこの技術により、大雨などの際に過剰水分の排出を抑えることができるという。

屋上緑化で育てる植物選びのポイント

屋上緑化でよく育てられている植物としては、耐寒性、耐暑性に優れた常緑低木のブルーパシフィック、グランドカバーに向いている常緑多年草のアジュガ、乾燥に強く土質もほとんど選ばないアガパンサスなどが人気だ。

麻友さんは植物選びのポイントについて「強い雨や風の中でも生育できる、こうした強い植物が向いています」と前置きしつつ、次のように注意点を解説する。

「虫が大量発生する恐れのある植物は避けるべきです。例えば、通常の畑であればアオムシが発生しても、それをカエルが食べてくれるという構図がありますが、生息する生物が限定される屋上では、こうした生態系が成り立っていません。虫が発生した場合は薬を使って対策するほかありませんので、害虫のつきにくい植物を選ぶのがおすすめです」

屋上緑化の導入事例

マンションや商業施設、一戸建て住宅の屋上などさまざまな所で行われる屋上緑化。具体的にどのような導入事例があるのか、両社が関わった事例を交えて紹介する。

日本一高い所にあるスターバックスコーヒー

名古屋駅前の複合ビル「JRゲートタワー」15階にあるスターバックスコーヒー 名古屋JRゲートタワー店は、地上約70メートルの場所に位置し“日本一高所にあるスタバ”として知られている。

豊橋園芸ガーデンは、この店のテラス席中央部分への樹木の植栽、メンテナンスに携わった。緑に彩られた癒しの空間が話題を呼び、東海エリアの人気スポットとして多くの人が訪れている。

商業施設の緑化

名古屋駅の南側にある商業施設「グローバルゲート」。自然を取り入れた建物構造が特徴的で、従業員や来場者のリフレッシュ空間となるよう、館内の至る所で緑化が施されている。

一面を緑に彩られた商業施設内のオープンテラスは一般客が自由に出入りできるほか、屋上庭園ではハーブなどを中心に約150種類の植物が育てられている。ここで採れたハーブは館内のレストランで提供されるなど、地域参加型の商業施設として注目されているという。

屋上緑化の注意点

屋上緑化を計画、設計する際に注意すべき点はあるのか。ポイントを伺うと、麻友さんは開口一番に「どれだけメンテナンスをきちんとできるかに尽きます」と話してくれた。

「屋上菜園を始めた人の中には、草取りをしなかったことで、雑草のチガヤが屋上に蔓延(まんえん)し、根が防水層を傷つけて雨漏りの原因になってしまった事例があります。屋上緑化に適した設備を用意することと同じくらい、日ごろのメンテナンスも重要です」と麻友さん。

伊織さんも「屋上緑化の資材やプランターなどを避難通路に置かないなど、消防法を順守した適切な配置も行う必要があります」と呼び掛けた。

屋上緑化の導入にはプロの力を

植物を含めた積載荷重の条件や、排水設備など、屋上緑化を始めるにあたって押さえておくべきポイントは多々ある。一般家庭で屋上菜園を始める際にも、適した植物の選定やその後のメンテナンスなど、考慮すべきポイントは多いため、専門家のアドバイスを受けながら進めるべきだろう。

株式会社ガーデンアクアでは、長年にわたって培ってきた造園工事業、水景設計のノウハウがあり、それぞれのニーズに対してワントップでの対応が可能だ。

「特に、今あるビルや施設を使った屋上緑化は難しいとされていますが、水のプロ、緑のプロがいる我々には対応できる余地があります」と伊織さん。壁面緑化などの特殊緑化なども得意としているといい、導入を検討している方は一度、問い合わせてみてはいかがだろうか。

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