第82期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、1回戦の永瀬拓矢王座-菅井竜也八段戦が6月22日(木)に名古屋将棋対局場で行われました。対局の結果、87手で勝利した菅井八段が幸先のよいスタートを切りました。
中飛車対居飛車穴熊の対抗形
先手となった菅井八段は得意の中飛車に構えます。これを受けて後手の永瀬王座は5筋の歩を突いて先手の位取りを拒否。細かな折衝ののち、本局の戦型は先手中飛車対居飛車穴熊の対抗形に落ち着きました。居飛車穴熊が完成しては厄介と見た菅井八段はすぐに5筋の歩を突っかけて戦端を開きます。
盤上中央で銀交換を果たした菅井八段はその後も軽快な攻めを披露。飛車との交換で入手した角を敵陣深くに打ち込んだのが継続の手段で、後手に息つく暇を与えません。「菅井八段の攻め対永瀬王座の受け」という構図で難解な中盤戦が続くなか、菅井八段が持ち駒の金を打って穴熊に食いついた局面が重要な分岐点になりました。
菅井八段が攻め切って快勝
実戦で永瀬王座は丁寧な銀打ちで受けに回りますが、菅井八段はこの直後に好手を用意していました。後手が飛車を切って急所の角を抜いてきた瞬間、いったん金で桂を取って王手をしてから手を戻したのが当然とはいえそつのない利かし。手順に飛車角銀桂の「4枚の攻め」を実現したことで菅井八段の攻めに勢いがついてきました。
優位に立った菅井八段はその後も好調の攻めを繰り出します。穴熊からはい出してきた後手玉をめがけて竜をタダ捨てしたのが最後の決め手。これを取ると1手で必死がかかるため永瀬玉に受けはありません。終局時刻は22時6分、自玉の受けなしを認めた永瀬王座が投了。最後まで攻め切った菅井八段が名人挑戦に向け好スタートを切りました。
水留 啓(将棋情報局)
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