鈴木社長が感じる「日本のデジタル人材教育の遅れに対する強烈な危機意識」
6月13日に行われたインテルプレスセミナーQ2/2023の最後に、インテルの鈴木社長の強い思いがこもった「デジタル人材育成に向けた取り組み」が紹介されました。
インテルはこれまでも日本国内向けのデジタル人材育成に大きなリソースを割いてきており、ほぼ1年前の2022年6月22日のプレスセミナーでも下記のような施策を行ってきたと説明していました。(参考記事:「インテル 2022年上半期の総括と下半期の取り組みを説明 - プロセス技術進捗やデジタル田園都市構想に言及」)。
- 学生向けのSTEAM教育促進に対し、パートナーと共にSTEAM Labの構築支援を行う
- インテルが行っているDcX Lab、Media Lab/AI Labを総称して『インテル・デジタルラボ』と呼び、小学生から大人のリスキリングにまで対応するデジタル人材育成を包括的に扱う活動
- 米Intelが行っている『Indel Digital Readiness Progress』の日本語版を作成し、これを使用した千葉県でDX/DcX研修
- 香川県三豊市とのインテル・デジタルラボ協業にて、自治体関係者や地域企業を対象としたDX/DcX研修やワークショップの開催、高校・高専生を対象としたAIラボの開設予定プラン策定
また、2~3年前から日本社会の課題として「サステナビリティ、セキュリティ、デジタル人材育成」があり、これを解決するためにインテルが強化している活動の一環、というわけです。今回は最新の取り組みを含めてアップデートした説明となりました。
デジタル人材育成の遅れに関して、「インテル日本法人として強烈な危機意識を持っている。インテルの活動で、良い「点(個別事例)」はできた。点は作れたけど線、面の展開ができていない。我々がインフルエンサーになるのはよいが、人材育成の点が線や面にならないといけない(鈴木社長)」と活動の強化を訴えると共に、「マスコミにも報道等で協力して欲しい。時間がない。デジタル人材の育成は社会人まで網羅的に行わなくてはいけない」と熱く語ります。
STEAM LAB構築の支援拡大と今後の展開に関しては、埼玉県戸田市からSTEAM LABを構築したところから開始し、現在18校に拡大しています。戸田市のSTEAM LABには1人1台以上のPCがあり、1つの教室にさまざまな機器のある豊かなコンピューティング環境で子供たちが創作・分析として活用するなど、大きく突き進んでいると説明。首相の視察や議員7~8名に説明する会も行ったと言います。
また、政府がデジタル田園都市構想を掲げ、2026年末に230万人のデジタル人材育成をめざす目標となっていますが、例えば文科省だと教育機関のみとなり、企業や政府・自治体まで包括されていないと語ります。
これに対しインテル デジタルラボでは小中高、高等教育機関、企業、政府・自治体向けにも包含されているところを強みとして挙げています。また、幅広くAIの基礎から応用まで企業の方に教育するプログラムもあり、これを日本向けに翻訳・手直しして提供できる点に強みもあります。
デジタル人材もそうですが、2030年までに80万人の「プログラミングもできて、AIの基礎知識もあり、分析の基本的な事ができる」IT人材が不足すると言われており、これが経済を直撃。ここにも人員育成の必要性があります。
社会人への育成に関しては千葉市人材育成課とのDX/AI研修の取り組みを紹介。職員の次は市民の方がオンラインでアクセスできるAI for Citizensを実施。千葉市の職員は社会課題を把握していることから、AIの基本的な事を学ぶとそれを生かしたクリエイティブなプログラムを作っているので手ごたえがあると紹介。
さらには香川県三豊市と包括提携協定を締結し、これも民間と官が一緒に熱い議論を夜中まで交わしていたことを紹介しました。
ただ、鈴木社長はこれらすべては事例という点に過ぎないといいます。いくつかのIT企業も同様の活動をしていることからスケーリングして線・面にするために動く必要があります。そこでインテルは今後マッチメイキングプラットフォームを作り、主体となる自治体がアクセスして、これに協力したいという企業とのマッチメイクを行いたいと説明。
企業のすべてがインテルのように中立的な活動をしているわけではなく、多少ビジネスとして提供するにしても、長期的な日本の教育のために多くの人がアクセスする場を提供したいと今後の方向性を説明しました(具体的に「〇月までに作る」という話はされていませんでしたが)。
後で問い合わせたところ、「マッチングプログラムに関しては、まだ実際に稼働していないため企業側はオープンまで待ってほしい。教育関係機関はインテルまで直接問い合わせてほしいとのことでした。