永瀬拓矢王座への挑戦権を争う第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、挑戦者決定トーナメント2回戦の藤井聡太竜王・名人―村田顕弘六段戦が6月20日(火)に関西将棋会館で行われました。対局の結果、94手で勝利した藤井竜王・名人がベスト4進出を決めました。
相掛かり「村田システム」
振り駒が行われた本局、先手となった村田六段は相掛かりの作戦を明示。角道を開ける手を保留したまま早繰り銀の要領で右銀を繰り出したのが用意の作戦で、敵角のさばきを封じながら飛車先突破を含みに作戦勝ちを目指します。右辺の攻撃陣を完成させた村田六段は、5筋の位を取ったあと慎重に角道を開けて様子を窺いました。
2筋からの攻めを見せられた後手の藤井竜王・名人は7筋の歩を伸ばして反撃に転じます。手順に角を中央に活用したのは戦場を盤面全体に拡大する狙いながら、直後に先手の村田六段の方に好手が出ました。決断よく飛車を切って角と刺し違えたのがそれで、継続の角打ちが飛車金両取りとなっては村田六段の有利は明らかです。
藤井竜王・名人渾身の勝負手
優位に立った村田六段がその後も緩みない攻めでリードを拡大したまま局面は終盤戦に突入します。非勢が続く藤井聡太竜王・名人も先手玉を薄くしながら実戦的に迫って相手に楽をさせません。双方一分将棋の秒読みのなか、藤井聡太竜王・名人の繰り出した5筋への金捨てが本局の命運を分ける勝負手になりました。
実戦で村田六段は素直にこの金を取る手を選択。持ち駒を補充しながら藤井玉に詰めろをかける味のよい手に見えましたが、これが藤井竜王・名人の用意したワナでした。後手がじっと7筋の香を外して自玉の詰めろを解除した局面は、驚いたことに一転して藤井竜王・名人の一手勝ちになっています。
こぼれ落ちた金星
秒に追われる村田六段は歩を取って詰めろを解除しようとしますが、藤井竜王・名人の着手は冷静でした。すぐに竜を切って王手したのが決め手で、長手数ながら村田玉は即詰みを免れません。終局時刻は21時37分、自玉の詰みを認めた村田六段が駒を投じて熱戦に幕が引かれました。敗れた村田六段は「藤井竜王・名人に勝つ大変さを思い知らされた」と語りました。
勝った藤井竜王・名人はこれでベスト4に進出。同日に行われた対局で斎藤明日斗五段を破ってこちらもベスト4に進出した羽生善治九段との対決が予定されています。
水留啓(将棋情報局)
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