次に、野生型マウスを用いた同様の実験が行われた。すると、12時間明期・12時間暗期の照明条件では47%のマウスが4日間の性周期を示したが、残りの動物は、4~5日間もしくはそれ以外の周期(日数)が混在する不規則な性周期で回帰していることが判明した。
ところが、このマウスを長日環境下で飼育したところ、4日間の性周期を示すマウスが68%まで増加したという。つまり、明期の延長が性周期の日数を短縮させることが明らかにされたのである。性周期が5日間から4日間に短縮するということは、排卵の頻度が上昇し交配確率が5分の1から4分の1に上がることになる。これは、周年繁殖動物であるマウスにおいても、長日環境下で飼育することにより、繁殖効率が上がることが示されているとしている。
女性の健康増進は急務であり、これまで軽視されがちだった女性特有の生理現象のメカニズムの解明は、少子化などの喫緊の社会的問題を解決する糸口になる可能性があるという。このような背景により、今回の研究における「周年繁殖動物においても光環境が繁殖・生殖機能に影響を与える」という趣旨は、女性の健康増進に対して新しい治療方法の確立、治療薬の開発などを促し、社会に貢献する重要な課題であると考えられるとしている。
日本では、明治から昭和初期にかけて1月~3月生まれが多く、6月~8月が少ないというデータが残っているという。ヒトの妊娠期間(受精日から平均38週間)を考慮すると1月~3月生まれは、日が長くなる4~6月に妊娠したことが考えられ、工業化の前は日本にも出生数に季節性があったといえるとする。
今回の研究により、マウスにおいて長日条件が性周期の安定化・短縮を引き起こすことが判明したことから、ヒトにおいても長日条件により繁殖効率が上がる可能性が示されているとする。これらの結果は、今後の概日リズム研究の発展に貢献するとともに、女性特有の疾患の発症機構の解明や、その治療や対策方法の考案に寄与するものと考えられるとした。さらに研究チームでは「サーカディアンタイミング戦略」を提示し、ライフコースを通した心身の健康増進に貢献していくとしている。