明治大学(明大)は6月19日、「周年繁殖動物」に分類されるマウスであっても、日の長さ(日長)を延長した長日環境下で飼育すると、雌の性周期が安定・短縮することを発見したと発表した。

  • 今回の研究の概要。(上)Per1/2/3KOマウスは、12時間明期:12時間暗期の照明条件では、リズムが整いにくく、性周期が正常に回帰しない。明期を延長した14時間明期:10時間暗期の照明条件では、リズムが整い、性周期が正常に近くなることが判明。(下)野生型マウスでも同様に2時間の明期の延長がリズムをより強固にし、性周期の短縮・安定化に寄与する。

    今回の研究の概要。(上)Per1/2/3KOマウスは、12時間明期:12時間暗期の照明条件では、リズムが整いにくく、性周期が正常に回帰しない。明期を延長した14時間明期:10時間暗期の照明条件では、リズムが整い、性周期が正常に近くなることが判明。(下)野生型マウスでも同様に2時間の明期の延長がリズムをより強固にし、性周期の短縮・安定化に寄与する。(出所:明大Webサイト)

同成果は、明大 農学部生命科学科 動物生理学研究室の中村孝博専任教授らの研究チームによるもの。詳細は、科学の全分野を扱うオープンアクセスジャーナル「Heliyon」に掲載された。

平均28日といわれる女性の月経周期は、動物では発情周期または性周期と呼ばれ、種によって回帰日数が異なる。マウスは通常4日間~5日間周期で性周期を回帰させ、その正常な回帰は雌性生殖機能が正常であることを意味する。

ヒトやマウスは1年中繁殖が可能であることから、周年繁殖動物に分類されている。これまでのところ周年繁殖動物においては、「季節繁殖動物」のような、日長の違いが繁殖活動や生殖機能に変化を与えることは報告されていなかったという。

女性(雌性)生殖機能、特に月経周期(性周期)との密接な連携があることがわかっているのが、睡眠-覚醒リズムを筆頭とする約24時間周期の概日(サーカディアン)リズムだ。哺乳類の概日時計中枢は脳・視床下部・視交叉上核に存在し、雌性動物の排卵に必要な時刻情報を生成し出力する。このメカニズムについては、視交叉上核に損傷を与えたり、概日時計を担う時計遺伝子の機能を無効化したりすることによって概日システムを混乱させると、性周期が乱れたり、交配成功率が低下することから確認されている。

哺乳類では、概日リズムは時計遺伝子群の転写・翻訳フィードバックループによって細胞内で生成される。その中でも、Period(Per)遺伝子は主要な時計遺伝子であり、Per1、Per2、Per3の欠損(Per1/2/3KO)マウスは、一定の暗闇などの一定条件で飼育すると概日リズムが欠如してしまうとする。

また同KOマウスでは性周期も損なわれ、その結果、繁殖率が低下してしまう。そのことから、概日リズムと性周期の間には双方向の関係があるといえる。これらを受けて今回の研究では、照明条件の変更が概日リズムの乱れたKOマウス(雌)の性周期にどのように影響するのか、日長を通常より2時間長くした長日環境で、性周期が何日間で回帰するかを調べたとする。

通常マウスは飼育室内において、照明条件を12時間明期・12時間暗期として飼育されるが、この条件でのKOマウスの性周期は不規則であり、5%のマウスしか正常である4~5日間の性周期を示さなかったとのこと。しかし明るい時間を長くし、14時間明期・10時間暗期の長日環境条件で飼育すると、38%のマウスが正常である4~5日間の性周期を示すようになったという。