Google純正Androidタブレット「Pixel Tablet」が登場しました。単なるタブレットとしてだけでなく、スマートスピーカーにも早変わりするハイエンドタブレットです。この久しぶりのGoogleタブレットの実力を検証してみました。
なお、「Pixel Tablet」の直販サイトでの価格は79,800円で、6月20日に発売となっています。
パフォーマンスの高いハイエンドAndroidタブレット
「Pixel Tablet」は約11型のディスプレイを搭載するAndroidタブレット。デザインはシンプルであまり特徴はありません。カラーは「磁器」を意味するPorcelainと、Hazel(ヘーゼル)の2色。ネーミングは少し特徴的です。
主なスペックをまとめると、ディスプレイは10.95型(約11型)、2,560×1,600ドットの16:10液晶で、輝度は500nit、USI 2.0のタッチペンにも対応します。本体サイズはW258×H169×D8.1mm、493g。
SoCはPixelスマートフォンと同じくGoogle Tensor G2とTitan M2セキュリティコプロセッサを搭載。メモリは8GB、ストレージは128GBまたは256GBとなっています。このあたりのスペックは、「Pixel 7」や「Pixel 7a」と同等です(「Pixel 7 Pro」や「Pixel Fold」はこれよりメモリが多くなります)。画面サイズは大きいですが、パフォーマンスは「Pixel 7/7a」同等と考えていいでしょう。
Androidタブレットのハイエンド製品は多くはないので、その意味では少ない選択肢の中の1つです。パフォーマンスの高いAndroidタブレットで、しかもアップデートが早く、セキュリティアップデートも5年間保証という点は、Google純正ならではのメリットでしょう。
モバイル通信はサポートせず、Wi-Fi 6とBluetooth 5.2、UWBに対応します。6GHz帯のWi-Fi 6Eはサポートしないようです。
カメラは前面と背面ともに8メガピクセルのシングルカメラで、1/4型センサーでピクセルピッチは1.12μm、AFのない固定フォーカスと、昨今のカメラとしてはかなり低機能です。基本的にはインカメラを使ったビデオ通話など、限られた用途を想定したものに感じます。
画質面では、Tensor G2による補正があるのでそれなりに見られる画質ではありますが、決して高画質ではありません。ただ、シャッター音が鳴らないというのは嬉しいところで、これはサイズが大きいので盗撮がそもそも難しいからでしょう。
ハードウェアとしては、ディスプレイの見栄えも良く、タッチの反応も良いのですが、リフレッシュレートは60Hzのようです。少し物足りない印象ですが、「原神」のような美麗なグラフィックスのゲームや、「アスファルト9」のようなレーシングゲームは快適に操作できました。画面が大きい分、グラフィックスを重視したゲームは楽しめそうです。
ただ、ゲームやアプリによっては横置きにしたときに全体表示にならないものもあります(例えば『ウマ娘 プリティダービー』など)。そういったアプリがあるのは残念ですが、Googleと開発者の頑張りに期待したいところです。単に画面を大きくするだけでなく、タブレット用の最適化したUIだとなお嬉しいところです。
パフォーマンス面では、今回テストした試用機ではベンチマークができなかったため、参考として同じTensor 2を搭載した「Pixel 7a」のスコアをご紹介しておきます。3DmarkのWild Life Extremeが1,787、GeekBenchのシングルコアが1,265、マルチコアが2,586といった結果。あくまで参考ですが、全体的にSnapdragon 8 Gen 1ぐらいのパフォーマンスでしょうか。
Pixel 7a | ||
---|---|---|
3Dmark | Wild Life Extreme | 1,787 |
GeekBench | Single-Core | 1,265 |
Multi-Core | 2,586 | |
GFXBench | マンハッタン3.1 | 2,879 |
マンハッタン3.1オフスクリーン | 3,149 | |
Aztec Ruins OpenGL High Tier | 1,937 | |
Aztec Ruins Vulkan High Tier | 1,809 | |
GeekBench ML | CPU | 354 |
GPU | 929 | |
NNAPI | 2,262 |
動画に関してはYouTube/Netflix/Amazonプライム/AbemaTVなど、11型というディスプレイサイズで快適に視聴できます。HDRにも対応し、明るく美しい画面で表示してくれます。見逃せないのは後述する「Chromecast搭載(Chromecast built-in)」という点。スマートフォンで視聴していた動画などを「Pixel Tablet」に転送(キャスト)して再生できるので、生活に応じて画面サイズを切り替えられます。
2つのアプリを並べて起動できる
搭載しているOSはAndroid 13ですが、タブレットに最適化されたUIを搭載している点も特徴です。過去にもタブレット向けUIのAndroid OSはありましたが、改めてGoogleがタブレットUIにチャレンジです。
とはいえ、すでに「Galaxy Z Fold」シリーズや「Galaxy Tab」シリーズで、SamsungとGoogleはタブレットのUIについて取り組んできたこともあって、ある程度こなれています。今回の「Pixel Tablet」では、Samsungとも微妙に異なるUIを採用しています。
「Galaxy」シリーズでは画面下部に固定できるタスクバーが用意されています。ホーム画面下部の固定アプリと最近使ったアプリを、PCのタスクバーのように固定表示する機能です。「Pixel Tablet」の場合、下から上に小さくスワイプするとタスクバーが表示されるタイプになりました。
ホーム画面下部には固定したアプリと最近使ったアプリが表示される仕組みで、たくさんのアプリを固定できるわけではありませんが、使いやすい仕様です。
「Galaxy」シリーズと同様にアプリを分割起動するマルチウィンドウにも対応。ただし、同時起動できるのは2つのアプリのみです。「Galaxy Z Fold」が3つのアプリを並べられ、さらにウィンドウ状態で1アプリを起動できるのと比べると、画面サイズが大きいわりには物足りないところ。とはいえ、タスクバーからアプリアイコン長押しで画面分割して起動できるので使いやすいとは感じました。
タスクバーの使い勝手は「Pixel Tablet」の方が優れていて、アプリの同時起動について3つ以上の「Galaxy」シリーズの方が優れているという印象です。
スマートディスプレイにもなるタブレット
「Pixel Tablet」の最大の特徴とも言えるのが、付属の「充電スピーカーホルダー」です。充電ケーブルを繋いでおくことで、設置するだけで充電が行えるスタンドとしても動作しますが、加えてスピーカー機能を備えているのがポイントです。4つのポゴピンで「Pixel Tablet」 と接続し、充電と同時にサウンド情報を伝送します。
本体のスピーカーではなくホルダーを活用するため、より大型のスピーカーを使ったサウンドの再生が可能になります。ホルダーのスピーカーは43.5mmのフルレンジとされており、音圧は大幅に向上します。
「Pixel Tablet」自体、4つのスピーカーを備えるので音質・音圧ともにそれほど悪くはありません。単体でのゲームプレイや動画視聴では十分なレベルですが、いったんスピーカーホルダーに接続すると、もう一段音質と音圧が向上する印象です。
加えて、ホルダーに設置すると同時に、「Pixel Tablet」はタブレット端末ではなくスマートスピーカー(ディスプレイ)として動作するようになります。ちょうど見た目も「Google Nest Hub」です。
「OK, Google」によるスマートスピーカーライクな使い方もできますし、「Google Home」アプリを使ったスマートホームのコントロール機能も搭載。インカメラを活用したGoogle Meet/Zoomなどのビデオ会議やLINEのビデオ通話といった機能も利用可能。
普通のAndroidタブレットであるので、インストールできるアプリは自由。「Nest Hub」と比べると、アプリを活用できるのが強みです。
もちろん、そのまま取り外せばタブレットとして自由に持ち歩き可能。Chromecastを内蔵しているので、帰宅したらスマートフォンで聴いていた音楽や視聴していた動画をスピーカーホルダーに設置した「Pixel Tablet」にキャストして大画面で視聴することもできます。
ホルダーに設置した場合にのみスマートディスプレイとして動作するため、Chromecastでキャストするためにはホルダーに設置している必要があります。ただ、いったんキャストすればホルダーから取り外しても再生は継続するので、自宅内を自由に持ち歩いて視聴できます。
「Nest Hub」のようなスマートディスプレイが登場したときは、この画面だけ持ち歩ければと思ったものですが、それを実現する製品がいよいよ登場しました。Androidタブレットとしては数少ないハイエンドのタブレット。しかも充電スピーカーホルダーも同梱して80,000円ほどからと、価格的にもコストパフォーマンスに優れています。
最大の欠点と言えば防水性能がないという点でしょうか。また、NFCと5Gには非対応ですが、こちらはタブレットとしては一般的でしょう。とはいえ、特にスマートスピーカーを持たない人にとっては一石二鳥の製品。Androidタブレット市場の拡大に繋がる製品として期待できそうです。