Google Pixelシリーズ初のタブレット「Google Pixel Tablet」が6月20日に発売を迎えました。オーディオビジュアル・エンターテインメントの実力を中心に、事前に借りたPixel Tabletの試用機を1週間ほど使った体験レポートを報告します。
最新Tensorチップを搭載。Pixelはタブレットも高性能
Google Pixel Tablet(以下:Pixel Tablet)はグーグルが設計した高性能・高効率なシステムICチップ「Tensor G2」と、Android OSの最新バージョンを搭載する約11インチのタブレットです。
タブレット本体を充電できる、スピーカー付きの充電台「充電スピーカーホルダー」とセットで販売される価格は79,800円(税込)から。セルラー通信に対応するモデルはなく、Wi-Fi専用のタブレットです。
グーグルが最新のPixel 7シリーズのスマホにも採用するTensor G2チップは、とても高性能です。
タブレットも、例えば11インチのディスプレイをふたつに分割表示して、それぞれの画面に別々のアプリを同時に立ち上げながら、データをドラッグ&ドロップでコピーするといった作業がスムーズにこなせます。
Pixel Tabletを仕事にも使い倒したいところですが、グーグルはスタイラスペンやキーボードを、純正アクセサリーとしては用意していません。
スタイラスペンはUSI 2.0規格との互換性があり、キーボードやマウス、トラックパッドなどはBluetooth対応のワイヤレスデバイスが使えますが、相性の良し悪しが製品によって変わります。各自で試しながら、使い勝手のよいものを見つける必要があります。
付属の充電スピーカーホルダーは積極的に使おう
付属する充電スピーカーホルダーは、専用のスピーカーとしても利用できるPixel Tabletの充電台。充電スピーカーホルダーがなくても、タブレットは本体のUSB-Cコネクタによる充電やデータの転送にも対応します。
しかしホルダーには43.5mm口径のフルレンジスピーカーが内蔵されているので、Pixel Tabletと一緒に使うと、タブレットで楽しむビデオや音楽コンテンツのサウンドがリッチになっておすすめです。
ホルダーはサイズがそれほど大きくないので、置き場所にも困らないと思います。ただホルダーはバッテリーを内蔵していないので、リビングからキッチンなど場所を変えて使う場合は、都度電源ケーブルを持って移動しなければなりません。
タブレットとホルダーとの間は、ポゴピンタイプの磁気式ドッキングインターフェースで接続します。本体をホルダーに近づけると、強い磁力でくっつくようになっています。
電源に接続したホルダーを経由してPixel Tabletをチャージしたり、Pixel Tabletから音声データをホルダーに出力できたりします。そのため、タブレットをドッキングしている状態でないとホルダーのスピーカーが使えません。ホルダーを独自にBluetoothなどで外部のオーディオプレーヤー機器に接続して使うことはできないので、あらかじめご注意ください。
Pixel Tablet側にも、ステレオ再生に対応する4つのスピーカーユニットが内蔵されています。同価格帯の製品に比べると内蔵スピーカーだけで十分に力強く、明瞭なサウンドが再現できるタブレットです。
でも、やはりPixel Tabletで映画や音楽を楽しむのであれば、ホルダーのスピーカーを使わない手はないと思います。
Netflixでドラマを再生すると、ホルダーのスピーカーは立体的で力強いダイアローグ(台詞)の再現力に富んでいます。YouTubeのトーク系コンテンツもタブレットの内蔵スピーカーで聴くよりも声が段違いにクリアです。音楽系コンテンツもサウンドにメリハリが効いていて楽しく聴けます。
Bluetoothヘッドホン・イヤホンも併用できる
YouTube Musicアプリで音楽ストリーミングもチェックしました。Pixel Tabletの内蔵スピーカーはボーカルや楽器の音像に若干のにじみが出てしまう印象ですが、同じ曲をホルダーのスピーカーで聴くと音楽のまとまりが格段に良くなります。ボーカルの音像が立体的になり、楽器の余韻もふくよかに感じられます。
音の情報量が増える効果は、例えばクラシックの弦楽四重奏を聴くと明らかにハーモニーの深みが増していてよくわかります。アップテンポなジャズやダンスミュージックは肉厚なリズムの躍動感がぐんと高まるところが魅力的です。
キッチンで料理をしながら音楽を聴きたい時や、夜間も静かに映画やドラマを観たい時には、タブレットをホルダーに装着して充電しながら、タブレットにBluetoothヘッドホン・イヤホンをペアリングしてサウンドを聴くことも可能です。
Bluetoothオーディオ機器が接続されると、ホルダースピーカーの出力は自動でオフになります。
ちなみに、タブレットの画面を上からスワイプダウンしてメディアコントロールを表示し、パネルの右上にあるアイコン(オーディオの接続先を示すアイコン)をタップすると、音声の出力先を、接続中のイヤホンとホルダースピーカーから素速く簡単に選べます。この操作方法を覚えておけばとても便利です。
空間オーディオ、LE Audioへの対応は?
最新のAndroid OSを搭載するデバイスの多くは、Bluetoothによるハイレゾワイヤレス再生が楽しめる「LDAC」というオーディオコーデックをサポートしています。Pixel Tabletも同様。単体でハイレゾ再生が楽しめるタブレットであることが、LDACに対応しないアップルのiPadとの違いになります。
かたやPixel 7シリーズのスマホがいち早く対応したグーグルの「空間オーディオ」にPixel Tabletが対応していないことが、今回試してみてわかりました。空間オーディオに対応していないと、Pixel 7などが対応するダイナミックヘッドトラッキングも使えません。
さらにPixel 7シリーズのエントリーモデルであるPixel 7aも対応するBluetooth LE Audioが、Pixel Tabletではメニューをオンにできませんでした。
筆者はスマホよりも画面の大きなPixel Tabletが発売される頃に、グーグルがYouTubeやその他の動画配信プラットフォームと連携して、グーグルの空間オーディオに対応するコンテンツを一気に増やしてアピールするものと思っていました。いまのところそのようなアナウンスがないことが残念です。
LE Audioもまた、同じLE Audioに対応するワイヤレスイヤホンなどBluetoothオーディオ機器に組み合わせると、Pixel Tabletの大きな画面で楽しむゲーミングコンテンツのサウンドが遅れることなく聴こえてくるでしょう。Pixel Tabletが対応しないことがもったいない機能です。
OSがAndroid 14にアップデートされるタイミングで、空間オーディオとLE AudioのサポートがPixel Tabletにも追加されるのでしょうか? ぜひそうあって欲しいと願いながら、その日を待ちわびたいと思います。
YouTubeのキャストも簡単。今後の強化に期待!
Androidのプラットフォームを採用するデバイスのエコシステムに11インチのタブレットが加わると、ビデオコンテンツの楽しみ方にバリエーションが増えます。
例えばPixel TabletはChromecast built-inに対応しているため、外出先で視聴していたYouTubeの続きを、帰宅してからタブレットにWi-Fi経由でキャストして、食事の支度をしながらキッチンで続きを見られます。
タブレットのGoogle TVアプリで検索した作品を、リビングのGoogle TV(Android TV)を搭載するテレビにキャストして家族揃って楽しむといった使い方もシンプルです。
グーグル純正のデバイスらしく、多くの人がどんな用途にもすぐに馴染めそうなほど、シンプルなタブレットであることがPixel Tabletの一番の魅力です。
だからこそグーグルの空間オーディオやPixel Buds Proと連携するダイナミックヘッドトラッキングなど、Pixelシリーズの製品だからこそ楽しめる先進エンターテインメントをなるべく早くPixel Tabletでも実現することを、筆者はグーグルに期待したいと思います。