日本はがん大国と言われており、テレビCMでも頻繁にがん保険が紹介されています。そのため、自分がもしもがんに罹ったらという不安を抱え、がん保険の加入を考えたことがある人もいるはずです。一方で、公的な医療制度が充実している日本では、わざわざがん保険に入る必要がないという意見もあります。この記事では、がん保険が本当にいらないのか?、必要なお金をシミュレーションします。
ネットやSNSでは医療保険はいらないと言われていますが
日本は世界の中でもトップクラスに、公的な医療制度が充実しているということをご存知ですか。 日本の医療制度は、国民全員が公的医療保険に加入している国民皆保険制度という仕組みから成り立っており3割の自己費用負担で医療を受けることが可能となっています。
当然、公的医療保険の中にはがんという病気も含まれています。
そのため、ネットやSNSでは民間の医療保険に加入する必要はないという意見が数多くあります。 しかし、公的医療制度はあくまで最低限の保障であり、病気に罹った際に考えうるリスクの全てをカバーしているわけではありません。
大きな病気や怪我をしてしまった場合、収入の減少など医療費以外の部分で経済的に負担が発生することもあるため、ネットやSNSの情報だけを鵜呑みにせず広い視野で医療保険の必要性を考えた方が安心です。
特に、がんは日本人であれば誰でも備えておく必要がある病気ですので、もしもの時を考えながらどれくらいの費用が必要かを考えてください。
実際にかかるお金を調査
がん保険の加入を自分で判断するためには、事前に自身が病気になった際にどれくらいの費用が必要になるかを知ることが重要です。
具体的な費用が明確になれば、もしもの時にどうやって備えるべきかが分かります。
この章では、代表的ながんに罹った際に必要となる医療費用を紹介していきますので参考にしてみてください。
胃がんで入院手術した場合
胃がんを患った場合、症状の重さによって胃切除、胆嚢摘出、腹腔鏡下胃切除、胃全摘と手術内容が異なります。
通常であれば入院日数は10日〜14日で、手術と入院の費用を合わせて20万円〜50万円程が相場です。
乳がんに入院手術した場合
比較的女性が罹りやすい乳がんは症状の違いによって次の通り費用が変動します。
・乳腺腫瘍摘出 入院日数の目安は3日で、手術と入院費合わせて約7万円必要です。
・乳腺悪性腫瘍手術 入院日数の目安は15日で、手術と入院費合わせて約30万円必要です。
肺がんで入院した場合
肺がんの場合、手術内容は症状によって胸腔鏡下肺切除術、胸腔鏡下肺悪性腫瘍切除術の2つに分けられます。 どちらも入院日数の目安は10日で、手術と入院費合わせて約30万円必要です。
高額療養費があるから保険はいらない?
このようにがんは種類によって手術・入院の費用は変わってきますが、いずれも高額になることが多いです。
自分ががんになった時、これだけの費用をすぐに用意出来るか不安になる人もいるかもしれません。
その点に関しては、公的医療保険の中に含まれる高額療養費という制度を使えば手術・入院費の心配は軽減されるので覚えておきましょう。
高額療養費制度とは、年収ごとにある一定の上限額を超えた医療費を抑える制度です。
1ヶ月の医療費上限額は次の通りですので、参考にしてください。
【高額医療費制度1ヶ月の上限額】
〇年収370万円以下
・57,600円
〇年収370万円~770万円以下
・80,100円+(医療費-267,000円)×1%
〇年収770万円~1,160万円
・167,400円+(医療費-558,000円)×1%
がん保険に入る必要がないという意見が多い理由は、この高額療養費制度が公的医療保険に含まれているからです。
しかし、がんに罹った場合に気にしなければいけない費用は医療費だけではありません。 高額療養費制度はあくまでセーフティと考えた上で、がん保険の加入を検討する必要があります。
お仕事休んだら?
がんに罹った場合、医療費は高額療養費制度で最小限に抑えることができますが、その間仕事ができずに収入が減る可能性も考えておく必要があります。
会社員等が加入している健康保険であれば下記の通り傷病者手当てがもらえますので、もし仕事ができずに収入が減った場合の生活を考える参考にしてください。
【傷病手当】 病気や怪我で仕事に付けなかった期間が3日間以上ある場合1年6ヶ月を越えない期間で過去12ヶ月の平均給与の30分の1に相当する額の、3分の2に相当する金額が休業した日数分日割り計算で支給される。
一方で、自営業者などが加入する国民健康保険には、傷病手当はありませんので、注意してください。
また、傷病手当を利用したとしても収入が減少することには変わりありません。 特に、家族がいる人にとっては数ヶ月でも収入が減るということは大きな不安材料になるはずです。
公的医療保険や傷病手当ではカバーしきれない、費用負担や生活の不安をサポートしてくれるものが民間の医療保険になります。
少しでも、がんに罹った後の生活に不安があるのであれば医療保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。
やはり保険は必要です
もしもの時を真剣に考えて判断するのであれば、やはり保険は必要と言えるでしょう。人生は何が起きるかわからないため、早いうちから備えるようにしてください。がんに罹ってから考えては、手遅れになるかもしれません。一方で医療保険への加入はお金が必要になりますので、かけ過ぎないように自身にとって適切な保険に入るようにしましょう。もし、自分自身で判断する自信がない人は、お金と生活のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーへの相談をおすすめします。
この記事を執筆したカウンセラー紹介
小峰一真(こみねかずま)
所属:株式会社マネープランナーズ
大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。