俳優の船越英一郎が主演を務める東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『テイオーの長い休日』(毎週土曜23:40~ 全8話)。同作で吉田ゆかり(戸田菜穂)の夫・吉田康介役を演じる“アキラ100%”こと大橋彰が、自身が演じる役柄やドラマの見どころについて語った。
■芸人と俳優の「切り替え」
切り替えは、とても分かりやすくて、どうも「服を脱ぐ」ということで芸人のスイッチが入るようです。ネタをやるぞとか、 人前に出ていくんだなという場面では「服を脱ぐ」。これで気持ちが入ります。アキラ 100%の名前で、服を着てロケに行かせてもらうようなお仕事もあるんですが、そういうときも、やっぱり「お盆」は 持ったり、蝶ネクタイだけはしてるとか……。
“服を脱ぐ/脱がない”“お盆持つ/持たない”みたいなことで、切り替えているかと思います(笑)。今回の役の、吉田康介さんを演じるときには、もちろん、お盆は持ちませんでした。蝶ネクタイもしていません。洋食のお店なので、撮影現場のお店の中にはお盆はあったかもしれませんが(笑)。僕がそれを手にすることはなく、一生懸命“優しい夫であり父親”というヒューマンな役柄を演じさせていただきました。
■芸人と俳優の二刀流は「たまたま同時進行」
“二刀流”と言ってくださっていますけど、実体はそんなにカッコいいものではないんです。本家・二刀流の 大谷翔平さんなどとはもう比較にならないようなことで……(笑)。そもそもの話をすると、高校のときに演劇部に入りまして、それにすごくハマったんです。当時は第三舞台とか、夢の遊民社とか、キャラメルボックスとか、いわゆる演劇の第三世代といわれる方たちがすごく活躍している時期で。自分も、ああいう世界でご飯食べられたらいいな、といった思いが募って、学校卒業後も就職せずに養成所みたいなところに行ったり、そこで友達になった人たちと一緒に舞台やったりしてました。
一般的なお芝居だけじゃなくて、チャップリンとか、ドリフとかもすごく好きで、コメディをやりたい、という気持ちも抱えていたんです。とはいえ、その気持ちが実って、何か芽が出るようなことは何もなくて、気が付いたら30歳になっていました。30になっても、ろくな仕事もできてない。でも、このまま、好きなことをやめるのは嫌だ。そう思って、その時点でコントをやろうと思ってお笑いへ舵を切ったんです。
■コンビ時代はコント師
コンビの時代にも、“お芝居コント”みたいなことをやっていたんですね。たとえて言ってしまうと、東京03 さんみたいな、設定を作って進行させるヤツ。お芝居好きが、そこでも顔を出していたんでしょうね。実は、裸芸の原点も、その設定コントのネタのひとつにあったんです。喫茶店の店員が裸で登場する設定で……ちょっとシュールな感じでしょ(笑)。
コンビからピンになった後、ネタ作りも試行錯誤で苦しんでいたんですが、あるテレビ番組のオーディションに出ることになりまして。「宴会芸ネタを持ってきてください」という趣旨のオーディションだったのですが、そこで半ば苦しまぎれで思いついたのが、その、コンビ時代の裸ネタでした。“あれを一人用に直して持っていこう” ということで。それがウケて、テレビにもどんどん呼んでもらえるようになって、ついには『R-1 ぐらんぷり』で優勝させてもらって、みなさんに覚えてもらえるようになりました。
ピンになってまだ仕事もなくて、ただライブに出て、アルバイトするという生活をしていたときに、事務所に出入りしている作家さんたちが、自分たちで作っているお芝居に呼んでくれたんです。「ちょっと出てくれないか」と。何本か出させていただいたんですが、その舞台を見て、今度は映画に呼んでくれる監督さんにも出会えて。
自分としても、コントから俳優に戻りたい、なんて思いではなく “芸人も俳優も関係なく、とにかくやれることをやっていこう!” という気持ちで、お芝居の方もやらせてもらった、という感じです。 自分が生きて活動している証しみたいなものでしょうか。二刀流なんてカッコいいものではなくて、とにかくなんでもやらなくちゃ! という状況でこうなったことが、分かっていただけるでしょうか(笑)。
■吉田康介の言葉に感動
すでに発表もされている通り、今回、僕が演じる吉田康介は、ゆかりさんの亡くなった夫であり、3人姉弟の父親です。実際に演じてみてつくづく思ったんですけど、康介さん、ほんとに優しい人なんですよね。
4話の中で、長男の悟くんと語り合うシーンがあって、言葉の端々に、家族への愛と、それから“強さ”があふれているんです。 人間として正しいことは何か、正しいことをするというのはどういうことか、と悟くんに語る言葉が、ほんとうに深くて……。
たとえば、「思いやりが大事なんだ」というセリフがありましてね。思いやりを誰に対しても持つというのは ほんとに難しいことだと思うんです。それだけ相手のことを考えなくちゃいけないわけですから。しかも、 ただやさしいだけではダメ。子どもに対しても、いいよいいよと容認しているばかりでなく、あるときには厳しさも含めて、しっかりと接さなくてはならない。そういうところも、すごくしっかりできていたのが、 この康介だと思うんですね。
僕個人も家に帰ると奥さんと子どもがいるわけですが、気持ちとしては、この康介のような、妻に愛され、子供にも慕われている、そういう男でありたいなと思います。家族からの信頼を得る、というのは大変なことで、康介のようにあんなに「やさしかったんだ」と評価されているのは、ほんとうにすごいなと思います。憧れます。
■ドラマの見どころは?
この『テイオーの長い休日』は、船越さんが元・2サスの帝王を演じるという設定そのものが面白過ぎるんですけど、その上に、この4話のような“家族のあり方” を映し出すホームドラマの要素まで入れてくるのが、 すごいです。
しかも、そこに事件の謎解きの要素があって、熱護が過去の役に扮するというパターンもきちんとあって、自分は家族をもっていなくて、役の上でも父親役はやったことがない熱護が、家族の問題をどう“料理”するのかというポイントも加わって。
さらに、事件の裏にはティーンエイジャーの友情の問題という深いテーマも絡めてあって……このドラマは、“ネタの練り込み方”がハンパないと感じて います。そういうわけで、僕は、次回の第4話に出演するんですけど、自分で第1話から一視聴者としてどっぷり楽しんでいます。視聴者のみなさんも、どっぷり楽しんでいただきたいと思います!
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