日本は国民の全てが公的医療保険に加入する、国民皆保険制度です。そのため、民間の医療保険に加入する必要はないという意見を聞いたことがある人もいるでしょう。しかし、病気や怪我は人生を左右することになりかねないので、自分自身で保険については判断するようにしてください。この記事では、医療保険は本当にいらないのか、病気や怪我になった時に必要なお金をシミュレーションしていきます。
ネットやSNSでは医療保険はいらないと言われていますが
保険について調べていく中で、「民間の医療保険に加入する必要はない」という文言を見たことがある人も多くいるはずです。
そう言われている一番の理由は、日本の公的医療保険制度が充実していることが挙げられます。
患者の医療費の自己負担額を軽減してくれる公的医療制度は国民皆保険で全国民が加入しており、給付内容は手厚いです。
また、保険適用の治療の中で高額な請求を受けてしまった場合、自己負担額を大きく減額できる高額医療費制度も、公的医療保険制度には含まれています。
このようにサポートが充実しているため、わざわざ民間の医療保険に入る必要はないという意見が多くあるのです。
しかし、病気や怪我の種類は多岐にわたりますし、全てを公的医療保険でカバーできる訳ではないということも理解しておく必要があるでしょう。
カバーできない場合、高額な医療費を払えず治療に専念できなかったり生活が困窮してしまうことも十分に考えられます。
大きな病気や怪我は自分の人生を左右する事柄ですので、備えに対しては安易に考えずに、一度しっかりと医療保険が本当に必要でないのかを、金銭的な面からも確認するようにしてください。
実際にかかるお金を調査
国民皆保険に加入している私たちは、病院で健康保険証を提示すれば医療費の自己負担額3割で医療を受けることが可能です。
医療保険への加入を考える場合は、実際の医療費の自己負担額がどれくらい必要になるかを、病気ごとに事前に把握することが1つの目安となります。
この章では、3つの病気で入院した際にかかる医療費を紹介しますので、参考にしてみてください。
盲腸で入院手術した場合
最初に比較的身近な病気である盲腸で手術入院した場合の金額を確認していきましょう。
盲腸は虫垂炎と呼ばれる病気で、手術費用は30万円〜60万円ほど必要となります。 公的医療保険が適用されますので、国民の医療費自己負担は3割となり実費としてかかる費用は大体9万円〜18万円となります。
また、盲腸で手術をした場合は一週間前後入院が必要ですので入院費用が入院日数分必要になります。
入院費用は病院によって一概に言えませんが自己負担額が3割と考えても、5万円ほどかかりますので、盲腸の治療費と入院費はトータルで15万円~20万円程度は必要と考えておいてください。
腰椎椎間板ヘルニアに入院手術した場合
次は整形外科の手術である腰椎椎間板ヘルニアについて、必要な金額を確認していきましょう。
腰椎椎間板ヘルニアでは、手術の方法によって多少変動はありますが手術費用と入院費用合わせて、自己負担額が約40万円かかると言われています。
腰椎椎間板ヘルニアの場合、手術後は1ヶ月前後入院が必要となりますので入院費用が高額になるということが特徴です。
尿管結石で入院した場合
最後に、泌尿器科の手術である尿管結石について確認していきます。
尿管結石で手術を行った場合、治療法によって変動はありますが、入院費用も合わせて自己負担額が約8万円〜12万円かかることが一般的です。
高額療養費があるから保険はいらない?
比較的かかりやすい病気を例に医療費を紹介してきましたが、自己負担額が3割であっても手術・入院がセットになると、10万円を超える医療費負担になることが分かったのではないでしょうか。
10万円の医療費が高額かどうかは人によるかもしれませんが、多くの人にとっては決して安い金額ではないことは確かです。
このようなことを背景に、公的医療制度には医療費が高額にならないように、事前に定められた上限を超えて支払った医療費が払戻される「高額医療費制度」が準備されています。
年収によって、月額の医療費の上限は次のように定められているため、上述した病気にかかる費用も高額医療費制度で減額できますので確認してください。
【高額医療費制度1ヶ月の上限額】
〇年収370万円以下
・57,600円
〇年収370万円~770万円以下
・80,100円+(医療費-267,000円)×1%
〇年収770万円~1,160万円
・167,400円+(医療費-558,000円)×1%
仮に年収770万円以上の人が手術・入院費で1ヶ月100万円かかったとしても、高額医療費制度を利用すれば、自己負担額は僅か171,820円になります。
これだけ、医療費を減額できる制度が公的医療保険に含まれていることを踏まえると、民間の医療保険への加入は必要ないという意見にも納得できるのではないでしょうか。
一方で、より快適な入院生活を送るために個室などを選ぶ際に発生する差額ベッド代や食費などは自己負担になることは抑えておきましょう。
お仕事休んだら?
日本の公的医療制度は充実していることは説明の通り間違いありません。 医療費という観点だけ考えれば安心の制度ですが、実際は入院している間は働くことができないため、収入という面で不安になることも十分考えられます。
収入面で困窮する可能性を背景に、傷病手当という制度を国が下記の通り定めていますので確認して活用するようにしてください。
【傷病手当】
病気や怪我で仕事に付けなかった期間が3日間以上ある場合1年6ヶ月を越えない期間で過去12ヶ月の平均給与の30分の1に相当する額の、3分の2に相当する金額が休業した日数分日割り計算で支給される。
このように、セーフティとしての制度が用意されていることはありがたいことですが、本来受け取っている毎月の給与よりは減額されることは避けられません。
また、傷病手当は会社員等が加入する健康保険加入者のみの制度で自営業者などが加入する国民健康保険では、給付されませんので注意してください。
家庭を持っている人にとっては短い期間であっても、仕事を休業してしまうことで収入が減ると辛いという人も多いはずです。
公的医療保険や傷病手当などは素晴らしい制度であることは間違いありませんが、あくまで最低限のカバーという意味合いが強く、病気や怪我によって金銭的に不安になる部分を全てカバーできる訳ではありません。
一方で民間の医療保険は、公的にはカバーできない部分を手厚くサポートする内容を含んだ保険が沢山あります。
実際に自分が病気や怪我で働けなくなった場合のことを考えると、どのようなサポートが付いている保険が必要か具体的に見えて来るでしょう。
やはり保険は必要です
病気や怪我で働けなくなった場合、金銭面での不安というのは避けては通れません。 しかし、この不安は医療保険に加入して事前に備えておくことで、限りなく小さくできることも事実です。
実際に病気や怪我になってからでは遅いため、できることなら自分に合った医療保険を事前に考えて加入しておくようにしましょう。 ただし、民間の医療保険は種類が多いため闇雲に加入することはおすすめしません。 自分自身でどの保険に加入するべきか判断が付かない場合は、人生とお金のアドバイザーであるFPへの相談をおすすめします。
この記事を執筆したカウンセラー紹介
小峰一真(こみねかずま)
所属:株式会社マネープランナーズ
大手国内証券会社、外資系保険会社を経て、前職では独立系FP事務所に創業から携わっていました。資金計画作成、住宅購入相談、資産運用、保険相談など全般的に得意で、セミナー講師も担当しています。趣味はゴルフと読書、スポーツ観戦(横浜Fマリノス、明治大学ラグビー部を応援!)です。