結成16年以上の中堅・ベテラン漫才コンビが“セカンドチャンス”をつかもうとしのぎを削った『THE SECOND~漫才トーナメント~』。大いに盛り上がった「グランプリファイナル」がフジテレビの華やかなステージで生放送された5月20日を前後して、無名の若手を中心とする芸人たちが、池袋の地下劇場で汗をかいていた。
それは、次世代芸人のお笑い賞レース『ツギクル芸人グランプリ2023』の予選会。“ファーストチャンス”に挑む者たちがストイックなバトルを繰り広げていたが、その中には『THE SECOND』のファイナルに惜しくも届かなかった芸人の姿もあった――。
ほとんどを無名の出場者が占める『ツギクル芸人グランプリ』。『THE SECOND』では、自身のバックボーンをネタに組み込んで客席を温める姿が随所で見られたが、そうした技は使えない。
また、ネタ時間は3分に限られるため、客いじりをする余裕もない。その上、MCがおらずアフタートークがないため、審査を務める観客は芸人たちの人となりを知ることもなく、ショーケースのように次々とネタだけを見ていくことになる。暗幕が張られた真っ黒な背景のステージが、この大会のストイックさを増幅させていた。
地上波のプライムタイムの番組レギュラーを持っていない、日本音楽事業者協会加盟プロダクションに所属する各社推薦の芸人たちが参加し、漫才、コント、ピン芸、性別を問わない、まさに異種格闘技戦。しゃべくりで勝負する者、激しいアクションで勝負する者、小道具を活用する者、フリップやモニターを生かす者などなど、ジャンルは複雑多岐にわたり、これらを比較して面白いと思う芸人に票を投じるのは、実に悩ましい。
芸歴が短く、空気のつかみ方にまだ慣れていないのか、観客を置き去りにして独自のキャラで暴走気味な芸人がいるかと思えば、セリフを噛み気味でも勢いで成立させる若手らしい馬力を見せる芸人もおり、そんなバリエーションも『ツギクル芸人グランプリ』の醍醐味のひとつだ。
一方、非常に高い技術や身体能力を披露するネタや、完成されたストーリーが構築されたネタは、完璧すぎて感心してしまったのか、逆に笑いが起きない状況に陥ることも。また、ものすごいハイテンションで会場の笑いをかっさらった直後に、ローテンションのピン芸が登場するというネタ順の運命に直面する姿もあったが、これが投票にどう影響したのか。
最近はプロダクションの芸人養成所に女性が増えているという話を聞くが、それが反映されたのか、男女混合コンビの存在が目立った。コンビによって、女性側がボケ、ツッコミ、キャラ強めといった形で役割もバラけていて、女性の層の厚さを裏付けている。
冒頭で『THE SECOND』と対照的な大会であることを紹介したが、この『ツギクル芸人グランプリ』と『THE SECOND』の両方に参加する唯一の芸人が、結成22年目のベテラン・三日月マンハッタンだ。優勝候補と目されたテンダラーにわずか7点差で敗れ、全国ネットのゴールデンタイムに映ることができなかった彼らは、「グランプリファイナル」放送の3日後、この『ツギクル芸人グランプリ』予選会のステージに立っていた。
お笑い好きの観客たちの目に、若手たちに混じって、がむしゃらにネタを披露する彼らは、どう映ったのか。このように、様々な注目ポイントが散りばめられている大会だけに、一体誰が決勝の舞台に勝ち進むのか、楽しみで仕方ない。
■『ツギクル芸人グランプリ2023』予選会出場芸人
【1日目】
駆け抜けて軽トラ(松竹芸能)、観音日和(ホリプロコム)、群青団地(太田プロダクション)、こたけ正義感(ワタナベエンターテインメント)、小仲くん(ソニー・ミュージックアーティスツ)、スピーディーハンター(ソニー・ミュージックアーティスツ)、ダニエルズ(タイタン)、ダンシング☆谷村(タイタン)、寺田寛明(マセキ芸能社)、ナイチンゲールダンス(吉本興業ホールディングス)、ねこじゃらし(ビクターミュージックアーツ)、バローズ(プロダクション人力舎)、ポテトカレッジ(ライジングプロ・ホールディングス)、本多スイミングスクール(グレープカンパニー)、ぽんぽこ(サンミュージックプロダクション)、孫ダッシュ(グレープカンパニー)、マッハスピード豪速球(ライジングプロ・ホールディングス)
【2日目】
カカロニ(グレープカンパニー)、きつね日和(ビクターミュージックアーツ)、グランド母ちゃん(ライジングプロ・ホールディングス)、狛犬(吉本興業ホールディングス)、さすらいラビー(太田プロダクション)、さんだる(ホリプロコム)、さんぽ(ビクターミュージックアーツ)、Gパンパンダ(ワタナベエンターテインメント)、シティホテル3号室(タイタン)、スタミナパン(ソニー・ミュージックアーティスツ)、スパイシーガーリック(プロダクション人力舎)、チュランペット(ワタナベエンターテインメント)、徳原旅行(マセキ芸能社)、友田オレ(GATE)、ブリキカラス(松竹芸能)、マタンゴ(マセキ芸能社)、ママタルト(サンミュージックプロダクション)
【3日目】
青色1号(太田プロダクション)、アナログタロウ(トップ・カラー)、コンピューター宇宙(太田プロダクション)、10億円(吉本興業ホールディングス)、シロハタ(ビクターミュージックアーツ)、戦慄のピーカブー(ホリプロコム)、タイト(プライム)、TCクラクション(グレープカンパニー)、人間横丁(プロダクション人力舎)、パンプキンポテトフライ(ホリプロコム)、ひつじねいり(マセキ芸能社)、ファイヤーサンダー(ワタナベエンターテインメント)、まじん(ソニー・ミュージックアーティスツ)、まんじゅう大帝国(タイタン)、三日月マンハッタン(松竹芸能)、森本サイダー(松竹芸能)、4000年に一度咲く金指(ライジングプロ・ホールディングス)
【4日目】
いろはラムネ(プロダクション人力舎)、インテイク(吉本興業ホールディングス)、エンジェリック乱世(トップ・カラー)、オーパスツー(松竹芸能)、橘井と小池(ホリプロコム)
劇的トライアングル(ビクターミュージックアーツ)、センチネル(太田プロダクション)、ゼンモンキー(ワタナベエンターテインメント)、村民代表南川(サンミュージックプロダクション)、ツンツクツン万博(グレープカンパニー)、ニモテン(サンミュージックプロダクション)、ネギゴリラ(プロダクション人力舎)、春とヒコーキ(タイタン)、ぴろしき(ライジングプロ・ホールディングス)、フランツ(マセキ芸能社)、宮武ぜんた(ソニー・ミュージックアーティスツ)、ラタタッタ(吉本興業ホールディングス)、リンドバーグ(GATE)