俳優の船越英一郎が主演を務める東海テレビ・フジテレビ系ドラマ『テイオーの長い休日』(毎週土曜23:40~ 全8話)。船越の七変化もあいまって、見た目だけでもいろいろな楽しみ方ができることも同作の魅力の一つ。その裏には衣装担当の緻密な作戦があるという。ドラマの世界観を作り、それぞれのキャラを際立たせる衣装へのこだわりを、担当スタイリスト・キクチハナカ氏が明かした。
■原点は船越の過去作品
熱護の変身シーンに関しては、視聴者の方が『テイオー』を観たときに“あ、船越さんが出ていたあの作品だ!”と思い起こしてもらえるように作っています。オリジナル要素も加えた上で、かなり忠実に再現している衣装もあります。たとえば、第1話の火災調査官は、船越さんが2003年から13年間にわたって演じられた『火災調査官・紅蓮次郎』(テレビ朝日系)がモデルです。熱護が、火災調査官・遠藤萌としてゆかりの洋食店に乗り込むときのコスチュームなのですが、第1話ということもあり、船越さんとも相談の上で、紅蓮次郎を忠実に再現することを意識しました。
第2話で熱護が変身する闇の外科医・ジャック小笠原は、2004年から放送された『外科医・鳩村周五郎』(フジテレビ系)から、脚本の入江さんがイメージを膨らませて生まれたキャラクターです。鳩村周五郎では白シャツを着られていたと思いますが、今回は“闇の外科医”ということで黒シャツにアレンジしました。船越さんのお芝居も「闇」感が足されていて(笑)、衣装でキャラ作りをフォローできていたらうれしいです。
明日放送の第3話ではプロゴルファーに扮しますが、このキャラクターは実は船越さんの過去作品には似たものはないんです。むしろ熱護だからこそのキャラだろうということで、船越さんと相談をして、襟の部分をちょっとカッコよくしたり、形にこだわりました。変身シーンとのギャップを作るために、練習シーンは別の衣装にしたりと、見せ場をどう盛り上げるかも、船越さんと一緒に考えています。
■キーポイントは「熱護らしさ」
スタイリングに関しては私の発想より、“熱護大五郎改め、船越英一郎という大物役者さんご自身”が着ている服や、スタイリングをベースに、形にさせていただきました。熱護の部屋着である薄い生地のガウンも、船越さんご自身、ご自宅でシルクのガウンを着てらっしゃるということで、採用されました。まさに、熱護を通して「船越英一郎さんという存在そのもの」が、今回のドラマに出ているという印象です。すごい貴重ですよね(笑)。
そんな中でも大切にしているのは「熱護らしさ」です。熱護という“こだわりの俳優”が居て、その熱護が自分で納得のいかないコスチュームは決して着ないだろうという前提でスタイリングを考えています。たとえば、熱護はパステルカラーの服にOKを出すことなど絶対にないだろう、ということで、熱護の私服は黒をはじめ、シックな、はっきりとした色ばかりになってます。「熱護らしさ」については、とにかくカッコよく作りたかったので、そういう意味ではうまく行ったかなと思います!
■スタイリングのポイントは着たときの「布地の動き」
スタイリングで意識したのは、画面に登場したときに、風などがなくてもふわっとなびく感じが出るようにした、という点です。ガウンもシルク素材なら、風がない部屋の中でも熱護が動いたときに、服の動きが軽やかに映りますからね。熱護大五郎に限らないのですが、個人的に“動きが出る衣装”が好きでして……。熱護の外出着ではトレンチコートも取り入れました。船越さんからアイデアをいただいたのですが、すごく動きが出るので、登場シーンで着ていただき熱護のカッコよさを強調できたと思っています
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