マネ―スクエアのチーフエコノミスト西田明弘氏が、投資についてお話しします。今回は、米国の金融政策について解説していただきます。
FOMCは「据え置き」を決定
米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は6月13-14日にFOMC(連邦公開市場委員会)を開催して、当面の金融政策を決定(結果公表は日本時間15日午前3時)。昨年3月から10回連続で利上げが決定されましたが、今回は政策変更はなし。政策金利であるFFレート目標水準は5.00~5.25%に据え置かれました。
金融市場は利上げの打ち止め、あるいは打ち止め接近を予想
「据え置き」は、金融市場参加者の大方の予想通りの結果でした。次回7月以降については見方がやや分かれています。今後も「据え置き」が続くという見方。つまり、前回5月の利上げをもって利上げサイクルが終了したという見方です。次回7月で0.25%の利上げがあるとの見方も相応にありますが、その場合でもその後は「据え置き」です。そして、いずれにせよ、早ければ今年末までに、遅くとも来年早々に利下げが始まると予想されているようです。
FOMCのスタンスは利上げ方向に傾斜
もっとも、FRBはもっと利上げを続ける必要があるかもしれないと考えているようです。6月14日に公表されたFOMCの声明文には、「今回据え置くことは、追加的な情報やそれらの金融政策への影響を精査する(時間的)余裕を与えてくれる」とありました。一方で、前回同様に「適切となるかもしれない追加的な引き締めの度合いを見極めるために、累積的な利上げの効果や政策効果のタイムラグを考慮する」との一文が残されました。政策スタンスは引き続き利上げ方向に傾いているということでしょう。
金融市場が注目する「ドット・プロット」
FOMCが追加利上げに傾いていることをより明確に示しているのが、「ドット・プロット」です。これはFOMCに参加する18人(定数は19)の向こう3年の年末の政策金利予想を1人1つの点(ドット)で表したものです。各個人の見解に過ぎませんが、金融市場はその中央値をFOMCのコンセンサスと受け取る傾向があります。「ドット・プロット」は3カ月ごと、つまりFOMC2回に1回の頻度で公表される経済・金融政策見通しの一部です。
「ドット・プロット」は年内あと2回の利上げを示唆
今回の「ドット・プロット(中央値)」では、23年末の政策金利予想が5.625%(5.50~5.75%の中心)です。現在の水準より0.50%高く、0.25%換算であと2回の利上げが示唆された格好です。前回3月時点では23年末の予想は5.125%で、まさに現在の水準と同じでした。興味深いのは、今回のFOMC参加者18人のうち、23年末の予想を5.125%としたのはたった2人。16人が追加利上げを予想し、そのうち12人が0.25%換算で2回以上の利上げを予想しました。年末までに0.25%換算で4回、つまり残り全てのFOMCでの利上げを予想する参加者も1人いました。
24-25年は利下げ予想ながらバラツキは大きい
「ドット・プロット(中央値)」で、24年末は4.625%予想、25年末は3.375%予想。24年中に0.25%換算で4回、25年中に5回の利下げが予想されています。ただ、いずれの年も予想に相当なバラツキがあり、FOMC参加者の見方が大きく割れていることを示しています。
パウエル議長の記者会見は「タカ派」的
FOMCの結果公表後の記者会見で、パウエル議長は追加利上げを意識させる、いわゆる「タカ派」的な発言に終始しました。金融市場の利上げ打ち止め観測をけん制する意図があったのでしょう。議長は「インフレのリスクは依然として上向き」、「過去6カ月、コアインフレ(食料やエネルギーを除く物価の伸び率)はあまり鈍化していない」と指摘しました。
議長はさらに、「ほとんどの参加者がいくらかの追加利上げを予想(上述の「ドット・プロットによれば、18人中16人」)、「誰1人として年内の利下げは予想していないし、私自身も全く適切だとは思わない」と述べ、「利下げは2年ほど先ではないか」と付け加えました。
今後の経済情勢・金融市場動向で見通しは大きく変わる!
もっとも、パウエル議長は次回7月のFOMCですら「ライブ」だと指摘。これは会合当日の議論次第で、結果がどうなるか分からないという意味です。これから発表される経済データや金融市場の動向次第で金融政策の行方は大きく変わる可能性があります。今後、FRBがどの方向に向かっていくのか、要注目でしょう。