草刈りの前に! 播種や植え付け時期の前後に行う雑草対策
雑草対策といえば「草刈り」が思い浮かびますが、畑の雑草対策では雑草が生えてくる前からできることがあります。野菜の出芽期・幼苗期は環境の変化に最も弱い時期なので、播種(はしゅ)や苗の植え付けの際に、雑草対策をするのが効果的です。春に種をまく野菜であれば春(温暖地なら3〜5月あたり)、秋に種をまく野菜であれば秋(温暖地なら9〜11月あたり)に行います。
作物を雑草から守るためのマルチング
播種や植え付け前の防草なら、マルチングが一般的。マルチングとは、畑の土が露出しないように稲わらやビニールシート、ポリエチレンフィルムなどで畝を覆うことです。略してマルチと呼び、覆うもの自体もマルチと呼んでいます。フィルムの場合は畝にフィルムを張り、苗を植える部分に穴を開けて、作物まわりの雑草を防ぎます。なかでも、黒色フィルムは防草効果が高いのでよく利用されています。
マルチがない部分は除草する
マルチングされていない畝間などには、雑草が生えてきます。雑草が作物の生育を妨げそうになってきたところで、手で取ったり表土を攪拌(かくはん)したりして除草するのがよいでしょう。
雑草も発芽から定着までの段階は環境の変動に弱いので、浅く耕すことで根や芽を切断し埋没させることは可能です。しかし、耕した場所にはまた新たな雑草が発芽するので、作物がある程度成長するまでこれを続けることになります。
畑での草刈り、いつやるのが効率的?
梅雨前ごろになると、作物の成長と共に雑草の勢いも増し、残念ながら除草が間に合わない場所もでてきます。そういった場合は、草刈りで対応することになりますが、時間も体力も要するきつい作業です。どのタイミングで草刈りをすれば、より効率が良いのでしょうか。
一言で「雑草」といっても、1種類の草だけが畑に生えるわけではありません。それぞれの雑草には違いがあり、特徴に応じて対策をするのが有効です。畑に生えている雑草の種類を見極めて得策を考えましょう。
種で増える雑草の場合
種で増えるタイプの雑草は、その花が咲く時期までに刈るのが理想的ですが、全ての雑草の花が一斉に咲くわけではありません。それぞれの雑草に対応するのは、畑が広ければ広いほど厳しいのが現実です。しかし、大型化する雑草にだけでも対応すれば楽になります。そこで大型化するいくつかの種類の雑草にフォーカスして対策を紹介します。
雑草が大きくなるのは初夏から秋にかけて。温暖地であれば5〜10月あたりまでです。休耕地など、作物がなく、除草も追いつかず、年に数回しか草刈りをできない場所であれば、まずは花期が集中する時期までに草刈りをするとよいでしょう。
下の表は、温暖地でよく見かけ、かつ1メートル以上の大きさになる雑草の花期の一覧です。やはり夏が圧倒的に多くなります。
畑では雑草が大型化するまで放置することはできるだけ避けたいので、頻繁に草刈りをすることになります。
ただし、炎天下で長時間、草刈りなどの重労働をするのは危険です。気温が30度を超えるような時に草刈りはしない、朝夕の涼しい時間に草刈りをする、などの対策を取りましょう。
地下茎で増えるタイプの雑草の場合
スギナのような地下茎を伸ばして増える多年生の雑草は、地下茎を根こそぎ取ってしまうのがよいのですが、大変な作業なので現実的ではありません。生えてきたら、すぐに刈って光合成をさせなければよいのですが、広がる勢いがとても早く、それも困難です。除草剤や防草シートを使う方法もありますので、必要なら検討しましょう。
地下茎雑草については、その再生の仕組みを知って弱らせていくという方法もあります。こちらの記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。
雨の後、草が濡れていない時に刈る
作物と同じように、雨の後は雑草も著しく成長します。つまり、草刈りをした後に雨が降ってしまうと、その後の伸びを促すことにもなってしまうのです。そのため、雨の後に草を刈るのがよいでしょう。ただ、雨上がりの直後は畑がぬかるんでいるうえ、濡れた草を移動させるのは重労働なので、草が乾いた頃に作業することをおすすめします。
草刈りをする場所によっては時期を選ぶことも
雑草は害虫を呼び寄せてしまうことがあります。場合によっては草刈りの影響で、雑草についていた害虫が作物の方に移動してしまうこともあるので、注意が必要です。
例えば、水田畦畔(けいはん)のイネ科雑草についているカメムシが、草刈りによって水田のイネについてしまう例が報告されています。そのため畦畔ではイネの出穂の3週間前と出穂期、さらに出穂3週間後の草刈りが推奨されています。
刈り方次第では草刈りを楽に
成長点に注意して刈り方を工夫
雑草は短く刈ってしまいたいところですが、雑草の種類によっては刈る長さを工夫すれば、後の草刈りが楽になります。植物には細胞の分裂が盛んな「成長点」があるので、それに注目して刈り方を工夫するとよいでしょう。
アカザやシロザなどの広葉雑草は成長点が茎の先端にありますが、メヒシバやエノコログサなどのイネ科雑草の成長点は地面に近いところにあり、地際で刈っても成長点が残り再生します。そのため、広葉雑草が成長点を失い枯れたところに繁殖力を増したイネ科雑草が置き換わってしまうのです。さらに、イネ科雑草は成長が早いので、草刈りを何度も行うことになりかねません。
そこで、広葉雑草をあえて残し、イネ科雑草の繁殖を抑える「高刈り」という方法も検討してみましょう。これは地際から10センチ程度の高さで雑草を刈る方法です。広葉雑草は成長点を摘まれると横に広がって成長していくので、イネ科雑草の抑制にもつながります。
刈った草は有効活用できる!
刈ったり抜いたりした草で、種子が付いていないものや、作物の生育を邪魔する心配がないものは、有効活用できます。
「草マルチ」として利用する
刈った草を畝の上を覆うようにして敷き詰め、作物を植えるスペースを作り、マルチのように使えます。または、作物のまわりに刈った草を敷き詰めたり、畝間に敷き詰めたりして利用できます。
草マルチのメリットは、ビニールやポリエチレンなどのマルチよりも通気性が良く、土壌の水分を保ってくれるということ。さらに、土壌の微生物が草を分解していくので、マルチ材のゴミが出ることもなく、土づくりにもプラスの効果があります。なかでも、イネ科雑草の葉が草マルチにおすすめです。
一方、草マルチには適していない雑草もあります。広葉雑草のハコベやツユクサなどはあっという間に分解されて土になってしまうので、すぐにマルチの役目を終えてしまいます。また、メヒシバやシロツメクサなど地面をはうように茎が伸びる匍匐(ほふく)雑草は、梅雨など雨の多いシーズンには茎から根を出して再生してしまうので、時期によっては草マルチとして使用しない方がいいでしょう。
作物に影響しない雑草はそのままでもOK!?
作物の生育に影響しない雑草であれば、除草や草刈りをする必要がないケースもあります。例えば、春先に麦の畑に生えるホトケノザなどの雑草は、地面を覆ってくれるので、そこに大型化する雑草が繁殖しないというメリットが生まれます。
そのほか、真夏の畑でよく見かけるスベリヒユなども、土の乾燥を防ぐのに一役買ってくれます。さらに、雑草の方がボロボロになるほど虫に食われて、作物がさほど虫に食われないで済むという場合もあります。そして雑草の多様性は、土の中の虫や微生物の多様性も促すので、土づくりに貢献しているとも言えそうです。
刈った後の処分にも注意
刈った雑草をそのまま処分する場合には注意が必要です。種子が付いている雑草は、種が畑に残らないようにできる限り集めて、畑ではない場所で乾燥させて量を減らし、燃やせるゴミとして処分するのがよいでしょう。
草刈りの頻度を減らす方法はいろいろ
休耕地などの雑草管理には、ヘアリーベッチやナギナタガヤなどの緑肥作物を植えて地表を覆い、雑草の出芽や育成を抑えるという方法もあります。そのほか、夏場の畝に透明マルチを2〜3週間張っておけば、太陽光により土壌が消毒され、雑草の発生を抑えることもできます。重労働である草刈りを減らす対策として、ご自身の畑に一番良さそうな方法を試してみてください!