バーク堆肥とは? 素材や作り方

樹木の皮(バーク)を発酵させ、堆肥にしたものが「バーク堆肥」です。木材チップ工場や製材工場から排出される樹皮は産業廃棄物として捨てられてきましたが、これらを堆肥化する取り組みが1960年代後半にスタートし、農業用途から公共事業に関わる緑化用途、そして園芸用途にも活用の場面が広がっていきました。

腐葉土や家畜ふんなど他の堆肥と比べて繊維質がとても多いのが特徴で、家庭菜園では主に土をフカフカにしたり連作障害を防いだりする土壌改良材としてバーク堆肥が用いられています。また、ガーデニングの雑草対策に使うマルチング材としても活躍しています。

市販されているバーク堆肥の素材は広葉樹や針葉樹、皮や木くず(粉砕物)などさまざま。土壌改良材としては広葉樹のバーク堆肥がより良質とされています。
バーク堆肥工場では、粉砕した樹皮をふるいにかけて水分も調整し、油かすや牛ふん、尿素などと混ぜて半年〜1年ほど発酵させ、生産を行なっています。

紙パルプ工場や木材の生産工場などで大量に発生する樹皮を再活用できる農業用資材として、SDGsの観点からも注目されています。

バーク堆肥の役割や効果

バーク堆肥を上手に使うと、土壌へのさまざまな効果が期待できます。

保水性や保肥性の向上

繊維質が多いバーク堆肥を使うと、通気性のいいフカフカの土になることはもちろん、バーク堆肥に含まれる「フミン酸」という成分が栄養分の吸収を助け、保水性や保肥性も向上します。排水性がありながら水持ちや肥料の効きがいい、理想の土の状態に近づけることができます。

土壌改善の効果が継続しやすい

バーク堆肥には植物の細胞壁を構成する「リグニン」と呼ばれる有機物が多く含まれています。リグニンは分解されにくい有機物のため、バーク堆肥は他の土壌改良材よりも分解されにくいという特長をもっています。そのため、土に混ぜ込むと土壌改良効果が長時間持続します。

微生物の多様化

リグニンをはじめとする難分解性有機物を多く含むため、完熟するまでに多くの種類の微生物の影響を受けます。それが、培養土内の微生物の多様化に大きな役割を果たしています。微生物が多様化することで、特定の病原菌の繁殖を防いで病気になりにくい安定した土壌につながります。

マルチングによる乾燥防止

バーク堆肥はマルチング材としても活躍します。庭木のまわりに5センチほど敷き詰めることで、地面の急激な乾燥を抑えてくれます。マルチングをする際のポイントは、株元から2〜3センチの隙間(すきま)をつくること。株元いっぱいまでマルチングすると蒸れてしまい、病害虫のリスクにつながります。

与えすぎはデメリットが生じる

微生物が行うバーク堆肥の分解には、土壌の窒素が使われます。そのため、バーク堆肥を大量に与えすぎると植物が消費するはずの窒素を微生物が食べ尽くしてしまう「窒素飢餓」が起こります。窒素飢餓が起きると植物がうまく育たなくなりますが、窒素肥料を与えることで予防が可能です。

バーク堆肥と他の堆肥の違い

「堆肥」と呼ばれるものには「牛ふん堆肥」や「腐葉土」がなじみがあると思います。それぞれの効果や役割を知っておくことで、より適切な使い方を選べます。

バーク堆肥と牛ふん堆肥の違い

牛ふん堆肥

バーク堆肥は繊維質が豊富で土壌改良効果が非常に高く、微生物の多様化にも貢献する一方で、植物の成長に必要な「窒素」「リン酸」「カリウム」などの肥料成分はほとんど含まれていません。牛ふん堆肥は有機肥料の中でもポピュラーな存在で、肥料成分がバランスよく含まれているだけでなく、繊維質も含まれるので土壌改良効果も期待できます。生産時に牛ふんと混ぜて発酵させるバーク堆肥も販売されています。

バーク堆肥と腐葉土の違い

腐葉土

腐葉土はクヌギやナラ、ケヤキなどの広葉樹の落ち葉が堆積(たいせき)・発酵したものです。古くから農業で活用されてきました。腐葉土とバーク堆肥はよく似ていますが、腐葉土は窒素分、バーク堆肥は炭素分の比率が多いのが特徴です。また、腐葉土はバーク堆肥よりやや粗いため、通気性や水はけは腐葉土のほうが若干優れています。その一方で腐葉土は均一に混ざりにくいため、保水性や保肥性はバーク堆肥のほうが優れています。どちらも肥料分は少ないので、別の肥料を加えてあげる必要があります。

バーク堆肥の基本的な使い方と注意点

家庭菜園やガーデニングで活躍するバーク堆肥の上手な使い方と注意点をピンポイントで解説していきます。

土壌改良材として土に混ぜる

バーク堆肥は、土壌改良材としての活用がおすすめです。土をフカフカにしてくれるだけでなく、水持ちや肥料持ちが良くなり、微生物の多様化によって連作障害なども防いでくれます。量の目安は、土10リットルに対して20%ほど。必ず土を掘り返して、よく混ぜることが重要です。バーク堆肥は乾燥すると水をはじいてしまうため、水切れに注意してください。また、窒素飢餓を予防するために窒素肥料を一緒に混ぜるといいでしょう。

マルチングとして株元に敷く

植物の株元にマルチングすることで、急激な乾燥防止をはじめ、寒さなど温度変化への対策や泥はね予防としても活躍してくれます。バーク堆肥はバラやブルーベリー栽培ととても相性がいいため、これらを育てる際にはぜひ活用してください。

質のよいバーク堆肥を選ぶコツ

「特殊肥料」カテゴリーのバーク堆肥には、品質や生産時の明確な基準が設けられていません。さまざまなものが販売されていますので、選ぶ際には下記の五つのコツを意識しましょう。

発酵し黒色に近いものを選ぶ

発酵が進むと、バーク堆肥は黒に近い色になっていきます。樹皮のような明るい茶色のバーク堆肥は発酵が十分に進んでいない可能性がありますので、黒色に近いものがおすすめです。

細かな繊維状になっているものを選ぶ

細かな繊維状になっているバーク堆肥のほうが土に混ざりやすく、扱いやすいです。繊維状になっておらず、大きな破片がたくさん含まれているものは発酵不足の場合があります。

刺激臭がしないものを選ぶ

バーク堆肥に限らず、堆肥類は発酵が十分に進むと刺激臭が収まっていく傾向があります。樹皮に混ぜ込むアンモニアなどのツンとしたにおいがないかを確認して選ぶと安心です。

カビが生えていないものを選ぶ

発酵が十分に進んでいないバーク堆肥にはカビが発生することがあります。植物の成長にプラスに働くカビとマイナスになるカビの両方がありますが、素人には違いがわからないため避けるほうが無難です。

CEC値が一定以上のものを選ぶ

バーク堆肥の品質には、生産者によってバラつきがあります。パッケージに「CEC」という陽イオン交換容量の値が書いてある場合には、十分な発酵の目安である「70meq/100グラム」以上であることを確認してください。

筆者おすすめのバーク堆肥5選

日高見牧場/バーク堆肥

amazonで気軽に購入できるバーク堆肥。宮城県で良質な肉牛を生産する日高見牧場が製造しています。

株式会社瀬戸ヶ原花苑/菌の黒汁配合バーク堆肥

土壌中の善玉菌を増やす効果の高い「菌の黒汁」を配合しており、善玉菌の力で連作障害を予防してくれます。

自然応用科学株式会社/栽培名人 バーク堆肥

土のリサイクル材や連作障害の軽減材などで幅広いラインナップを持つ自然応用科学のバーク堆肥です。

アースコンシャス株式会社/無添加バーク堆肥

発酵促進剤等を使っていないバーク堆肥。動物性原料・食品残渣(ざんさ)・汚泥等が一切入っておらず安心です。

株式会社サカタのタネ/木炭入り完熟堆肥

滋賀・京都の広葉樹の樹皮と木質チップを1年半以上発酵させた堆肥に、良質な木炭が入っています。

バーク堆肥を無料でもらえる施設がある?

バーク堆肥の多くは、不要な樹皮や剪定(せんてい)枝、木くずなど、植物性の廃棄物が資源として利用され、生産されています。なかには生産したバーク堆肥を無料配布している企業や自治体があります。「バーク堆肥 無料」などのキーワード検索や、都道府県などが発信する「堆肥供給者リスト」で見つけることができるので、配布場所が近くで見つかったらぜひ活用してみてください。

バーク堆肥を活用して、元気でフカフカの土づくりを!

SDGsの視点からも有望視されているバーク堆肥。メリットとデメリットをよく理解することで、元気でフカフカな土づくりの助けになります。

家庭菜園のプランター栽培でも、一度使った用土に混ぜればフカフカが復活するだけでなく、連作障害対策にも有効です。ぜひ本記事を参考にしながら、園芸ライフにバーク堆肥を活用してみてください。