パワーカップルとは、近年特に注目されている言葉で、金銭面において、大きな力を持っているカップルを指す言葉です。

本記事ではパワーカップルの詳しい定義や具体的な年収と割合、注目される理由、メリット・デメリットを紹介。パワーカップルになりやすい職業もまとめました。

  • パワーカップルとは

    「パワーカップル」の意味や割合、メリット・デメリットなどについて解説します

パワーカップルの定義とは

パワーカップルとは、夫と妻のどちらも高収入を得ている共働き夫婦のことを指す言葉で、経済的に余裕がある世帯です。

より詳しい意味を見ていきましょう。

世帯年収がいくら以上ならパワーカップルの定義に当てはまる?

パワーカップルは、元々は『夫婦格差社会 二極化する結婚のかたち』(橘木俊詔・迫田さやか著、中公新書、2013年)で取り上げられたことがきっかけで広がった言葉だとされています。

現在、各機関やメディアは、それぞれ独自にパワーカップルについての定義や指標を決めています。世帯年収にフォーカスしているものや、夫と妻の年収の配分まで指定しているもの、年収に加えて金融資産の量も加味するものなどさまざまです。

ただし、夫も妻も高収入を得ている、という点は共通したポイントであり、例えば年収2,000万円の夫と専業主婦の妻の夫婦は、世帯年収は高くてもパワーカップルとは言いません。

夫婦がともに年収700万円以上と定義するなら、割合は0.6~2.1%

前述のように、パワーカップルの世帯年収についての定義は諸説あります。

ここでは、ニッセイ基礎研究所が2017年8月に発表した「基礎研レター」の中での定義「夫婦ともに年収700万円以上の世帯」をパワーカップルの基準として、割合を考えていきます。

同じくニッセイ基礎研究所が2022年1月に発表した「基礎研レポート」によると、夫と妻がそれぞれ年収700万円以上稼いでいるとされる世帯は、2020年時点で全国に34万世帯あり、総世帯に占める割合は0.62%、共働き世帯に占める割合は2.1%で、世帯数は近年増加傾向にあるとのことです。

パーセンテージで見るととても少ないように見えますが、世帯数にすると、ある程度の数がいることが分かります。

パワーカップルが注目される理由は消費意欲の高さ

近年、パワーカップルが注目される最大の理由は、その消費意欲の高さにあります。

2021年の総務省統計局「家計調査 家計収支編」によると、共働き世帯の平均年収は820万円程度です。

パワーカップルの定義を、前述のように夫と妻がそれぞれ年収700万円以上とするならば、世帯年収は1,400万円以上となり、上記平均を大きく上回ります。

収入が多い分、自由に使えるお金が多く、一般的な家庭よりも高い消費意欲を持つと考えられます。

パワーカップルのメリット

  • パワーカップルのメリット

この章では、パワーカップルが具体的にはどのような恩恵を享受できるのかを解説します。

所得税を抑えられ手取り金額が多い

世帯収入の割に、所得税が少な目で、結果的に手取り金額が高いことは、パワーカップルが持つメリットの一つです。

手取り額が多くなる理由は、所得税の税率が年収に応じて高くなる「累進課税方式」で決められているためです。累進課税方式では、1人あたりの年収が900万円を超えると、所得税率が23%から33%に上がります。

例えば、下記の2組の夫婦がいた場合、世帯年収は変わらないはずなのに、1のケースの方が、所得税が多く手取りが少なくなってしまいます。

  1. 夫:年収1,400万、妻:0円
  2. 夫:年収700万、妻:700万

1人で多く稼ぐよりも、2人でそれぞれ稼ぐ方が結果的にお得なのです。

節税対策を利用できる

ふるさと納税や住宅ローン控除、iDeCoなどの節税対策を活用できることも、パワーカップルのメリットです。

これらは税金の控除を受けられるという恩恵がありますが、専業主婦(専業主夫)などで税金が掛かっていなければ、控除も受けられないため、効果的に利用できません。

節税対策を積極的に利用すると、効率的に資産形成が可能ということも、メリットの一つとして挙げられます。

時短商品やサービスを利用しやすい

世帯収入に余裕のあるパワーカップルは、便利な時短商品やサービスを利用しやすいこともメリットの一つです。

例えばロボット掃除機や、電気圧力鍋などの調理家電、食器洗い乾燥機などは、高価な家電です。またカット野菜のような下処理済み食材、ミールキットなどは、材料を買うよりも割高になります。

収入に余裕がないと、そのような便利な商品を購入することをためらいがちですが、パワーカップルの場合は比較的余裕があるため、購入のハードルが下がるでしょう。

最近では、家事代行サービスや、専門的な掃除を依頼できるハウスクリーニングサービスなどもポピュラーになってきました。

このような時短商品やサービスを上手に利用すれば、時間や心のゆとりを持つことができ、豊かに生きるための一助とすることができます。

パワーカップルのデメリット

  • パワーカップルのデメリット

金銭的に裕福で、夫婦どちらも社会的に活躍するカップルに生ずるデメリットとは、一体何なのでしょうか。この章では、パワーカップルに発生しうるデメリットについて解説します。

家族一緒に過ごす時間が少ない

パワーカップルは、夫婦がともに収入が高いということで、忙しい仕事に就いているパターンが多い傾向にあります。そのため、家族で一緒に過ごす時間が少ないということは、デメリットと言えるでしょう。

多忙な二人だからこそ、意識的にコミュニケーションを取っていく必要があります。

家計の管理があいまいになりがち

パワーカップルの場合、お互いに高い収入がある分、財布は別という場合も多いでしょう。しかしお互いの将来や、子どものことを考えると、家計管理や貯金などについて、夫婦でしっかりと話し合わなければならないこともあります。

また、多忙ゆえについどんぶり勘定になってしまう、無駄遣いが多いといったケースもあります。

互いの状況がブラックボックスになって、いざというときに困らないよう、普段から意見をすり合わせておきましょう。

家事や子育てと、仕事との両立が大変である

妊娠・出産は、特に女性の心身に大きな負担を伴うライフイベントです。そして育児は、大変な手間と時間、体力、精神力などを要します。

パワーカップルの場合、収入が高い分、進学や習い事、留学など、子どもへの教育投資は惜しまずにできるでしょう。

しかし一方で、妊娠中や出産後に、家庭と仕事をどう両立していくかが、非常に大きな課題となってきます。

もちろん子どもがいなくとも、家事や介護など、家庭内の仕事はたくさんあります。

共働きということもあるので、どちらか一方が家事や子育てをするのではなく、お互いに協力・分担しながら、ともに主体性を持って行うことが重要だと考えられます。

また、パワーカップルであり続けるためには、夫婦が助け合うことはもちろん、周囲の協力と理解が必要な場面もあります。

パワーカップルになりやすい職業の一例

  • パワーカップルになりやすい職業の一例

この章では、パワーカップルになりやすいと考えられる職業の例を挙げています。パワーカップルになりやすい職業としては、やはり一般的に高収入だといわれている職業が当てはまるでしょう。

医師

厚生労働省の「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、医師の平均年収は1,400万円以上です。

ただし医師は残業時間が長い傾向にあり、中にはオンコール待機といって、所定労働時間外に飲酒や遠出を制限された状態で、病院からの呼び出しに備えなければならない場合もあります。

また、患者の命や健康にかかわる仕事であるため、プレッシャーも大きいと考えられます。

法務従事者(弁護士など)

「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、法務従事者の平均年収は1,000万円弱です。しかし中には、独立開業をして事務所を経営している場合など、年収3,000万円を超える人もいます。

ただし、独立開業している法務従事者は、法的な知見はもちろん、個人の営業力も必要とされます。

大企業の管理職

「大企業」の明確な定義はありませんが、ここでは従業員数1,000人以上の企業を「大企業」として説明していきます。

「令和4年賃金構造基本統計調査」によると、従業員数1,000人以上の企業における、管理職の平均年収は以下の通りです。

役職 平均年収
部長級 約1,222万円
課長級 約997万円
係長級 約745万円

夫婦ともに大企業で管理職に就けば、パワーカップルになれる可能性が高いと言えます。

またこちらで挙げている以外にも、パワーカップルになりやすい高収入の職業として、公認会計士や税理士、大学教授なども考えられます。

パワーカップルとは高収入の共働き夫婦のこと

パワーカップルとは、夫と妻のどちらも高収入を得ている共働き夫婦のことを指す言葉です。

今後は子育て支援が充実し、共働き世代の増加が見込まれています。

そうなると、パワーカップルの割合も増加し、パワーカップルに向けたサービスもより充実するのではないでしょうか。

特に時短といった観点のビジネスでは、重要な顧客ニーズがあるといっても過言ではないでしょう。

パワーカップル世帯の消費動向や嗜好(しこう)を見ていくと、新たなビジネスモデルが見えてくる可能性があります。