調査の結果、ハラタケ綱が急速な種多様化を果たしたきっかけは、白亜紀後期(9000万年前~7000万年前)の被子植物との出会いにあったことがわかってきたという。ハラタケ綱での菌根共生の進化は、約2億5千年前から現在にかけて、さまざまな分類群で独立に何回も起こったことが明らかにされているが、その中でも、白亜紀後期に5つの分類群(フウセンタケ属・アセタケ属・イグチ科・ベニタケ科・イボタケ科)で独立に起こった菌根共生の進化は、いずれも急速な種多様化を伴っていたことが示されたとする。

  • ハラタケ綱菌類の多様化速度の時間的な変遷。被子植物(ブナ目)が出現し多様化した白亜紀後期(9000万年前~7000万年前)に、菌根菌が急速に種多様化しているパターンが検出された。

    ハラタケ綱菌類の多様化速度の時間的な変遷。被子植物(ブナ目)が出現し多様化した白亜紀後期(9000万年前~7000万年前)に、菌根菌が急速に種多様化しているパターンが検出された。(出所:京大プレスリリースPDF)

この結果は、ハラタケ綱の種多様化には被子植物の存在が重要だったことを示すという。その理由は、白亜紀後期はきのこの仲間と菌根共生をする被子植物(ブナ目)が起源し、急速な種多様化を果たしたとされる時期でもあるからだとする。つまり、この時期にハラタケ綱と被子植物との間で密接な関わりがあったと考えられるというのだ。佐藤助教はこの研究結果から、ハラタケ綱は、白亜紀後期に被子植物と出会って菌根共生を始めたことが契機となり、新たな広大な土地へと進出し、急速な多様化を果たしたという可能性が見えてきたとしている。

今回の研究成果は、なぜこれほど多様な菌類・きのこの仲間が地球上に存在するのかという、長年未解明だった疑問に答えるものとして波及効果が高いと考えられるという。一方で、今回の研究で分子系統樹に組み込んだ菌類の種数は全体のごく一部だったことから、解析の精度や信頼性を高めるため、さらに大規模な解析を行う予定とした。また、ハラタケ綱菌類が進化の過程でどのように共生する植物を変えてきたのかについても、さらに解析を進めることを考えているとしている。