Amazonグループのオーディオブック・エンターテインメント「Audible」(オーディブル)が6月14日に記者説明会を開催。サービスの最新動向と現状、これから展開する新しいコンテンツプロジェクトに関連する発表を行いました。人気の作家、村上春樹氏や湊かなえ氏のベストセラー作品の配信拡大に要注目です!
Amazonの「聴く読書」、聴き放題の導入でブレイク
Audibleはプロのナレーター、俳優、声優の朗読による「聴く読書」をアプリやスマートスピーカーで楽しめるアマゾンのオンラインサービスです。日本では月額1,500円で12万を超えるタイトルが聴き放題で楽しめます。ビジネス実用書のほか、国内・海外の文学/ミステリーの人気作品を音声で聴くと、また新たな発見が得られるところにAudibleの魅力があります。スマホなどモバイル端末で楽しむ際にはオンラインストリーミングのほか、端末にコンテンツをダウンロードしてオフラインで聴くこともできます。
Audibleのコンテンツ配信は2022年1月27日まで、会員が毎月1枚のコインを受け取って好きなタイトル1冊と交換するシステムでした。同日から定額聴き放題のサービスに移行したことが起爆剤となり、「ビジネスモデルの移行前と2023年5月を比較すると会員数は67%の増加が見られる。月間聴取時間は260%も伸びている」と、発表会に登壇したAudibleカントリーマネージャーの逢阪志麻氏が説明しました。
Audibleがメディアなどを通じて仕掛けた広告展開や、フリートライアルのキャンペーンも奏功した結果、2023年上半期中には1人の会員が月内に新しいコンテンツに触れて読む=聴く件数も2倍に増えたそうです。
聴き放題のサービス形態は、Audibleのユーザー層や「読まれるコンテンツ」の傾向を変えつつあります。コイン制のころはビジネスパーソンの会員が多く、読まれるコンテンツはビジネス・キャリア、自己啓発関連が多かったといいます。聴き放題のサービスモデルに移行してからは、小説・文学やフィクションなどエンターテインメント領域の作品が人気を集め、ユーザーの聴取時間も長くなる傾向にあるといいます。ユーザー層も女性の比率が高まり、学生が「聴く読書」を英語の勉強に活用したり、リラックスしながら楽しめる娯楽として活用するシニアも増えているそうです。
逢坂氏は、今後も戦略的にコンテンツを拡大するための投資を行い、グローバルコンテンツも充実させたいと意気込みを語りました。
Audible発の作品も拡充、人気俳優が朗読
6月以降からAudibleで楽しめるようになる新しいコンテンツのラインナップは、ビジネス・アフェア・シニアコンテンツリーダーのキーリング・宮川もとみ氏が発表しました。
Audibleのユーザー層拡大を牽引した作家・村上春樹氏のライブラリが6月14日以降に拡大します。追加されるベストセラーは下記の通りです。
<6月14日 配信開始>
- 『猫を棄てる 父親について語るとき』朗読:中井貴一
- 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』朗読:向井理
<2023年 配信開始予定>
- 『カンガルー日和』朗読:多部未華子
- 『パン屋再襲撃』朗読:柳楽優弥
- 『ノルウェイの森 (上)(下)』朗読:妻夫木聡
- 『レキシントンの幽霊』朗読:門脇麦・滝藤賢一
- 『女のいない男たち』朗読:市原隼人
村上春樹氏の人気作品を、映画やドラマでなじみ深い俳優の朗読により聴くと、頭の中に物語の各場面が映像で浮かんでくるような不思議な体験が味わえます。
同じく人気作家の湊かなえ氏の著作『贖罪』も6月14日からAudibleに登場します。ナレーターは女優の小池栄子さんです。同氏の作品は、2023年内に以下の4作品も配信を予定しています。
- 『Nのために』朗読:榮倉奈々
- 『境遇』朗読:松雪泰子
- 『リバース』朗読:藤原竜也
- 『未来』朗読:のん
国内の出版社とAudibleが、著者と連携して「オーディオブック発」の作品を発表する「Audibleファースト」のコンテンツも強化されます。出版を予定している作品は下記の通りです。
<5月26日 配信開始>
- 『百年の子』著:古内一絵 朗読:石田ひかり(小学館)
<6月23日 配信開始予定>
- 『さよならごはんを今夜も君と』著:汐見夏衛 朗読:河合優実/諏訪珠理(幻冬舎)
音声バラエティ番組のポッドキャスト配信もコンテンツを拡大しています。なお、同じAmazonグループの音楽配信サービスであるAmazon Musicが無料で提供するポッドキャストのコンテンツも、月額1,500円のAudibleのプラットフォームで楽しめます。
<6月9日スタート、全8エピソード毎週配信>
- 『加藤浩次と山口一郎のとんぼとサカナ プロデュース by 佐久間宣行』出演:加藤浩次、山口一郎、佐久間宣行
<4月7日スタート、毎週配信>
- 『SAYONARAシティボーイズ』出演:大竹まこと、きたろう、斉木しげる
2023年中には「聴くアニメ」として、『ルパン三世』の全3シリーズ/計6エピソードが配信されます。対象となる作品『次元大介の墓標』『血煙の石川五右衛門』『峰不二子の嘘』は映像化もされています。Audibleのサービスと比べて楽しむのも面白そうです。
日本のトップアスリートへのインタビューコンテンツ『Athletes' Mind~アスリーツ・マインド~』も年内に配信を開始します。野球の前田健太氏、サッカーの遠藤航氏、レーシングドライバーの角田裕毅氏のほか、全16人のエピソードが配信を予定しています。
ポッドキャストの注目コンテンツは、米マーベルとのコラボレーションによる作品『マーベルズ・ウェイストランダーズ、スターロード』です。6月28日から最初の全10エピソードを配信。その後、2024年までの期間に6つのシーズンを展開する予定です。主人公のピーター・クイルを俳優の古田新太氏が演じるほか、豪華声優陣がまわりを固めます。
Audibleの宮川氏は、現在日本発のオリジナル・オーディオファースト作品を外国語に翻訳し、海外に紹介する取り組みも積極的に行っているとしながら、今後も発信を強化したいと語りました。日本らしいオーディオエンターテインメントを海外に展開することも視野に入れているようです。
筆者も、キッチンで水仕事をする時間によくAudibleを利用します。映像コンテンツと違って、スマホのディスプレイから目を離して楽しめるので、手元を動かしたり、歩き回りながらでもコンテンツが頭に入ってくる感覚が、慣れるととても快適に感じられます。初めての方には30日間の無料トライアルもあるので、ぜひ一度試してみることをおすすめします。