「矢面に立つ」というフレーズについて、聞いたことはあっても意味をよく知らない人も多いのではないでしょうか。
本記事では「矢面に立つ」の詳しい意味や語源、正しい使い方と例文を紹介。「矢面に立たされる」の意味や、言い換え表現と対義語、矢面に立つことはリーダーに必要なのかについてもまとめました。
「矢面に立つ」とは? 意味や読み方、語源を解説
「矢面に立つ」の意味は、批判や抗議、質問などを集中して受ける立場に身を置くことです。
「チームを代表し、彼が矢面に立つことになった」「彼女は矢面に立ち、答弁を行った」などの形で使用します。
特に、組織や仲間を守るために、自分を犠牲にして正面に立つケースでよく用いられます。例えば、責任者がクライアントからのクレームを受ける場合や、組織の不祥事を詫びる記者会見において、代表者が記者からの質問を受ける場合などを指して使われます。
「矢面に立つ」は「やおもてにたつ」と読みます。なお「矢表に立つ」と書くこともあります。
「矢面に立たされる」という形でもよく使われる
「矢面に立つ」だけではなく、「矢面に立たされる」と受け身の形でもよく使われます。
例えば「問題が発生し、責任者とは名ばかりの僕が矢面に立たされることとなった」「非難の矢面に立たされるのはごめんだ」などの形で使用します。
この場合は、自らの意思とは関係なく、責任を負わされていることを表します。
「矢面に立つ」の語源・由来
「矢面に立つ」は元々、敵から放たれた矢の正面に立つことを意味していました。
戦場において、矢は相手を攻撃して傷付けるための武器です。飛んでくる矢に立ちはだかることは、自分を犠牲にしてでも仲間を守る姿だといえます。
戦場の「矢」を批判や抗議と捉え、それらの攻撃を集中的に浴びることを表す言葉として、「矢面に立つ」は使われるようになりました。
「矢面に立つ」の正しい使い方やビジネスで使える例文
「矢面に立つ」は、誰かから攻撃を受けるときに際に用いられる表現です。攻撃とは、批判や抗議、質問などのことを指します。
自らの意志で自己犠牲を払うパターンと、立場や状況で仕方なく、攻撃を受ける立場になるパターンがあります。
多くの場合は、組織や仲間などを守るという意味で用いられます。具体的な例文を見ていきましょう。
・非難を浴びることが分かっているにも関わらず、彼は責任を負うため矢面に立った。まさにヒーローだ
・仲間をかばうために、矢面に立って抗議を受けた彼女の姿に、私は感銘を受けた
・私のミスが原因で起きた問題について、先輩は矢面に立って取引先に謝罪してくれた
・部下のミスで非難が殺到したとき、即座に矢面に立った上司を、僕は尊敬している
・この会社では、トラブルが起きた際に矢面に立つ人が、きちんと評価されている
・上司となり多くの部下を持つならば、どんなときでも矢面に立つ覚悟を持って行動しなければならない
・私はいつの間にか、非難の矢面に立たされることとなってしまった
「矢面に立つ」の類語・言い換え表現
「矢面に立つ」の類語として、「攻撃される立場になる」という意味を持つ言葉を集めました。例文と共に紹介します。
矛先が向く
「矛先が向く(ほこさきがむく)」とは、批判や非難など、攻撃の対象がある方向に向くことを意味する表現です。
議論などにおいて、誰かが標的になった際に用いられます。
下記は例文です。
・会議では、彼に非難の矛先が向いた
・先ほどまで言い争っていた彼女たちは、「あなたにも原因がある」と言って僕を責め始めた。どうやら怒りの矛先は僕に向いたようだ
ターゲットになる
「ターゲットになる」は、攻撃などを受ける標的になることを意味します。
下記のように使用します。
・気の毒なことに、彼女は新人いびりのターゲットになってしまった
・次の会議で、この企画書は多くの人から批判を受けるだろう。
後輩が思い詰めてしまわないよう、私がターゲットになろう
身代わりになる
「身代わりになる」とは、他人の代わりに、自分が被害を受けることについて意味します。
「誰かの代わりに」という部分がポイントとなる表現です。
下記のように使用します。
・今回のトラブルの非難は、私が彼の身代わりになって受け止めることで、かつての恩返しをしようと思う
・本案件の責任者は彼だが、この問題を説明するには少し未熟だ。
経験のある僕が身代わりになることで、批判も少しは収まるかもしれない
「矢面に立つ」の対義語
「矢面に立つ」は批判や非難などの攻撃に正面から立ち向かうことを表すので、対義語は、非難や責任から逃れることを意味する言葉が当てはまります。
矛先をかわす
「矛先をかわす」とは、批判や非難などの攻撃から逃れることを意味します。
下記のように使用します。
・彼は上司に問い詰められていたが、巧みな話術でうまく矛先をかわした
・あまり詳しくない分野について質問がきたが、得意分野の話題にそらすことで追及の矛先をかわした
雲隠れする
「雲隠れ」は、姿を隠し、行方をくらますことを意味する表現です。
「雲隠れする」という行動は、責任から逃れることや義務から逃げ出すことなど、ネガティブな文脈でよく使われます。
下記は例文です。
・この作戦のリーダーであったはずの彼は、作戦決行の数日前に雲隠れした
・上司が雲隠れしたことで、残された業務や引き継ぎに追われ、部内はパニックだ
矢面に立つことはリーダーに必要な要素?
部下がついてくるような理想のリーダーになるためには、矢面に立つ覚悟が大切です。
誰かがトラブルやミスを起こしたとき、相手を責めて非難するだけでは、人はついてきません。失敗できない恐怖に支配されることで挑戦できず、成長できないためです。
外部からの批判があっても冷静に対応し、責任を負う姿は、多くの人から信頼を得られるでしょう。その安心感があるからこそ、部下たちは自分の頭で考え、より大きなチャレンジができます。
何かがあったときに矢面に立って部下や仲間を守るリーダーこそ、周囲から「ついていきたい」と思ってもらえるリーダーなのです。
慣用句「矢面に立つ」を適切に活用しよう
「矢面に立つ」は、仲間のために、批判や抗議、質問などを集中して受ける立場に身を置くことを表します。
日常生活だけでなくビジネスシーンでも使われる表現であるため、正しい意味や使い方を押さえ、適切に活用しましょう。