伊藤園は6月8日、第8回 伊藤園ウェルネスフォーラムを開催。専門家が登壇して『夏の紫外線対策』および『夏の熱中症対策』に緑茶が効果的であると説明した。このほか『夏の健康課題』についてパネルディスカッションも行われている。

  • 第8回 伊藤園ウェルネスフォーラムが開催

緑茶カテキンを塗る&飲む!?

はじめに、明治薬科大学の石井文由氏が『夏の紫外線対策~お茶のカテキンで紫外線対策!?』というテーマで講演した。その冒頭、石井氏は夏の紫外線が皮膚におよぼす悪影響についてあらためて解説。近年では4月を過ぎた頃からUVA(紫外線A波)、UVB(紫外線B波)の両方が強くなっている、と警鐘を鳴らす。

  • 明治薬科大学 セルフメディケーション学研究室 寄付講座教授の石井文由氏

  • 紫外線の皮膚への影響

そのうえで、日焼け止めクリームなどに含まれる成分は肌へのダメージも大きい、と話す。「紫外線吸収剤は肌に刺激があり、DNAを損傷する発がん性も認められます。また紫外線散乱剤はラジカル(活性酸素)を産生させ、肌を乾燥させます」と石井氏。

  • 日焼け止めの成分が肌に負担をかけている

ここでマウスを使った、とある実験結果を紹介。なんと、緑茶カテキンを塗布したマウスは紫外線を当てても表皮のコラーゲンが破壊されていなかったという。そこで、夏場はUVカット(日焼け止め)化粧品を塗る前に緑茶カテキン配合のスキンケア(保湿剤)を塗っておくことで、紫外線ダメージも、日焼け止めクリームによるダメージも防いでくれる、とした。

  • 緑茶カテキンの塗布で肌へのダメージを防ぐ

さらに緑茶カテキンは、飲んでも紫外線ダメージが軽減できると石井氏。「緑茶カテキンを飲むことで血清エピカテキン濃度が上昇し、皮膚血流量が増えることが分かっています。皮膚の細胞にカテキンが作用し、血流に栄養を行き渡らせるので健康状態が保たれる。これによりダメージに対する抵抗力が上がると考えられています」と話す。

  • 緑茶カテキンを飲むことで皮膚血流量が増える

ちなみに茶カテキンの含有量は、緑茶が87.5mg(100ml当たり)、ウーロン茶が63.8mg(100ml当たり)、紅茶が29.5mg(500ml当たり)で、緑茶が最も多い。そこで「毎日緑茶を飲むことで肌が元気になり、紫外線ダメージに強い肌になります」と石井氏。緑茶カテキンは塗る&飲むことで、紫外線対策に効果を発揮します、と結論づけた。

脱水時にお茶を飲んでも良いの?

続いて、奈良女子大学の鷹股亮氏が『夏の熱中症対策・効果的な水分のとり方』というテーマで講演した。ヒトの身体中の水分量は、成人であれば体重の60%ほど、例えば体重60kgの人なら36kgくらいが水分だと言われている。そして体内では体液のバランス調節が最優先で行われる。このため、たとえば脱水状態になると発汗(=身体を出ていく水分)が抑制されてしまう。汗が出ないと体温を下げることができないので、過度な体温上昇が起こる。これが結果として、熱中症のリスクを上げる原因になっている。

  • 奈良女子大学 生活環境科学系 生活健康学領域 教授の鷹股亮氏

  • 脱水により、過度な体温上昇、心拍数の増加が引き起こされる

そして脱水状態になったときは、血漿浸透圧の回復、体液量の回復(ナトリウム摂取が必要)の両方が期待できるスポーツドリンクが最も有効であるとする。しかし「スポーツドリンクを飲まずとも、水+食事を摂ることができれば、体内の水分保持率はスポーツドリンク摂取時と同程度になります」と鷹股氏。

  • 水+食事を摂ることで、体内の水分保持率を上げられる

では、脱水時の水分補給にお茶はNGなのだろうか。同氏は「お茶はカフェインを含んでおり利尿作用があるため、脱水後の水分補給には適さない、と長らく言われてきましたが、実は科学的な根拠が乏しいのが現状です」と説明する。

そして、軽度脱水後の緑茶飲料の摂取は「脱水を進行させない」「体内の水分保持率は水を飲んだときと同程度であった」と紹介。結論として、脱水予防のために緑茶飲料の摂取を積極的に行ってほしい、とした。

  • 軽度脱水後の緑茶飲料の摂取は、脱水を進行させない

夏バテにも緑茶が有効

このあと石井氏、鷹股氏のほか、東京大学大学院の米永一理氏、伊藤園の衣笠仁氏を交えた4名で『夏の健康課題と緑茶摂取の有効性』をテーマにしたパネルディスカッションが行われた。

太陽の日差しが強まる夏が近づいている。石井氏は『光老化』というキーワードを使い、あらためて紫外線が肌の老化現象を加速していくと説明する。「男性でも日傘を使うべき」「若い人も、若いうちから光老化に気をつけてほしい」と石井氏。そして茶カテキンの持つ効能に注目して、積極的に緑茶を飲んでくださいと付け加える。

  • パネルディスカッションにのぞむ石井氏(左)と鷹股氏(右)

また鷹股氏は「カフェインを含む飲料には利尿作用がある、という論文は大昔に1つあったのみで、それも非常に高濃度のカフェイン飲料を対象にしたものでした。その後、同じテーマの研究はまったく行われずにいます。では緑茶程度のカフェインなら、どうなのか。その結果については、これまでよく分からずに来たというのが現状です」と説明。

最近の研究では、脱水していない状態のときに緑茶を飲んでも水を飲んだときと結果は変わらないと言われている、したがって脱水状態のときに緑茶を飲んでも脱水が進行するということはない、と重ねて強調する。

「緑茶にはスポーツ飲料ほどの効果はありませんが、でも飲まないよりは飲んだほうが良い。水と比べても飲みやすいですし、それが脱水予防になると思います。緑茶と同時に食事、あるいはおやつを食べてもらえたら効果的です」と鷹股氏。

一方で米永氏は、夏バテについて「夏場に自律神経系のバランスが崩れることを夏バテと言います。熱中症も脱水症状も、あとクーラー病なんかも夏バテの原因になります。緑茶は、自律神経の乱れをある程度抑えてくれるということも言われていますので、脱水対策だけでなく、普段から飲んでおくことを心がけてください」と説明する。脱水については「私の患者さんには、夜寝ているときにも身体は乾いていきますので、枕元にお茶あるいは水のペットボトルを置いてもらって『ちびちび飲み』をやってください、と説明しています」と明かした。

  • 東京大学大学院 医学系研究科イートロス医学講座 特任准教授の米永一理氏

衣笠氏は、緑茶の香りは自律神経系の乱れにも効果的だと説明する。「お茶の香りは200種類以上の成分から構成されています。副交感神経に作用して、リラックス効果をもたらす成分も含まれているんです。夏の暑い、自律神経が乱れてしまうような日々にはお茶が非常に適した飲料ですし、そのときに香りも楽しんでもらえたら」と説明していた。

  • 伊藤園中央研究所 所長の衣笠仁氏

  • 第8回 伊藤園ウェルネスフォーラムのまとめ