ASUSから登場したゲーミングキーボード「ROG Azoth」を試用する機会をいただいたので、実際に2週間ほど使った上でこのキーボードの特徴や魅力についてご紹介します。
シンプルで派手さのないデザイン
ROG Azothはいわゆる75%レイアウトキーボードで、主要なキーに加えて独立したファンクションキー、矢印キー、Inert、Delete、PageUp、PageDownを搭載しています。右上にある有機ELディスプレイとコントロールノブが特徴的。なお、英語配列のみのラインナップとなっており、日本語配列は選択できません。
サイズ(幅×奥行き×高さ)は326×136×40mm。当たり前ですがテンキーレスキーボードよりも小さいため、狭いデスクでも取り回しのしやすいサイズです。重量は1,186gとサイズの印象よりもずっしり重く、しっかりとした安定感があります。
裏面の4隅にはゴム製のグリップを備えています。1,186gの重量と相まって、操作中にずれたりすることはありませんでした。2段階のスタンドが用意されているので、キーボードに傾斜をつけたい場合も安心です。もちろんスタンドを立てたときの底部にもグリップがあります。
キーキャップはダブルショットPBTキーキャップを採用しています。ABS素材に比べて耐久性に優れているものの、記号など一部のセカンダリ機能は印刷になっているので擦れることがあります。
Wキーに突起がある点は、ゲーミングキーボードとしての特性を際立たせています。キーボード操作を必要とするゲームでは、移動をWASDキーで実行することが一般的で、その際、「W」キーは前進操作に用いられ、多くのプレイヤーが中指をそこに置くでしょう。そこで、目視せずともWキーの位置を確認できるというのは、地味ながらゲーマーにとっては非常に便利な機能です。
有機ELディスプレイとコントロールノブが便利!
ROG Azothの特徴的な部分といえば、本体右上にある有機ELディスプレイとコントロールノブでしょう。有機ELディスプレイにはCapsLockキーの状態や接続モード、バッテリー残量、PC/Macモード表示などのキーボードのステータスを表示できるだけでなく、メイン部分には、カスタムアニメーション、CPU温度などのシステム情報、オーディオビジュアルの表示が可能です。
筆者はゲーム中のCPU使用率やCPU温度などが気になってしまうタイプの人間なので、キーボードを見るだけでそれらを確認できるのはかなり嬉しいポイントでした。そうでなくても、バッテリー残量がアイコンで確認できるのはかなり便利だと思います。
有機ELの右にあるコントロールノブは、前後と上からの押し込みの3操作が可能で、側面のボタンも含めて4つの操作が行なえます。押しボタンで操作の順次切り替えをし、その機能に対して前後で操作、押し込みで決定という流れ。
操作できる機能は、システム音量 / メディアトラック/ キ ーボードの輝度調整 / 有機ELディスプレイの輝度調整 / RGBエフェクトのプリセット / カスタマイズの6機能。カスタマイズキーにはキーボード操作やマウス機能、アプリ起動、Windowsショートカットなどを割り当てることができます。ただし、FnキーやWindowsキーなど一部のキーは割り当てることができないので注意が必要です。
有線、専用2.4GHzドングル、Bluetoothのトライモード接続に対応
PCとの接続方法は、有線・2.4GHz無線、Bluetooth(最大3台まで)の3つから選べます。
2.4GHz無線は「ROG SpeedNovaワイヤレステクノロジー」により、低遅延・省電力を実現しています。有機ELディスプレイとRGBバックライトがオフの状態で、最長2,000時間の利用が可能と、省電力性能はかなり高いですね。全部オンにして使う場合のバッテリー動作時間は最長62時間なので、せっかく備えているものを全てオフにするのはもったいない! という場合は有線接続で使った方が堅実でしょう。
スリープモードからの復帰も速く、無線接続時のストレスも非常に少なくなっています。
スイッチは「ROG NX Red」、静かで快適な打鍵感をチェック
ROG Azothは、ASUSが独自に開発したROG NX Redメカニカルスイッチを搭載しています。クリック感のない「リニアスイッチ」で、主なスペックは以下のようになっています。
初期押下圧:40gf
総合押下圧:55gf
キーストローク:4.0mm
アクチュエーションポイント:1.8mm
ストローク耐久性:7,000万回
一般的なCherry MX Redに近いスイッチで軽い押下圧で入力することができます。どの角度でキーを押し込んでもスムーズにキーが降りるので、文字入力だけでなくゲームプレイでも快適に操作できました。
また、今回ROG Azothを試用していて驚いたのは打鍵時の静音性です。
キー入力を行う際、打鍵音だけでなく、キーが底まで押し込まれたときに筐体から発生する振動音や反響音も聞こえます。しかし、ROG Azothは本体内部にシリコンガスケット、シリコンパッド、PORON ウレタンフォーム、シリコンフォームなど、騒音を吸収するレイヤーを複数配置することで、非常に高レベルな静音性を達成しています。
筆者はROG Azothと同じROG NXメカニカルスイッチを搭載するROG Falchion NXを所有しているのですが、ROG Azothの静音性はそれと比べても明らかに優れています。いわゆる静音スイッチを使用したキーボードと同等、あるいはそれ以上の静音性を感じます。
キースイッチの交換やスイッチのルブも可能
キースイッチの交換しやすさやスイッチの分解・メンテナンスができるのもROG Azothの大きな特徴です。一般的なキーボードでは、キースイッチの足が基板にはんだ付けされているため、スイッチ交換にははんだごてなどの器具が必要で、基本的に自分で修理することはありません。
しかしROG Azothのキースイッチはホットスワップに対応していて、同梱されているスイッチプーラーを使うことでかんたんに取り外すことが可能です。
さらに、スイッチオープナーを使うことでハウジングを分離させ、付属の潤滑剤をキースイッチ内の接点に塗布する「ルブ」をすることもできるようになっています。
キースイッチの交換やメンテナンスができるというのは、自作キーボードに近いものを感じます。同じ形状のキースイッチであれば他社製のキースイッチも使えるため、好きなキーボードに好きなキースイッチを組み合わせて使いたいと思ったことがある人には非常に嬉しいのではないでしょうか。
Armoury Crateでさまざまなカスタマイズが可能
ROG Azothは、ASUSの統合ソフトウェア「Armoury Crate」を導入することでさまざまなカスタマイズが可能です。
キーボードの割当を変更する「キー」、LEDイルミネーションを設定する「LEDライト」、コントロールノブの動作を変更する「コントロールノブ」、有機ELディスプレイの表示を設定する「OLED」、本体をスリープモードに移行させる時間の設定などができる「電源」、ファームウェアのアップデートを行う「ファームウェアの更新」の6つのメニューが用意されています。
価格に見合った性能・機能を持つハイクオリティなキーボード
ROG Azothは、多機能性と特徴的なデザインを持つ優れたゲーミングキーボードです。特に有機ELディスプレイとコントロールノブ、多様な接続方法、高い静音性、そして自分の好みに合わせてカスタマイズ可能なキースイッチが魅力的です。これらの要素が組み合わさって、適度な重さとサイズ、そして打鍵感が生み出され、非常に使いやすいキーボードになっています。
しかし、全ての機能をフルに活用するには、キーボードの取り扱いに慣れたユーザー向けであることも事実です。キースイッチの交換やルブなどのメンテナンスは、自作キーボードに精通しているユーザーにとっては大きな魅力ですが、初心者にはやや複雑かもしれません。
総括するとROG Azothは優れた性能と独自性を持ち合わせたゲーミングキーボードで、実売価格35,000円前後と高価なキーボードではあるものの、価格に見合った性能・機能があるのも事実です。ゲームプレイだけでなく普段使いでも便利な75%レイアウトで、それでいて様々な機能を持ち合わせた唯一無二の製品に仕上がっているため、刺さる人にはとことん刺さるキーボードだと思います。