コロナ禍の影響や半導体不足、ウクライナ情勢の悪化に加え、アウトドア人気に伴うSUVの需要増など、さまざまな要因で一時は爆上がりした中古車価格も、ここ最近は少し落ち着きがみられるようになった。新車の生産体制が徐々に回復し、納車遅れの状況も改善した結果、中古車需要の減少が見込まれるようになったからだという。
しかし、車は安い買い物ではないし、大事な資産でもある。できるだけ高い価値を維持したまま、賢く乗り継いでいきたいのが本音だろう。
そこで今回は、車買取サービス「旧車王」を運営し、「旧車バブルに終息の兆し? 中古車市場の現状をカレント自動車に聞く」でも協力いただいたカレント自動車に、"中古車の資産価値"について聞いてみた。お話しいただいたのは、同社の車輌事業部で副部長を務める清水篤朗氏だ。
▼ベンツのGクラス、ランドローバーのディフェンダーが最強
ーー中古車の中でも、"価格の下がりやすい車種"と"価格の下がりにくい車種"がある理由について教えてください。
やはり需要がある車種は価格が下がりにくいですし、需要がない車種は価格も下がる傾向にあります。
下がりにくいのは、例えばマニュアル車やスポーツカーのように、車そのものに大きな特徴があるような車種ですね。形が昔から変わらない車種なども下がりにくい傾向にあります。
逆に、ファミリー向けの車や、大きな特徴のない車種は価格が下がりやすいと言えます。
ーーなぜファミリーカーは下がりやすいんですか?
ファミリーカーの場合は常に新しいものが求められていて、新車種のほうが安全機能や燃費の面でも優れていますから、あえて古い車種を選ぼうとする人が少ないんです。
中でも、最新型であることがステータスと考えられがちな輸入車は、型落ちした途端に価格もガクッと下がりやすいですね。
ーー実際に価格が下がりにくいメーカーや車種について教えていただけますか?
例えば、昔から形が変わっていないメルセデス・ベンツのGクラスやランドローバーのディフェンダーなどは価格が下がりにくいことで知られています。国産車だと、トヨタのランドクルーザーなども比較的下がりにくいほうですね。やはりファンの多い車種かどうかが重要だと思います。
ーーやはりSUVが人気もあって価値も高いんですね。
SUV以外では、フェラーリなども価格が落ちないですね。フェラーリに乗ること自体がステータスになっていますし、限定車の場合はいくらお金があっても新車で手に入れることが難しいので、新車で購入できればその瞬間に買値よりも高く売ることができます。
しかも、フェラーリであればどんな状態でもある程度の値段が付きますし、むしろ年式の古い車種のほうが高値になるケースも珍しくありません。
▼車の状態によって資産価値も大きく変わる! 見るべきポイントは……
ーー車体の色によって、資産価値は変わりますか?
タイプによって違いますね。セダンやSUVは白や黒が一番高い価格がつきます。これも結局は「誰が買うのか」というところに繋がっていて、白や黒の車種は汎用性が高く、冠婚葬祭にも乗っていけるので、日本では一番人気となっています。
しかし、これがスポーツカーだと「人と違って目立つ色がいいな」と考える人が多いので、白や黒だけでなく、赤や黄色、青のような派手なカラーも人気となっています。
ーー保有期間中に、資産価値を左右するポイントや注意点があれば教えてください。
車検や定期点検の整備記録はしっかり残したほうがいいでしょう。整備記録が残っていれば、次の方も安心して買えるので価値は上がります。走行距離も少ないほうがいいですし、もちろん傷もないほうがいいので、極論を言えば乗らずに保管しておくと高く売れやすいです(苦笑)
ーー走行距離は少ないほうがいいとのことですが、長い期間走らせずに放置している車は危ない、と耳にしたことがあります。
人間でいうところの運動不足みたいな感じですね。長期間まったく乗らずに放置しておくのはよくありません。そこを見極めるためにも、やはり整備記録が揃っていることが重要だと言えます。
ーー車内の使用感などはいかがでしょうか?
タバコやペット、芳香剤の臭いはNGです。どんなに良い芳香剤の香りでも、結局は次に乗る方が嫌だと思えば嫌な臭いになってしまいます。あとはよく触る部分、例えばドアノブやハンドル、シートの横側などが綺麗だと「丁寧に乗っていたんだな」という印象になります。
雑に扱っているとドアノブ周辺にたくさんの爪痕がついてしまいます。また、ハンドルが剥げてきている車もあります。シートの横側も、乗り降りするときに服の摩擦で擦れてしまうことがありますが、これらの部分は、意識しておくことで、比較的綺麗に維持できます。
▼カスタムはしてもいい?「修復歴」と「修理歴」の違いは?
ーーカスタムをしてしまうと、価格も下がりますか?
車種によりますね。その車種の王道カスタムであればカスタムしていても価格は下がらないかもしれませんが、そうでない限りは基本的に価格は下がる場合が多いですね。
ーー修復歴はいかがですか?
中古車情報サイトなどでも「修復歴あり」「修復歴なし」の表示がありますが、もちろん修復歴はないに越したことはありません。
「修復歴あり」というのは、人間で言うところの骨折のようなイメージです。車にも"骨"が通っていて、一度骨が曲がったり、折れてから繋いだりしている状態だと「修復歴あり」と判断され、価格もガクッと落ちます。
ボディを擦ったりぶつけたりしてできた傷の修理であれば、直してしまえば価格がガクッと下がることはありません。
ーー過去の取引実績で、相場よりも買取額が大幅にアップした事例などはありますか?
ワンオーナー車で、整備の記録もすべて取ってあって、状態も綺麗な車輛であれば、大幅に価格を上げて買い取らせていただくこともあります。
新車でも中古車でも、購入するからには資産としての価値を重視するのは当然のこと。リセールのよさを考えるうえで、清水氏のアドバイスは大いに参考になりそうだ!