ランボルギーニの新型車「レヴエルト」が日本に上陸した。「V12エンジン搭載」「プラグインハイブリッド(PHEV)システム採用」「1,000馬力超え」などキャッチーな特徴が満載のスーパースポーツカーだが、驚いたのは革新的なレイアウトを採用しているところだ。実車を確認してきた。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」

    ランボが「レヴエルト」を日本初公開(本稿の写真は撮影:原アキラ)

暴れ牛の名を継いだ次世代のスーパーカー

「レヴエルト」(Revuelto)という車名は、今から140年以上前の1880年8月、バルセロナの闘牛場であちこちの柵を何度も越えながら駆け回ったという暴れ牛の名前「レヴエルト」がルーツ。闘牛の名前を車名に使うのはランボの伝統だ。新型車が持つ超絶パフォーマンスを暗示する名前であるともいえる。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」

    実在の猛牛が「レヴエルト」という車名のルーツだ

ちなみにスペイン語のレヴエルトを「ChatGPT」で調べてみると「さまざまな材料を混ぜ合わせた卵料理」という答えが返ってくる。混ぜ合わせる……確かに、クルマのレヴエルトはV12エンジンに3つの電気モーターとリチウムイオン電池を追加したハイブリッドなパワートレインを積んでいるし、それによるさまざまな走り方が可能なスーパーカーなので、こうした特徴をうまく表現した名前であるともいえそうだ。3つの異なる成形方法を使った炭素繊維複合材料によるモノコックボディにも、そうした意味が掛けられているのかもしれない。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」

    「レヴエルト」はいろんな要素が混ざったクルマだ

「カウンタック」とは真逆(?)のレイアウト

ランボルギーニといえば、50年も前に登場した「カウンタック」(現地ではクンタッチと呼ぶ)がいまだに代表選手として挙げられるのは間違いない事実。天才マルチェロ・ガンディーニによる圧倒的なデザインが名前(クンタッチは「びっくりした!」という意味)の由来だ。

  • ランボルギーニ「カウンタック」

    ランボルギーニの名を高からしめた名車「カウンタック」

カウンタックはパワートレインの画期的なレイアウトでも世界を驚かせた。それを可能にしたのが、もう1人の天才であるチーフエンジニアのパオロ・スタンツァーニだ(ちなみに筆者は4年前、彼の実家が経営するホテルに宿泊したことがある)。

彼がカウンタックよりも前に開発に携わったスポーツカー「ミウラ」では、横置き搭載したV12に起因する性能に満足がいかず、次の新型(カウンタック)では長いV12を縦置き搭載しようと画策。しかし、ロングテールを持つ耐久レーシングカーならまだしも、市販モデルでは適度なサイズに全長を短くすることが必要となる。そこで彼は、ドライバーズシート→エンジン→トランスミッションというそれまでの常識的なレイアウトを180度ひっくり返し、トランスミッションをキャビンのシートの間にのめり込ませる形で配置し、ドライバーの真後ろ、すなわちリアアクスルの前方にV12を搭載して、パワーをミッションからドライブシャフトで折り返して後輪を駆動するという真逆のアイデアを実行に移したのだ。

  • ランボルギーニ「ミウラ」

    こちらは「ミウラ」

この「LPレイアウト」はランボルギーニに大成功をもたらし、後継のV12搭載トップモデルである「ディアブロ」「ムルシエラゴ」、そして現行の「アヴェンタドール」まで連綿と続いてきたのだが、今回のレヴエルトではレイアウトが再び180度ひっくり返ったというから本当にびっくりした。

  • ランボルギーニ「ディアブロ」
  • ランボルギーニ「ムルシエラゴ」
  • ランボルギーニ「アヴェンタドール」
  • 左から「ディアブロ」「ムルシエラゴ」「アヴェンタドール」

驚きのレイアウトを詳細に見る

そのレイアウトを前から見ていくと、まずはフロント左右に2基のモーター(最高出力150PS/最大トルク350Nm 駆動だけでなくトルクベクタリングと回生ブレーキの役目も担う)を搭載している。トランスミッションがあったセンタートンネル内には総電力量3.8kWという比較的小さめ(充電時間を早めるため)のリチウムイオンバッテリーを配置。続くシート背後には最高出力825PS/9,250rpm、最大トルク725Nm/6,750rpmのL575型6,498cc V型12気筒自然吸気エンジン(総重量はアヴェンタドールより17kg軽く、圧縮比は12.6:1に高めている)を搭載、最後尾には150PS/150Nmを発生する1基のモーター(駆動とともにスターターやジェネレーターの役目も務める)、その下方に8速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を横向きに置く形になる。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • さすがに肉眼では見られないが、「レヴエルト」のパワートレインは革新的なレイアウトを採用している

レヴエルトの発表会でプロダクトライン・ディレクターのマッテオ・オルテンツィ氏に話が聞けたので、これまでのレイアウトを真逆にしたことについて聞いてみた。すると、わりとあっさりした回答が。

「レヴエルトを開発するに当たりゼロから考えてみると、今回のレイアウトがベストだったんです。すぐに決めました。変更することについては全く躊躇しませんでした」

その結果、システム最高出力1,015PS(!)の電動4WDハイブリッドシステムが完成した。パワーウエイトレシオはこれまた驚異の1.75kg/PSだ。公称では0-100km/h加速がたったの2.5秒、0-200km/h加速7秒以下、最高速度は350km/hオーバーというすばらしいパフォーマンスを叩き出している。高性能であることから本社では、同システムを単なる「PHEV」ではなく「HPEV」(ハイパフォーマンス・エレクトリファイドビークル)と呼んでいる。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • ステアリングには左右にダイヤルが付いていて、右側ではパワートレインの「リチャージ」「ハイブリッド」「パフォーマンス」、左側ではドライブモードの「チッタ(シティの意味)」「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」が選択可能。合計で13種類の組み合わせから走り方が選べる。これにより4WDの完全電動走行ができるだけでなく、後進時も電動走行となるのがミソだ

リアから見ると車内にエイリアンが!

1,000PSオーバーのハイパワーにも耐えられる新開発のモノコックボディは、「Monofuselage」(モノフュージレージ)と名付けられた軽量・高剛性なCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製。3つの異なる成型方法をとっているのがユニークだ。

5,000t級のホットプレスで成型したフォージドカーボンは主要部分のバスタブやフロントサブフレーム、アンダーパネルに使用。美しい表面が必要なピラーやルーフの部分は、人の手によるハンドレイアップのプリプレグ成型で仕上げる。「ロッカーリング」と呼ぶフロントからリアバルクヘッドまでの一体成型構造物はRTM(レジン・トランスファーモールディング)成型で作るそうだ。

リアのサブフレームはアルミニウム製。トータルではアヴェンタドールよりも10%の軽量化と25%のねじり剛性アップを果たしている。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • ランボルギーニ「レヴエルト」
  • CFRPを多用したボディは3つの異なる成型方法で仕上げた

そのボディのエクステリアは、ブラックアウトした周囲から浮かび上がるY字のヘッドライトがよく目立ち、いかにもスーパーカーといった感じの佇まい。大袈裟な空力付加物がない(というか目立たない)、シンプルでアグレッシブな造形だ。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」

    存在感抜群のY字ヘッドライト

これを手がけたチェントロスティーレ(デザイン部門)責任者のミーティア・ボルケルト氏に話を聞くと、レヴエルトの見どころは意外な場所にあるという。

「レヴエルトの見どころは、実はリアエンドにあるんです。私はオートバイが大好きなので、今回はそれと同じように巨大なV12エンジンを丸見えにしました。その奥のリアウインドーを通して、前方のダッシュボードまでよく見えます。この角度から見ると、まるでエイリアンがこっちを見つめ返しているように見えるでしょ(笑)」

  • ランボルギーニ「レヴエルト」

    このアングルで車内をのぞくと「エイリアン」と目が合うようになっている

確かにその通りだ。フラッグシップモデルらしい見事な演出がなされていて、見るものの心を揺さぶってくる。

さらに「26mm上方に広げた室内高によって居住性がアップしたのと、サイドシル部分をシザースドア側に取り付けたことで、乗降性がかなり良くなりました」とミーティア氏。ランボのサーキット試乗会ではかぶっているヘルメットがルーフにボコンと当たったりすることがたまにあったけれども、レヴエルトなら全く問題なさそう(特に大柄なドライバーにとっては)だし、筆者のような小柄(168cm)なドライバーが乗り降りする際には、広いサイドシルを「よっこらしょ」と乗り越える必要がなくなったというわけだ。

  • ランボルギーニ「レヴエルト」

    左からミーティア・ボルケルト氏、マッテオ・オルテンツィ氏、ランボルギーニジャパン社長のダビデ・スフレコラ氏

レヴエルトの価格は6,500万円オーバーとのこと。日本への割り当ての数年分に相当するオーダーがすでに入っているそうだ。