第36期竜王戦2組昇級者決定戦(主催:読売新聞社)は、2回戦の藤井猛九段―糸谷哲郎八段戦が6月6日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、70手で快勝した糸谷八段が次回戦進出を決めました。
藤井九段の角交換振り飛車穴熊
2組昇級者決定戦は7名からなるトーナメントを勝ち抜いた2名が1組に昇級するもの。糸谷八段は初戦で鈴木大介九段を破っての登場となりました。振り駒が行われた本局、先手となった藤井九段は得意の角交換振り飛車を採用。穴熊に囲ったのが継続の作戦ながら、2枚の金を寄せる手を保留したまま左銀で7筋の歩交換に出たのが臨機応変の対応です。
藤井九段の意表の仕掛けに対し、糸谷八段は冷静な対処を披露します。先手が垂らした7筋の歩を目標に飛車と銀の協力で拠点奪還を図ったのがそれで、直後の8筋への銀引きと合わせてうまく飛車のさばきをつけた格好です。仕掛けから一段落した局面は糸谷八段有利で、飛車を自陣に押さえ込まれた藤井九段は持ち駒の角を使った反撃に望みを託します。
糸谷八段の快勝譜
藤井九段が香を取りつつ馬を作って居直ったのに対し、後手の糸谷八段は丁寧な指し回しでリードを拡大します。6筋に作ったと金で先手の飛車のさばきを防いでから自陣の離れ駒の金を舟囲いにくっつけたのが緩急自在の好手。先手からの攻めをいなしながら本格的な反撃を用意します。この直後、と金を引いて竜の利きを通したのが糸谷八段の決め手になりました。
と金を捨てた糸谷八段はこの代償として先手の守備金を取ることに成功。こうなると序盤に見られた藤井九段の工夫をとがめた格好で、糸谷八段の優勢は疑う余地もありません。終局時刻は15時56分、攻防ともに見込みなしと認めた藤井九段が駒を投じて糸谷八段の勝利が決まりました。勝った糸谷八段は次回戦で増田康宏七段と顔を合わせます。
水留啓(将棋情報局)
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