「お伺いを立てる」という言葉は、取引先や上司へ確認したいことがある際など、特にビジネスシーンでよく使われる表現です。しかし何気なく使用する表現なだけに、正しい使い方を把握していないという方もいるのではないでしょうか。

本記事では「お伺いを立てる」の詳しい意味や敬語として正しいのかを紹介。ビジネスシーンでの使い方と例文に別の言い方、英語もまとめました。

  • お伺いを立てるとは

    「お伺いを立てる」の意味や使い方と例文、言い換え表現などを紹介します

「お伺いを立てる」の意味とは

「お伺いを立てる」とは、目上の人に判断や指示、意見を仰ぐという意味の言葉です。

「伺い」とは相手の判断、意向を確かめるという意味の言葉で、「伺う」という言葉が名詞になったものです。

「伺う」は「聞く」「訪ねる」などの謙譲語であり、自分がへりくだり、相手を立てる意味合いがあります。

なお「伺い」「伺う」には、「神仏に祈って、お告げを願う(こと)」という意味もあります。

「お伺いを立てる」は二重敬語?

「お伺いを立てる」は、「伺い」という謙譲語に、「お」が付け加えられているため、二重敬語であるという意見があります。

二重敬語とは、一つの語に同じ種類の敬語表現が重ねて含まれる言葉を指します。例えば、謙譲語である「参上」と、同じく謙譲語である「ご~する」が重なった「ご参上する」は、二重敬語であり誤りとされます

しかし、「お伺いを立てる」は現代では慣用句的に広く定着しており、使用しても問題ないと考えられています。

どうしても気になる方は「伺いを立てる」と表現するといいでしょう。

「お伺いを立てる」の正しい使い方・ビジネスでの例文

  • 「お伺いを立てる」の正しい使い方と例文

「お伺いを立てる」は特にビジネスの場において、目上の人に質問したいこと、指示を求めたいことがある際によく使われます。会話だけでなく、メールのように文面でやり取りをする際においても同様です。

この章では、ビジネス上の会話やメールで使える「お伺いを立てる」の例文を紹介します。

その件については、クライアントにお伺いを立てているので少々お待ちください

「お伺いを立てる」は目上の人に対して使われることが一般的です。

上記の例文は、上司からある案件についての進捗確認をされたときの返答です。話し手である部下は、クライアントに確認中の事項があることを示しています。

第三者であり、目上の人であるクライアントに対して、「お伺いを立てる」という謙譲表現を使用しています。

それではこの件について、◯◯様にもお伺いを立てておいていただけますでしょうか

この例文では、話し手が聞き手に対して依頼をしています。

依頼内容は、現在話している内容について、聞き手から第三者である「○○様」に確認をしてもらえるように、ということです。

文脈から、「○○様」は聞き手側の関係者ということがうかがえます。この場合「お伺いを立てる」の敬意は「○○様」に向いています。

「お伺いを立てる」はこのように、依頼にも使用できます。

「お伺いを立てる」の類語・言い換え表現

  • 「お伺いを立てる」の類義語

「お伺いを立てる」の類語も併せて押さえておきましょう。

確認する

「確認する」ははっきり確かめる、ということです。

「お伺いを立てる」は目上の人の判断や指示、意見を求めることなので、「確認する」の方がより直接的ではありますが、似た意味合いと言えるでしょう。下記のように使用します。

  • その件については、ただ今部長に確認しております

「確認する」自体に敬語の意味合いはないため、目上の人に確認することを表したい場合は、前後に敬語表現を入れる必要があります。

指示を仰ぐ

「指示を仰ぐ」は、教えや命令を求める、という意味のフレーズです。下記のように使用します。

  • 本件は現場では判断しきれない要素があり、ご指示を仰ぎたいと思います

「仰ぐ」は教えや助けを求める、という意味の他に、尊敬するという意味があるので、「指示を仰ぐ」には相手を敬うニュアンスがあると言えるでしょう。

お尋ねする

「尋ねる」は、わからないことを他人に聞く、という意味の言葉です。

「お~する」は、その動作が及ぶ相手への謙譲の意を表すので、「お尋ねする」とすることで「わからないことを聞く」の謙譲表現となります。下記のように使用します。

  • 先日の件でお尋ねしたいのですが、よろしいでしょうか

「お伺いを立てる」より仰々しさが緩和されるので、把握しておくと便利な表現です。

「お伺いを立てる」の英語表現

  • 「お伺いを立てる」の英語表現

英語には、日本語ほど細かな敬語表現はありません。そのため「お伺いを立てる」を英語で表したいときには、基本的には相手の意図を尋ねる、質問するという意味の表現を使いましょう。

敬意については、周囲の文章で補います。

ask for ~'s opinion

「ask」は「尋ねる、聞く」という意味であり、「ask for」とすることで「求める」といったニュアンスになります。

「opinion」は「意見、見解」を意味する言葉です。

「~」の部分には「彼」「部長」など、具体的に誰の意見なのかを入れます。

主に以下のように使用します。

  • I would like to ask for his opinion.
    (彼の意見を伺いたい)

「would like to」などと併用することで敬意、丁寧さも表現でき、「お伺いを立てる」の英語表現としてふさわしくなるでしょう。

ask for ~'s instructions

「instruction」は「命令、指示」などを指す言葉です。

「指示を訪ねる」という意味になり、「お伺いを立てる」の英語表現となります。

文章としては、以下のように使用するといいでしょう。

  • They had to ask for their superior's instructions.
    (彼らは上司の指示を仰がなければならなかった)

上司は「superior」や「boss」と表現できます。

「superior」は「優れた、上位の」という意味の形容詞ですが、名詞では目上の人、という意味で用いることができます。

inquire of

「inquire of」は、「尋ねる、聞く、問い合わせる」という意味の英語です。「of」に続いて尋ねる相手が記述されます。

例文としては、以下の通りです。

  • I'll inquire of the chairman about the decision on this matter.
    (この決定について、議長にお伺いを立てようと思います)

「decision」は「決断、決定」を意味しており、「on this matter」で「本件について」という意味です。

「お伺いを立てる」を適切に活用しよう

「お伺いを立てる」は、目上の人に判断や指示、意見を仰ぐという意味の便利な表現です。

正しい意味や使い方を把握して、適切に活用しましょう。

使いこなすことで、ビジネスシーンでのやり取りの選択肢がさらに広がります。