Appleの開発者向けカンファレンス「WWDC23」が、現地時間6月5日に開幕しました。オンライン配信された基調講演では、長らく参入がウワサされていたゴーグル型デバイスが、“空間コンピュータ”という位置づけの「Apple Vision Pro」としてついに登場。2024年初頭に、まずは米国で発売します。

  • アップルのティム・クックCEO

また、15型に大型化した新しい「MacBook Air」や、最新のM2 Ultraチップを搭載した「Mac Studio」、「Mac Pro」といった新ハードウェアを披露。2023年秋に提供開始予定の次期OS「iOS 17」、「iPadOS 17」、「macOS Sonoma」、「watchOS 10」の新機能も紹介しました。

「WWDC23」で発表されたもの

MacBook Airシリーズには、新たに15.3型のLiquid Retinaディスプレイを搭載した大型モデルを投入。Apple M2チップ搭載でファンレス仕様、最大24GBまでのメモリを選択可能。最大18時間のバッテリー駆動時間、6スピーカーサウンドシステムも備えています。6月13日発売で、価格は19万8,800円から。

なお、13型の現行MacBook Airについては価格改定を行い、以前より100ドル安い1,099ドルからに値下げすることもあわせて発表しています。

新型のMac StudioとMac Proには、Apple史上最もパワフルな性能とうたう、新プロセッサ「M2 Ultra」を搭載。UltraFusionアーキテクチャによって2つのM2 Maxチップのダイを接続し、従来のM1 UltraよりCPUパフォーマンスを20%、GPUパフォーマンスでは30%性能を引き上げており、最大192GBのユニファイドメモリに対応します。

新しいMac Studioは順当進化を遂げ、最大6台ものPro Display XDR接続をサポート。HDMI出力の帯域も強化しており、最大8K解像度、または240Hz出力に対応します。Mac ProはこれまでIntel搭載モデルのみでしたが、ついにApple Siliconモデルが登場したかたちで、PCIe拡張スロットも充実、7枚のAfterburnerカードを搭載可能にしました。

どちらも既に予約受付を開始しており、6月13日発売予定。Mac Studioの価格は29万8,800円から。Mac Proは2種類あり、タワー型が104万8,800円から、ラック型は109万8,800円から。

iOS 17は、電話/FaceTime/メッセージアプリを強化し、自分の写真や名前の配置を組み合わせてカスタマイズできる「連絡先ポスター」や、留守電の文字書き起こし、AirDropで連絡先情報を簡単に共有できるようにする新機能「NameDrop」などを追加。横向きで充電しているiPhoneのロック画面を、美しいデザインの時計や写真で彩るスタンバイ機能も新登場。音声アシスタントのSiriのウェイクワードは、これまでの「Hey Siri」からHeyが取れ、「Siri」と呼びかけるだけで起動可能になります。

iPadOS 17は、ロック画面がグラフィカルになり、ウィジェットも強化。PDFデータにある入力フォームを見つけ出して入力補助したり、複数人で作業しながらリアルタイムにPDFデータを更新する機能などを追加。さらに、ヘルスケアアプリがiPadで利用可能になります。

macOSの新バージョン名は「Sonoma」に決定。ビデオ会議機能が強化され、低遅延なゲームモードを追加し、Safariブラウザでは仕事とプライベートで使い分ける「プロフィール」が利用可能になるなど、さまざまな使い勝手が向上します。

AirPods Proには、イヤホンを耳に着けたまま人と会話できるよう、外音取込とノイズキャンセリング機能を動的に組み合わせて周囲の環境に適応する新機能「Adaptive Audio」を提供すると発表。

車載向けのCarPlayにはSharePlayを導入し、同乗者すべてのiPhoneからApple Musicの好きな音楽をかけられるようにします。Apple TV向けのtvOS 17では、コントロールセンターを再設計。さらに、ホテルの客室に置かれたAirPlay対応の大画面テレビと、手持ちのiPhoneなどを手軽に連携できる新提案「AirPlay in hotels」も。

Apple Watch向け「watchOS 10」は、ユーザーインタフェースやアプリを再設計し、ウィジェットに必要な情報を表示するスマートスタックが登場。スヌーピーとウッドストックが登場する新しい文字盤などが追加されるほか、サイクリスト向けにはBluetooth対応の自転車用センサーとの接続機能などを提供します。

2023年秋に、ここまで紹介してきたiOS/iPadOS/tvOS 17とmacOS Sonoma、watchOS 10を、対象デバイスを使っている全ユーザーに提供。先行して7月から、バプリックベータ版を開発者向けに提供開始予定です。

最後に、ティム・クックCEOは「One more thing……」と前置きし、同社初のゴーグル型デバイス「Apple Vision Pro」を披露しました。

Apple Siliconの「M2チップ」と新設計「R1チップ」を搭載し、既存のソフトウェアやユーザーインタフェースをベースにした新しい専用OS「visionOS」を採用したスタンドアローンタイプ。コントローラーを使わずユーザーの手の動きや視線、音声で操作できます。これまでのMR/AR用ヘッドマウントディスプレイとは一線を画すユニークな仕様の製品で、マイクロOLEDや空間オーディオ技術を採用するなど、画質・音質にもこだわりました。

Apple Vision Proの価格は3,499ドルから。2024年初頭に米国のApple オンラインストアと直営店で発売し、2024年末までに販売する国を拡大する予定です。Disneyと組んで映像配信サービス「Disney+」を皮切りに、さまざまなコンテンツを提供していくことも示唆しています。