環境負荷の低減や健康増進などの観点から自転車の活用が奨励される中、多くの企業がこれに応じ、さまざまな取り組みを始めている。

自転車活用推進本部は5月31日、自転車活用推進の功績者の表彰式を開催。同時に、「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトの宣言企業から、特に優れた企業・団体を認定する「優良企業」を決定し、表彰式を行った。

表彰式には、自転車活用推進本部で本部長を務める斉藤鉄夫国土交通大臣や、自転車アンバサダーでタレントの稲村亜美さんも参加した。

  • 提供:自転車活用推進本部

自転車は「災害時の交通機能の維持」にも貢献

自転車活用推進に関する功績者の表彰は、2017年に施行された「自転車活用推進法」に基づくもので、今回で6回目の実施となる。功績者とは、自転車の活用の推進に関し、特に顕著な功績があると自転車活用推進本部長が認めた個人(または団体)を指す。

一方の「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトは、自転車通勤を推進する企業・団体に対する認定制度で、こちらは2020年に創設された。優良企業に認定されるには、自転車通勤者が100名以上、または全従業員の2割以上を占めることや独自の積極的な取り組みなどが求められる。

  • 提供:自転車活用推進本部

表彰式に登壇した斉藤国交大臣は、「自転車は身近で手軽な乗り物であり、健康の増進、環境負荷の低減、交通混雑の緩和に貢献するばかりでなく、災害時における交通機能の維持にも貢献できる」とアピールする。

そのうえで功績者について、「自転車活用における地域活性化を通じて良好な都市計画の形成、健康長寿社会や観光立国の実現、安全で安心な社会の実現に多大な貢献をされた方々」であると称え、自転車通勤を推進する優良企業についても、「全国各地で自転車の活用が進むには、地域の企業や地域で活躍される方々のお力添えが不可欠」と訴えた。

  • 提供:自転車活用推進本部

今回、功績者として唯一個人で表彰された佐藤伸哉さんは、全国最大規模の自転車クラブチーム「VC FUKUOKA」を運営。練習環境の整備や経済的支援によって、パラアスリートの育成やパラリンピックメダルの獲得に寄与したことなどが評価された。

特定非営利活動法人「神岡・町づくりネットワーク」(岐阜県)は廃線となった神岡鉄道のレース上にマウンテンバイク2台を固定して運転する新感覚アクティビティーを展開し、昨年は6.5万人の誘客に成功。

今年5月には累計乗車数50万人を達成した。その他にも、地域商店街の活性化やイベントなどに貢献したことも評価され、功績者として表彰された。

同じく功績者に認められた「太陽誘電株式会社」(群馬県)は、電子部品メーカーとして事業を営むかたわら、「市民モニタリング実証実験」、シェアサイクル事業に自社開発の回生電動アシストシステムを搭載した電動アシスト自転車150台を無償で提供。

前橋市のまちづくりやシェアサイクル事業に貢献するだけでなく、群馬県に電動アシスト自転車を寄贈、または無償貸与するなど、地域職員の公務における自転車活動の活性化にも寄与している。

その他にも、一般社団法人「市民自転車学校プロジェクト」(京都市)や「西日本鉄道株式会社」(福岡市)、株式会社「BASE TRES」(静岡県)が功績者として表彰された。

「自転車通勤推進企業」宣言プロジェクトで優良企業としては、自転車の安全教育に注力する「シチズンカスタマーサービス株式会社」(東京都)や、民間企業とともにシェアサイクル事業に取り組む「松本市」(長野県)、自転車通勤を検討している企業に対して規約づくりや安全講習、ヘルメットの貸し出しなどを行っている「ライトウェイプロダクツジャパン株式会社」(東京都)が認定・表彰された。

「努力義務」でもヘルメットの着用を

この日司会を務めた自転車アンバサダーの稲村亜美さんは、功績者や優良企業について、「皆さんとても素晴らしい活動されているし、通勤で自転車を使ったり、安全講習を実施する企業がもっと増えたりしていけばいいと思いました」とこの日の感想を口にした。

  • 自転車アンバサダーの稲村亜美さんが司会を務めた

自転車にまつわる自身の印象的な思い出について聞かれると、「昨年、車に自転車を積んで、千葉県の館山に行きました。真夏だったのでとても暑かったんですけど、海沿いを10~15kmくらい走って、とても気持ちよかったですね」と振り返った。

この春から自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務化されたことについては、「もし事故に遭ったとき、一番死亡率が高いのは自転車だと聞きますし、ヘルメットによって死亡率や危険度は変わりますから、今は努力義務ですが、ひとりでも多くの方にヘルメットを被ってもらえると嬉しいです」と注意喚起した。