ビオフェルミン製薬は5月31日、「おならに関する意識調査」の結果を発表した。調査は1月、20歳~69歳までの男女300名(男性150名、女性150名)を対象にインターネットで行われた。
“おなら”は腸にたまったガスが肛門から排出される気体で、人は、無意識のうちに、1日10回前後の“おなら”をしているという。
自身の腸内フローラや腸内環境が「気になる」(145人)という人に、その理由を聞いたところ、26.2%が「おならが気になるから」と考えていることが明らかに。
全調査対象者に1日に何回くらいおならをしているかを聞いたところ、4割超が「3回以下」(「0回11.7%」+「1~3回30.7%」)と回答。また、健康な人のおならの回数は1日に何回ぐらいだと思うかについても聞いてみたところ、49.0%が「3回以下」と回答し、おならの回数が少ない人ほど“健康”と認識している人が多いことがわかった。
次に、「おならが出る原因は何だと思いますか?」と尋ねたところ、「ガスが発生しやすい食べ物(いも類など)の影響」(37.3%)がトップに。次いで「腸内環境が悪化することでガスが生じるため」(32.7%)、「腸内の悪玉菌が増えているから」(30.3%)と続き、食べた物や腸内環境が原因と考える人が多いことが明らかに。
また、おならが臭くなる原因については、「腸内の悪玉菌が増えているから」(29.3%)や「腸内の悪玉菌が増えているから」(29.3%)、「便秘」(25.3%)と考えている人が多かった一方で、4人に1人が「理由が分からない」(25.7%)でいることがわかった。
続いて、おならが出るのを我慢した場面について教えてもらったところ、女性は「人が多い空間」(36.0%)や「電車・バスの中」(32.0%)、「静かな空間」(31.3%)が上位に。対して男性は「特にない」(34.0%)が1位に。
また、おなら対策で気をつけていることを教えてもらったところ、58.3%が「特になし」と回答。それ以外では、女性の5人に1人が「便秘の改善を心がけている」(19.3%)など、男女ともに気をつけていることの回答項目にばらつきがあることから、明確な対策方法が分からず対処できていない可能性がうかがえた。
"おなら博士"こと広島大学病院副病院長 感染症科教授 大毛宏喜氏は以下のようにコメントしている。
おならの発生メカニズム
「おならの元となるのは、飲食する際などに口から飲み込む空気と、腸内細菌が食物繊維を餌として発酵する過程で発生するガスなどが混ざったものです。実は、私たちは水100ccを飲むとき、その倍の約200ccの空気を飲み込んでいます。空気の成分は酸素が約2割、窒素が約8割。酸素は体内に吸収することができますが、窒素は吸収されないため、げっぷなどで体外に出さない限り、腸まで運ばれおならの元となります。
おならは誰でも出るもので、体に悪いものでは決してありません。我慢しても、体内に吸収されることはなく、そのままため込んでしまうことになり、いつかは必ず出るものなのです」。
自分に合った食物繊維を
「当院の外来には便秘に悩む患者さんが多く来院されます。皆さん野菜を意識して摂取していると言いますが、その多くは生野菜。厚生労働省が推奨する1日約20gの食物繊維*を摂取するには、生野菜だとおよそ1~2kg摂る必要があります。その量を毎日食べることは難しいので、温野菜や煮物にしてかさを減らしたり、食物繊維が多く含まれている海藻類やキノコ類(しいたけ・舞茸)を意識して選んだりすると良いでしょう。一方で、食物繊維を含む食品は種類もさまざまで、体質によっては合わないものもあるかと思います。『食べるとおなかがゴロゴロする』『便がゆるくなる』などの症状がでる食材は控え、自分の体に合うものを上手に見つけて摂取してほしいです」。
*食物繊維の一日あたりの「目標量」(生活習慣病の発症予防を目的として、現在の日本人が当面の目標とすべき摂取量): 18~64歳で男性21g以上、女性18g以上。(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」より)
おならのにおい
「おならは誰でも少なからずにおいがあるもの。腸内細菌の活動で発生するガスの99%が無臭、においの元になるのは残り1%のガス。においの元になる成分として代表的なのが「硫化水素」です。おならはそのボリュームとスピードによって肛門が振動し、音となりますが、音が出ないおなら(いわゆる"すかしっぺ")と大きな音が出るおならでは、後者の方がにおいが控えめなイメージはないでしょうか。これは飲み込んだ空気、つまり窒素の割合が多いためにおいが少ないと考えられます。飲み込む空気量が増えるタイミングは人によって異なりますが、飲食時のほかに緊張をしているときも空気を飲み込みやすいかもしれません」。
おならは腸を育てた結果の産物
「腸内細菌が食べ物を発酵する過程でおならは発生しますが、この発酵は腸の粘膜を育てるために必要な過程でもあります。便やおならは腸を育てた結果の産物であり、悪いものではありません。腸を上手に育てると体のさまざまなことに良い影響を与えることが分かってきており、その研究も今後10年でさらに明らかになるでしょう。今のうちから腸を育てる意識が必要です。腸を育てるためには、自分に合った食物繊維を摂ること、おなかの中に良い菌を良い状態で保っておくことが大切です。
もしおなかのことで少しでも気になることがあれば、年齢や性別に関係なく、医療機関の内視鏡検査をおすすめします。大腸がん**は女性の死因第1位、男性の死因第2位(2021年)となっていますが、早期発見さえできれば治癒の可能性が高くなり、場合によっては手術せずに摘出することも可能です。健康診断で便潜血を指摘されてからでは、症状が重くなっていることも少なくありません。便やおなら、おなかの不調で違和感があるときは、内視鏡検査を受けるきっかけにしていただければ幸いです」。
**国立研究開発法人国立がん研究センター「がん死亡数の順位(2021年)」