JR東日本は、品川駅改良工事において2019年4月に発見された高輪築堤跡に関して、その歴史的価値と日本で初めて鉄道が走ったイノベーションの地としての記憶を継承すべく、保存活用計画を進めていくと発表した。2027年度の現地公開をめざす。
高輪築堤跡は、1872(明治5)年に日本初の鉄道が新橋~横浜間で開業した際、高輪海岸沿いの海上に鉄道を走らせるために敷設された鉄道敷の遺構。発掘調査の結果、第7橋梁の橋台を含む開業当初の高輪築堤の遺構が残っていることが判明し、JR東日本は考古学・鉄道史等の有識者や文化財行政で構成された高輪築堤調査・保存等検討委員会が取りまとめた調査・保存方針にもとづき、記録保存調査を進めている。
日本における交通の近代化や当時の土木技術等の歴史を知る上で重要な遺跡とされ、2021年9月17日に第7橋梁部および公園部を「旧新橋停車場跡」に追加する形で「旧新橋停車場跡及び高輪築堤跡」として史跡指定。国の史跡に指定されたことを踏まえ、さまざまな分野の有識者と文化庁、東京都、港区の文化財行政による検討内容の下、高輪築堤跡の保存活用計画を策定し、2023年5月26日に文化庁長官の認定を受けた。
適切な保存対策と継続的な維持管理を行うことにより、高輪築堤跡の現地公開が可能となり、今後は現地公開に向けて具体的な検討を進めていく。JR東日本は、「100年先の心豊かなくらしの実験場」として、新たなビジネス・文化が生まれ続ける街「TAKANAWA GATEWAY CITY」にて、約150年前の鉄道遺構を公開する計画としている。発掘時にすでに滅失していた欠損部の再現を検討するほか、かつての築堤ライン上は現地で発掘された築石を活用したランドスケープとし、AR・VRといった最先端技術を活用して開業当時の鉄道が走る景観の再現なども検討する。
高輪築堤も含めた鉄道開業当初の新橋~横浜間(約29km)の記録について、史資料調査や研究成果の収集や整理を行い、今後の史跡の公開や活用に生かしていく。史資料調査および記録保存調査によって得られた知見を踏まえ、高輪築堤と鉄道の歴史を国内外の人が知ることのできる情報発信施設等の整備も計画している。