人間が一生のうち一番多く身体に取り込むもの――。「空気」です。空気のキレイさを計る指標はさまざまですが、PM2.5の定点観測結果をもとにした「空気のきれいな都道府県」にて4年連続(2016年~2020年)で国内1位となったのは山形県。

そんな「日本一空気がキレイな場所」といわれる山形県の朝日町には、空気そのものを奉る「空気神社」があります。この空気神社と「空気質」に関する製品を取り扱うパナソニック 空質空調社が、2022年からさまざまなプロジェクトを計画実行しています。これから始まるプロジェクト第2弾では、ゼロエネルギーをはじめとした3つの計画を用意。今回、実際に空気神社を訪れて取り組みの一部を体験してきました。

  • 毎年6月に行われる「空気まつり」では巫女さんが舞い、空気神社の御本殿の上で舞が奉納されます

  • 今回のコラボレーションで導入される予定のリチウムイオン蓄電システムと太陽光発電パネル(パナソニック 空質空調社)

ライトアップにお祭りも! 人気観光スポットの「空気神社」

空気神社とパナソニックのコラボレーションプロジェクト第2弾、概要は以下の3つです。

  • 空気神社の夜間ライトアップに利用する電力をゼロエネルギーにすること
  • 美しい星空を守るため、光害に配慮した照明を設置すること
  • 空気神社地下にある御本殿の空気質の向上

まずは空気神社を知らない人も多いのではないでしょうか? 空気神社は「神社」と名前はついているものの、宗教とはまったく関係のないスポット。落慶(らっけい)したのは1990年と比較的最近のことで、コンセプトは「澄んだ空気に感謝する」というもの。宗教色はなく、実際はモニュメントに近いものです。

空気神社の御神体は「空気」そのもの。といっても空気は目に見えないので。空気神社は鏡に映る美しい空気を含めた世界を形にできる「鏡」で構成されています。地表で見ることができる神社は、5m四方の巨大なステンレス製鏡板のみ。この鏡板の地下3mには、普段は隠されている御本殿が。御本殿には素焼きの甕(かめ)が12個あり、甕の中に存在する「空気」そのものが御神体という位置づけです。

  • 2022年11月に撮影した秋の空気神社。余分なものをそぎ落とした能舞台のような造形が、むしろ神々しい……。鏡のように周囲の風景を映し出すため、四季それぞれの美しさが際立ちます

  • 地表鏡板の土台部分には隙間があり、御本殿と直接つながっています。地表で柏手を打つと、地下の甕(かめ)に反響するという心憎い演出も

今回のコラボレーションプロジェクト、3つめ「空気神社地下にある御本殿の空気質の向上」では、御本殿内部にパナソニックの次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」を配置しました。除菌・除臭性能の高いジアイーノによって、御本殿内の空気もキレイにしています。

ちなみに、この御本殿は一般には解放されていないのですが、唯一「空気まつり」の時期に数日だけご開帳されます。2023年の空気まつりは、6月3日~5日です。

  • 御本殿へ。普段は塞がれている地下への入り口、ご開帳時期には開いて、はしごで地下へと降ります。「はしごで御本殿に入る」という神社はなかなか見ないですね

  • 12個の甕(かめ)が並ぶ御本殿内部と、奥に置かれたジアイーノ。空気神社の地上には鳥居がなく、地下の4本の柱が鳥居の代わり。また、4本の柱はそれぞれ春夏秋冬を表しているんだとか。繰り返しますが、宗教とは無関係です

  • 本殿内に設置されたジアイーノ

星空の美しさを守る照明を配置した駐車場

空気神社は人気の観光スポットでもあります。取材した日も関西から観光バスが訪れていました。「神社といっても鏡板が1枚だけなんでしょ?」と思うかもしれませんが、駐車場から神社までの約300mには宇宙を構成する5行「木・火・土・金・水」それぞれを司るモニュメントが建てられており、短い山道を歩いて空気神社へと向かう道中だんだんと心構えができてきます。

  • 秋に撮影した「火」を司るモニュメント。モニュメントはすべて円柱形をしており、仏教のマニ車のようにくるくる回転させられる仕組み。火のモニュメントに使われている蝋燭(ろうそく)は、朝日町で作られている蜜蝋(みつろう)によるものです

  • 神社に一番近い「水」を司るモニュメント。神社の手水舎(ちょうずや)のように、ここで手を清めることができます

そしてコラボレーションプロジェクトの2つめ、「美しい星空を守るため、光害に配慮した照明を設置すること」は、モニュメント近くの駐車場に設置された照明です。一般的な防犯灯(外灯)は照明全体が明るく光りますが、パナソニックの「光害対策型LED防犯灯」は照明下側のみを効率的に照らし、上方向への光漏れを最小限にしています。

照明光の色も、星の光をジャマしにくいオレンジ系統に調整していて、「上空は暗いまま人の足下はしっかり明るく照らす」というニーズに応えているのです。光害対策型照明については、別記事『きらめく星空と明るい街灯を両立、パナソニックの「星を守る防犯灯」ってなんだ!?』もご一読ください。

  • 空気神社の駐車場に設置されている、パナソニックの光害対策型LED防犯灯。上方向への光の漏れを最小限に抑える特殊な構造をしています

音と光のコラボレーションで幻想的なライトアップ

空気神社は小高い山の上ということで、もちろん夜は真っ暗。普通なら駐車場から神社までの約300mは危なくて移動できません。しかし、2023年6月3日から8月20日にはライトアップイベントも予定しており、幻想的な夜の空気神社も楽しめるようになります。

  • ライトアップされた空気神社への入り口

【動画】プレス向けに公開された夜間ライトアップの様子。ゆっくりと色が変化する光と音の演出はなんとも幻想的。緑のライトは夏、青は冬、赤では秋のような印象に。複数の光がミックスした不思議な演出も
(音声が流れます。ご注意ください)

  • 神社の外から見るライトアップされる森もいいですね。ファンタジーの世界です。昼間の爽やかな空気神社にはない楽しみ方ができそうです

今回のコラボレーションプロジェクト第2弾でもっとも力を入れているのは、この「空気神社の夜間ライトアップに利用する電力をゼロエネルギーにすること」です。ライトアップにはそれなりの電力を必要としますが、これらの電力をすべて再生エネルギーでまかなうことが最終的な目標。パナソニックは、太陽光発電システムと7台のリチウムイオン蓄電システムを朝日町に導入します。

  • 今回の記者会見にて、山形県朝日町の鈴木浩幸町長(写真左)、パナソニック 空質空調社の道浦正治社長(写真右)

空気神社は雪が多い地域の山斜面に建てられているため、太陽光発電システムの設置は困難。そこで、太陽光パネルは神社から15kmほど離れた道の駅「りんごの森」に設置する計画です。残念ながら空気神社のイルミネーションは電力会社から電気を使いますが、りんごの森でイルミネーションに利用する電力以上の発電をすることで、朝日町全体の利用電力量をトータルすると「ゼロエネルギー」になるという構想です。

  • 太陽光発電システムの建設を予定している道の駅「りんごの森」

電気を貯めるための蓄電システムは7台を導入予定ですが、りんごの森に設置されるのは1台のみ。残り6台は町内各所に配置します。いずれも持ち運び可能なスタンドアロンタイプなので、災害時には避難所の電源としても利用される予定です。ゼロエネルギーで環境に配慮し、さらには災害レジリエンスにもなるという計画です。

以上が、空気神社のある朝日町とパナソニック 空質空調社が発表したコラボレーションプロジェクト第2弾の内容です。太陽光発電システムの構築はこれからなので、ゼロエネルギーは2023年のライトアップには間に合いませんが、「星空を守る照明」と「御本殿の空気質」は導入済み。空気神社を参拝に訪れるとしたら、夜のライトアップも体験してみてください。