5月30日のNASDAQ市場で米NVIDIAの株価が419.38ドルまで上昇し、時価総額が一時、1兆ドルを超えた。時価総額ランキングで同社は、Apple、Microsoft、Saudi Aramco、Alphabet(Google)、Amazonに次ぐ6位につけている。
景気後退懸念やPC需要の落ち込みの影響を受けてNVIDIA株は2021年11月から下落していたが、昨年10月の2年ぶりの安値112ドルから上昇に転じ、それから7カ月で最高値を更新。2018年にAppleが初めて超えてからまだ数社しか達成できていない「1兆ドル企業」入りを果たした。その成長の要因は、生成AIブームによるデータセンター向けGPGPU需要の高まりだ。
GPGPU向けのプログラミングフレームワークを2006年から整備し続けてきたNVIDIAは強靭なエコシステムを築き、幅広いパートナーシップを構築して、自動車、クラウドコンピューティング、ヘルスケアなど様々な分野でのAI活用において重要な役割を果たしている。そこに生成AIブームの強い追い風が吹き始めた。
NVIDIAが5月24日に発表した2023年2〜4月期決算は、売上高71億9200万ドル(前年同期比13%減)、純利益20億4300万ドル(同26%増)だった。ゲーム用GPUが減少したものの、収益性の高いデータセンター向けが伸び、売上高・利益とも市場の予想を上回った。クラウドベンダーだけでなく、OpenAIのような生成AIアプリケーションの学習・推論にGPUを使用するインターネット企業の需要がデータセンターグループの伸びを牽引。同グループの売上高は、予想の39億ドルに対して42億8000万ドル(同14%増)だった。さらに2023年5〜7月期についても売上高110億ドルと、市場予想(売上高71億5000万ドル)を大きく上回るガイダンスを示した。
AIの市場規模が急速に拡大し、また重要性も高まっていることから、NVIDIAに依存する環境への懸念が広がり始めており、Amazon、Google、Metaなど独自のチップ開発の動きを活発化させている。ライバルのAMDもRadeon Open Compute (ROCm)プラットフォームで追撃を図るが、NVIDIAの牙城は堅固だ。市場は当面NVIDIAの独占状態が続くと予想しており、それがNVIDIA株の上昇を加速させている。