第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した映画『怪物』(6月2日公開)のプロデューサー裏話が31日、明らかになった。

  • 映画『怪物』

    映画『怪物』

同作は是枝裕和監督と脚本家・坂元裕二によるオリジナル作で、この度、第76回 カンヌ国際映画祭で脚本賞、クィア・パルム賞を受賞した。大きな湖のある郊外の町に存在する、息子を愛するシングルマザー(安藤サクラ)、生徒思いの学校教師(永山瑛太)、そして無邪気な子供たち(黒川想矢、柊木陽太)。そこで起こったのはよくある子供同士のケンカに見えたが、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した。

今回、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた是枝監督が、「今一番リスペクトしている」と熱く語る脚本家の坂元とタッグを組むという、監督自身と映画ファンの夢を叶える企画が実現した。坂元は映画『花束みたいな恋をした』やTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』などで圧倒的な人気を博す、新作が待ち望まれる脚本家だ。是枝監督が他者に脚本を委ねるのは、デビュー作『幻の光』以来となる。

今まで実現してこなかった奇跡のコラボレーションが結実した背景には、山田兼司・川村元気という、2人のプロデューサーの存在があったという。山田プロデューサーはテレビ朝日入社後、報道局を経て、10年以上映画・ドラマプロデューサーとして勤務。以前から坂元とドラマを制作したいと考え、やりとりを続けていたのだが、中々実現しなかった。2018年、連続ドラマ『anone』が最終回を迎え坂元が「これにてちょっと連ドラはお休みします」とInstagramに投稿した頃、山田は東宝に移籍し、映画のプロデュースに軸足を移すことを考えていたこともあり、映画の脚本に興味はないか打診したところ、坂元から前向きな返答があった。坂元と山田プロデューサーによる長編映画の企画開発が始まり、ほどなく監督・脚本家・プロデューサーと多方面で活躍の場を広げる川村プロデューサーがそこに加わり、進んでいくこととなった。

その後、3人の総意として、同作を任せたい人に是枝監督の名前が挙がり、川村プロデューサーが是枝監督に企画を持ちかけることに。是枝監督は「坂元さんが書く人間には、僕の書けない人間が何人もいるんですよね。だから話をいただいたとき、すごく嬉しかったです」と振り返り、ロングプロットを読む前から監督を引き受けることを決めていたという。こうして2人のコラボレーションが実現し、盤石の布陣で制作されたという経緯が、今回明かされている。

(C)2023「怪物」製作委員会