第71期王座戦(主催:日本経済新聞社、日本将棋連盟)は、挑戦者決定トーナメント1回戦の高見泰地七段―石井健太郎六段戦が5月29日(月)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、123手で勝利した石井六段が渡辺明名人の待つ2回戦への進出を決めました。

意表の相振り飛車

振り駒が行われた本局、先手となった石井六段が得意の矢倉を注文したのに対して後手の高見七段はいきなり趣向を披露します。陽動振り飛車の要領で三間飛車に構えたのがそれで、研究勝負を避けて力戦形に持ち込む狙いが見て取れます。これを受けて石井六段も急きょ作戦を四間飛車に変更。居飛車党同士の一戦は相振り飛車の戦型に落ち着きました。

石井六段が右辺に矢倉囲いを構築したのに対して高見七段は銀冠に構えて駒組みが続きます。じりじりとした間合いの計り合いが続いたのち、石井六段が6筋で歩交換をしたところから局面が動き始めました。歩を打って囲いを再生すれば穏やかなところ、高見七段はこの折衝で手にした一歩を攻めに使う積極策を採用。1筋からの端攻めに手段を求めました。

厳しかった銀冠への玉頭攻め

高見七段の先攻を受けた先手の石井六段は、ここから緩急自在の指し回しで徐々にペースをつかみます。端での受け切りは狙わずに、この攻防で手にした小駒を左辺での反撃に活用したのが的確な判断でした。手番を握って8筋の桂頭に手裏剣の歩を放ったのも好タイミング。高見七段としてはこの歩を何で取っても玉頭からの継ぎ歩攻めが厳しく残ります。

受けていてもキリがないと見た後手の高見七段は開き直って攻め合いに活路を見出しますが、ここから石井六段の攻めが勢いを増します。玉頭に築いた歩を拠点に銀を打ったのが決め手で、この手が詰めろになってはさすがの高見七段も粘りようがありません。終局時刻は21時10分、一気呵成の寄せで敵玉を寄せきった石井六段が勝利を飾りました。

一局を振り返ると、高見七段が2手目に突いた飛車先の歩を生かして銀冠に囲ったのに対し、石井六段が的確な玉頭攻めでこれを打ち破った格好です。勝った石井六段は2回戦で渡辺明名人と対局します。

  • 石井六段は過去に四間飛車の定跡書も出版している(『四間飛車の逆襲』マイナビ出版)

    石井六段は過去に四間飛車の定跡書も出版している(『四間飛車の逆襲』マイナビ出版)

水留 啓(将棋情報局)

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