5月29日からついに台湾で開幕したCOMPUTEX 2023。29日に基調講演がスタートしたあとに30日、6月1日と会期が設定されており、本格的なブース展開は30日から。今年行われるComputex 2023はテーマに「High Performance Computing」「Artificial intelligence Application」「Next-Gen Connectivity」「Hyper reallity」「Innovations and Startups」「Sustainability」が掲げられています。
今回、このイベントの開幕を飾るNVIDIAの基調講演に参加してきました。4年ぶりとなる本格的な現地開催を同社CEOのジェンスン・フアン氏が喜び、長時間にわたる登壇でも会場を笑わせて飽きさせないスピーチを体感することができました。なお、初めにばらしてしまうと一般消費者向けの製品発表は特にありません。
忙しい方向けにざっくりと発表内容をまとめると、下記のようになります。
- 消費者向け製品としては同社最後発の「GeForce RTX 4060 Ti」をアピール
- AIがアバターをリアルタイムで生成する「NVIDIA Omniverse ACE」
- 「NVIDIA Grace Hopper」がついに量産開始
- NVIDIA Grace Hopper等を組み合わせたスーパーコンピューター「NVIDIA DGX GH200」
- サーバープラットフォームをNVIDIA主導で標準化する「NVIDIA MGX」
- 爆速ネットワーク「NVIDIA Spectrum-X / Spectrum-4」
- 「NVIDIA AI Enterprise」活用事例紹介
NVIDIA Ada Lovelace世代を搭載するGeForce RTX 40シリーズは、最上位モデルからGeForce RTX 4060 Tiまでほとんどすべて投入が完了していることもあってアピールは控えめ。講演冒頭で同社最新アーキテクチャがレンダリングを革新し続けていることを強調し、GeForce RTX 4060 Tiのファウンダーズエディションを手に持って紹介しました。
ゲームの話題からすかさずAIへと話題を転換し、同社が展開するメタバース関連プラットフォーム「NVIDIA Omniverse」を紹介。今回新機能として「NVIDIA Omniverse ACE」が発表されました。放映されたデモ動画はCyberpunk2077のようなゲーム内でラーメンショップの店員と会話を行うというもので、この会話を構成するセリフやボイス、口パク等のアニメーションがすべてAIで生成されているといいます。もしこの技術がさらに一般的なものになれば、ゲームにおけるNPCはいよいよ真に迫り、プレイ体験はさらにユニークなものになりそう。
生成AIへの言及が始まり、ここから今回のメインテーマとなるサーバー/HPC向け製品の紹介が始まりました。登壇している同社CEOのジェンスン・フアン氏は今回、「コンピューティングとは、もはやサーバーのように大規模なものを指す用語だ」と明言。計算資源を集約して大規模なスケーリングに対応できるサーバーこそ技術革新の中心部だといい、中でも大量のCPUで構成され、旧態依然としたサーバーからGPUサーバーへの転換を図ることで、LLMを用いた生成AIの開発を大幅に加速できるとアピールします。
特に印象的だったのは、ここ数年の発表で必ずアピールする「The more you buy, the more you save(買えば買うほど節約できる)」というフレーズが今年も出てきたこと。「みんなGPUサーバーは高いっていうから、LLMの開発を例にわかりやすく比較できるようにしたよ」と前置きし、展開されたスライドが下記のもの。
加えて、そんな超強力な新GPUサーバー「GH200」を構成する主要コンポーネントである「NVIDIA Grace Hopper」がついに量産に入ったことも発表。OAMカード1枚にCPU「Grace」とGPU「Hopper」を混載しており、これを大量に組み合わせることで極めて高い性能を実現します。CPUとGPUの帯域は従来のPCIeインタフェースよりも圧倒的に高速になるため、さらに性能を高められる点がポイント。x86 CPUにPCIeタイプのHopper GPUを組み合わせた時よりも、圧倒的な高速性能を実現しています。
また、NVIDIAが買収したMellanoxの技術をあわせることで、さらに高速なネットワーク製品「Spextrum-4」も投入。AI推論ワークロードが要求する性能を強力なコンポーネント同士の通信帯域を拡張することで対応し、スループットを引き上げる役割を担います。64x 800GbEか 128x 400GbEから選択可能。
今回の発表で私たち一般消費者が直接手に触れる製品はほとんど紹介されなかった一方、NVIDIAはAI性能を強力に引き上げる超ハイパフォーマンス製品を多数投入。AIといってもまだなかなかあまり身近に感じられないかもしれませんが、普段何気なく使っているサービスの広告レコメンダーの裏側ではAIが動作していたり、表計算システムやコーディングツールにはAIがユーザーに寄り添ってくれるように。ChatGPTのような対話型AIの登場で、ますます身近なものになりつつあります。
企業にとってはNVIDIAいわく、「アクセルの踏み時」。iPhoneが発明された時と同規模のパラダイムシフトが発生するとしており、NVIDIAはその流れを後押しする原動力として大きな存在感を放っているように感じられました。