「同族嫌悪」とは、自分に似ている人に対して嫌な感情や悪意を抱くときに使う言葉です。 たびたび耳にする言葉ですが、同族嫌悪に陥る原因や心理状態、克服法にはどのようなものがあるのでしょう。
今回は、同族嫌悪について解説します。
「同族嫌悪」の意味とは
同族嫌悪の意味を一言でいうと「自分と似ている人を嫌悪すること」です。「どうぞくけんお」と読みます。
ここでは、同族嫌悪の意味について解説します。
「同族嫌悪」の意味
同族嫌悪とは、自分と似た性質・特徴を持つ人に対して嫌な感情を抱くことを意味します。 同族嫌悪の原因は、自分と似ているからこそ嫌なところが目につき、過剰反応してしまうことといえます。
同族嫌悪が起こる対象は人によってさまざまです。 たとえば、「自分と性格・行動が似ている人」「似たような考え方を持つ人」「同じ集団に属している人」「同じ趣味を持つ人」などは同族嫌悪の対象であることが多くあります。
また、親や家族・親族は遺伝や生活環境の関係で似ている点が多いため、同族嫌悪を感じやすい特徴があります。
「同族嫌悪」と「同属嫌悪」の違いとは
「同族嫌悪」は「同属嫌悪」と書く場合もあり、どちらも間違いではありません。 どちらが適切な表記かは諸説あり明確な決まりはないのですが、一般的には同族嫌悪と書きます。
「同族嫌悪」と「同属嫌悪」は、ニュアンスの違いはありますが、両者が意味することは同じです。 「同族」は同じ血統・系統であることを意味し、「同属」は同じ種類・集団に属することを意味しています。
同族は同じ系統の性質を持っていること、同属は同じ特徴を持つ集団に属していることが違いといえますが、どちらも「同じ性質を持っているもの」として扱われるため、あえて使い分ける必要はありません。
同族嫌悪の使い方・例文
同族嫌悪の使い方について、例文をご紹介します。
同族嫌悪だと分かっているが、人前でおどおどする彼女のことが嫌いだ
A子はB子のことを「調子にのっているから」と嫌っているが、こちらから見ればただの同族嫌悪でしかない
職場の先輩が自慢話ばかりすることを旧友に愚痴ったら、同族嫌悪だねと笑われてしまった
同族嫌悪の類語・言い換え表現
同族嫌悪の類語には、自分と似た性質・考えを持つ相手に反発する意味を持つ語句が挙げられます。
読み | 意味 | 例文 | |
---|---|---|---|
近親憎悪 | きんしんぞうお | 親族や、階層・性質の近い人を嫌うこと | 気分屋な父を見ていると感じる苛立ちは、近親憎悪なのだろう |
骨肉の争い | こつにくのあらそい | 血のつながった人どうしの争い | 親の遺産を狙った骨肉の争いほど悲しいものはない |
仲間割れ | なかまわれ | 仲間内で対立し、分裂すること | 敵は、私たちが仲間割れした隙に逃げ出すつもりだ |
内輪もめ | うちわもめ | 家族間や仲間内で揉めること | ライバル会社は新商品のことで内輪揉めしているらしい |
同担拒否 | どうたんきょひ | 自分と同じものが好きな、他のファンを受け入れたくないこと | 彼女は同担拒否なので、一緒に推しキャラについて語れない |
同族嫌悪の対義語(反対の意味の言葉)
同族嫌悪の対義語には、自分と似ている者、気が合う者同士で自然と集まることを意味する語句が挙げられます。
読み | 意味 | 例文 | |
類は友を呼ぶ | るいはともをよぶ | 似た考えや趣味を持つ者・気の合う者同士が自然に集まり、仲間をつくるようす | 姉の友人は姉と服装も性格も似ていて、まさに類は友を呼ぶって感じだ |
同気相求 | どうきあいもと(む) | 気の合う者が互いに求めあい、集まるようす | この図鑑の完成は、虫を愛す気持ちが同気相求めた結果だろう |
類似性バイアス | るいじせいばいあす | 自分と共通点があることで好感を持ち、高く評価してしまうこと | 面接官の私は、類似性バイアスが働かないよう注意を払っている |
同族嫌悪を感じる理由・心理
同族嫌悪を抱くときの心理状態や、同族嫌悪を感じやすい人について、具体的な例を紹介します。
競争心を感じる
同族嫌悪は、相手への競争心があるときに引き起こされます。
たとえば、同じ人を好きになった恋のライバルが行う言動は、逐一目につくものです。 今まで気に留めたことがなかった相手だとしても「同じ人に好意を抱いている」ことが分かった途端、些細な言動が鼻についたり、相手の悪いところを見つけたくなったりすることもあるでしょう。
嫉妬心を感じる
自分に似た人だからこそ嫉妬心が芽生えやすく、同族嫌悪につながることがあります。
性格も風貌も自分と似ているにも関わらず、友人だけが異性からモテる場合、ちょっとしたことも自慢話に聞こえて嫌な思いをすることがあります。
「自分と同じような人間なのに」と羨む気持ちが、嫌悪感として表れることがあるのです。
自己肯定感が低い
同族嫌悪は自分と似ている点を嫌悪することです。自己肯定感の低い人は、自分の嫌な部分を他人から見つけ出し、嫌悪してしまいます。 たとえば、自己肯定感が低く人の顔色をうかがいながら過ごす人が、同じような行動をしている人を嫌うことは珍しくありません。
接する頻度が高い
自分と似ている相手と接する頻度が高く、それが同族嫌悪につながることがあります。 顔を合わせることが多いと、自分と似ている嫌な部分を目にする機会も多いためです。
カップルのときは自分と似ていて嬉しかったことが、夫婦になって共に生活すると気になって仕方がないと思うことはよくあります。 例としては、「交際中はお互い片付けが苦手で気を遣わずよかったけど、結婚後は散らかった相手の部屋に嫌気がさす」などが挙げられます。
同族嫌悪を克服する方法
同族嫌悪を克服する方法について、3つ紹介します。 同族嫌悪が和らぐことで、自分の嫌だと感じる部分を減らせるでしょう。
自信の欠点を認める
同族嫌悪を克服するために有効な方法は、自分の欠点や嫌だと思っている点を認めることです。
他人を変えることはできません。まずは自分の嫌なところを素直に認めるというのが大切です。自分の短所を認めるころで、他人から自分の欠点を見つけて嫌悪することも少なくなります。
相手のいいところを探す
同族嫌悪を抱いてしまう相手のよいところを探しましょう。欠点は見方を変えれば長所になり得ます。
たとえば、繊細で周りの目ばかりを気にしてしまう人は、周りをよく見て気遣いができる人です。 相手のよい点を探すことは、自分の長所を見つけることにもつながるためおすすめです。
なぜ嫌いな行動をとるのか分析する
相手の言動に嫌悪感を抱くとき、相手がなぜそのような行動をするのかを考えてみることが大切です。
行動自体が嫌なのか、行動に至る思いが見えるから嫌なのかなど、原因が分かることで嫌悪感を弱められる可能性があります。
同族嫌悪の意味や陥る心理を覚えておこう
同族嫌悪とは、自分に似た特徴・性質を持つ人に嫌悪感を抱くことです。 相手の言動から自分自身の嫌な部分を見てしまうことが原因であり、心理状態や環境が関係しています。
同族嫌悪を乗り越えるためには、自分の欠点を素直に認めて改善すること、相手のよいところを探すことが重要です。