第36期竜王戦2組ランキング戦(主催:読売新聞社)は、決勝の佐藤康光九段―豊島将之九段戦が5月23日(火)に東京・将棋会館で行われました。対局の結果、126手で勝利した豊島九段が2組優勝を決めました。敗れた佐藤九段も豊島九段とともに決勝トーナメントに進出します。
独創的な康光流振り飛車
振り駒が行われた本局、先手となった佐藤九段は角交換振り飛車の作戦を採用。6筋の歩の前に角を腰掛けたのが康光流の駒組みで、8筋への角の利きを生かして将来の飛車先逆襲を狙う含みがあります。佐藤九段の布陣は角の打ち込みを警戒して金銀を中央に集める独特の構え。これに対し後手の豊島九段は自玉を銀冠の堅陣に収めて戦いの時を待ちます。
仕掛けをめぐるジリジリとした間合いの計り合いが続きます。8筋でお互いの飛車がにらみ合っており有効な攻めがないと判断した佐藤九段は、ここから驚きの構想を披露しました。右辺に陣取っていた玉を遠く6筋に移動させたのがそれで、遊び駒の右桂を攻めに活用する手を用意しつつ後手からの仕掛けを誘う狙いが見て取れます。
無理をとがめて豊島九段が快勝
さながら玉の引っ越しともいうべき佐藤九段の新構想を前に、後手の豊島九段は強気の対応を用意していました。がら空きになった2筋に持ち駒の角を打ち込んだのは相手の読み筋に飛び込むだけに怖い意味がありますが、さすがに読みの入った最強の応手。この直後、馬銀両取りの桂跳ねに対して強くこの桂を馬で食いちぎったのが決め手となりました。
部分的には角桂交換の損な取引ながら、豊島九段はこの直前に銀を入手しているため駒割は二枚換えの駒得。豊島九段は手にした銀桂香の小駒を使って丁寧に先手玉への寄せの網を絞っていきました。終局時刻は21時35分、佐藤九段の粘りに手こずりながらも丁寧な指し回しで最後まで逆転を許さなかった豊島九段が快勝で2組優勝を決めました。敗れた佐藤九段は「全体的に苦しい将棋だった」と振り返りました。
水留 啓(将棋情報局)